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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う④

愛してる、そばにいて0982

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 「……………」
 なんと返していいのかわからない。
 もちろん、イヤな気持ちではなかった。
 どちらかといえば、嬉しい、それが一番近い。
 当然だと言い切る司の気持ちに、どこかムズムズとして落ち着かない気持ちになってしまう。
 …いまさらだよね。
 どんな彼の愛の言葉よりも、そうした彼の気持ちにこそ絆される。
 もしかしたら記憶を失う前の自分は、彼の容姿や背景よりもそうした彼の一途な愛情を愛したのかもしれない。
 そんなことを初めて思った。
 「……姉ちゃんに頼んだつもりだったけど」
 「え?お義姉さんに頼んだって」
 あえて言葉で肯定しなかったが、司の表情が、メアリを新たに雇ったのは彼の指示だったのだとつくしにも悟らせる。
 …そうだったんだ。
 傲慢で本来他人のことに頓着しない男が彼女だけには見せる繊細な気遣い。
 「他にも何人か良さげな奴いたらこっちに回してくれるように頼んであっから、少しは環境良くなるんじゃねえの?」
 「……うん」
 じんわりと染み入る彼の心こそが、つくしのささくれ立った気持ちや神経を癒してくれる気がした。
 「しかし、……まあ、そうだよな。他家に嫁いだ姉ちゃんよりも、そういうこと頼むならあのばあさんの方が適任か」
 どこか自嘲的な司の呟き。
 「司?」
 「いや」
 「えっと……その、タマさんって?司も親しいの?」
 これまで司が使用人に対して親しみを見せたことがなかった。
 それがたとえ使用人たちを統括する、総執事長や家政婦長でも同様のことだ。
 しかし、‘ばあさん’と呼ぶ、そのタマという人物には違う気がした。
 どこか柔らかな親愛をその口調に感じる。
 「親しいつーか」
 「……うん?」
 「俺の育ての親みたいなもん?」
 司の両親とも健在だ。
 父親の方は病に倒れてはいるが。
 だが、ほとんど両親のどちらとも家庭を顧みることはなかったという。
 「本当はタマを呼び戻して、お前にも引き合わせた方がいいんだろうけどな」
 しかし、そうは言いつつも、司の口調はどこか否定的だった。
 「あたしに会わせててはくれないの?」
 司の育ての親みたいだという人。
 …会ってみたい、かも。
 なんとはなしにそう思う。
 「したくても、今は…無理だな」
 「え?どうして?」
 「それこそ死にかけのばあさんに俺が半殺しにされちまうか、……ばあさんの方をポックリ逝かせちまうだろうからさ」
 司の顔は、今度こそハッキリとした自嘲に引き歪んでいた。




*****




 「え?………出張?」
 司の出張は珍しいことではないが、それでも司の大学生活が始まったこともあって長期の出張などはなかったことなのに。
 「来月…もう今月か、サンクスギビング※を挟んで2週間の出張が入ってる」
 「……2週間」
 これまでも2日、3日の出張は珍しいことではなく、1週間くらならば経験があった。
 …でも半月もだなんて。
 我が儘は言えない。
 司は遊びに行くのではなく、仕事で出かけるのだから。
 いつの間にかティーポットを掴んだまま、俯いて、ボウッとしてしまっていたらしい。
 「こら、こんなもん掴んだまま、ボケってたらあぶねぇだろ」
 「……あ」
 背後に回り込んでいた司の気配に気がつかなかった。
 つくしの体越し、彼女の手からティーポットを取り上げて、司が手際よく二つのカップに赤茶色の紅茶を注いでゆく。
 司は言動も荒く、極めて男性的な男だったが、やはりこういうところは育ちが違うのか、ティーポットを扱う手つきも、紅茶を注ぐ所作もすべてが優雅で美しかった。
 それなのに、
 「……カモミール?」
 「あ、うん」
目の前にあるトレイでテーブルまで運ぶことなく、そのまま立ち飲みしてしまって顔を顰めている。
 「えっと、あれ?ハーブティってダメだっけ?」
 「いや、そんなことねぇけど、……なんで?今までこういうの出したことなっただろ?」
 …なんていうか凄い近い。
 夫婦で、子供も作っていまさらだと思うのに、こういう風に背中越しに抱きしめられたままで会話して、まるで熱々の恋人同士の語らいのような時間が気恥ずかしい。
 これまでも司は人目を気にすることなく、また愛情表現も派手だったからごく珍しいことではなかったけれど、つくし自身の気持ちがそうした彼の言動をどうこう思う余裕がなかったのだろう。
 「つくし?なんだよ、どっかまた具合でも悪いのか?」
 「え、あ…ううん、ううん、平気」 
 あまりにウンともスンとも言わなかったせいか、怪訝に顔を覗き込まれて赤面してしまいそうだ。
 「えっと、具合悪いわけじゃないから大丈夫。ハーブティ?」
 「ああ」
 「メアリが…」
 「メアリってさっきのメイド?」
 「うん、そのメアリが、ハーブティとかお茶に凄い詳しくてね。疲労回復とか、不眠によく聞くブレンドを教えてくれたから」
 「へぇ?」
 司にしてもおそらくハーブティの類を飲むのは初めてなわけではないだろうが、これまでの彼はアルコール類かコーヒーを飲むことがほとんどで、あとはせいぜいミネラルウォーターを愛飲していた。
 クンと匂いを嗅ぎ、啜ってはいるが、やはりあまり好みではないのかどう見ても微妙な顔だ。
 「えっと、あんまり好きじゃない?」
 「……マズイわけじゃねぇけど、ま、好んでは飲まねぇよな」
 「そっかぁ」
 シュンとしてしまう。
 司の疲労した顔が気になって、意気込んでいただけにやや意気消沈気味だ。
 「だから、嫌いってほどじゃねぇって。……俺の体調気にして、出してくれたんだろ?
 柔く微笑んだ司が緩く彼女の腰を抱きしめ、チュッと髪にキスを落とす。
 …うひぃ。
 毎度のことながら、ラブい空気がどうにも照れ臭い。 
 イヤなわけではなかったが、どう反応していいのか困ってしまう。
 本当に、こういうふうにただ優しく抱きしめられて、キスをされたり、微笑み合うだけなら全然怖くないのに。




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※サンクスギビング…アメリカ合衆国とカナダの祝日のひとつ。プロテスタントの感謝祭で、現代では宗教的な意味合いはかなり弱く、たくさんの親族や友人が集まる大規模な食事会の日であり、大切な家族行事のひとつ。が、あくまでも北米の風習でヨーロッパにはない。州によって異なるが、サマーホリディ(夏休み)と並んで、この日を中心に5日~1週間の連休となっている。ニューヨークでは当日のみが祝日らしいが、商店や学校は連休がほとんどらしい。
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