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「中・短編」
伊集院薔薇先生…10話完

伊集院薔薇先生の疑惑9

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 「て、てめぇ!人の電話無視しやがるとはイイ度胸してんじゃねぇかっ。ど、ど、どういう用件なんだ!?」
 や、やべぇ、どもっちまった。
 つくしのおどろおどろしい雰囲気が怖い。
 昔から、つくしが本気になると、司が勝てた試しがなかった。
 「…用件って、そりゃ、こっちのセリフでしょ?それを言うなら了見。俺は猟犬なんかじゃねぇ、とか言い出したら、殺すわよ?」
 「……」
 つくしの突っ込みに、今まさに言うつもりだった司が言葉に詰まる。
 そうしている間に、司もいったい自分が何でこの場に来ているのだか、一瞬忘れそうになった。
 「て、ことで、用がないならあたしは帰るから。忙しい道明寺様は、早くお戻りになったら?」
 冷たい視線を一つくれ、クルリと踵を返し、去ってゆこうとする。
 咄嗟に、その華奢な腕を掴み、司は強引につくしを引きよせ、抱きしめた。
 「ちょっ!何すんのよっ、この変態っ!?人を呼ぶわよっ」
 「おお、呼べるもんなら呼んでみろ。自分の女抱きしめて何が悪いって、デカイ声で言い回ってやる」
 この男が言うとシャレにならない。
 怒ってるんだぞっ!という気持ちを込めて、懸命に身をもぎ放そうとするが、元々のウェイトやら力の差がありすぎて、ビクともしない。
 しまいには諦めて、ため息をついて力を抜く。
 つくしの抵抗がやんだことに、司は喜びいさんで、スリスリと顎を彼女の頭に擦り付け懐いた。
 「…なあ、何怒ってんだよ?」
 「それ、マジで言ってんの?」
 「…この間のことなら、誤解だぞ?それを怒ってんならお門違いだ」
 「心当たりあるんじゃん。言い訳する自体があやしい」
 久しぶりの司の広い胸の感触に、ほっこりと和み、内心では自分の疑心暗鬼を恥ずかしくも思っていたが、次の一言でカチンと頭にきた。
 「でも、お前が嫉妬してくれたんは、すげぇラッキー~。なんだかんだ言って、お前も俺にベタ惚れなんじゃん。いっつも、可愛くねぇお前が、目くじら立てて拗ねてんなんて激レア!」
 すっかり赦されたものとお気楽発言が、つくしの意地を再び奮い立たせる。
 何が、嫉妬したならラッキーよっ!
 何が、お前もベタ惚れだ!
 ああ、そうだよ、ベタ惚れだよ、嫉妬したよ、可愛くなくって悪かったわねっ。
 ガツンっ!
 「うげっ」
 つくしに脛を蹴られ、さすがの司も悶絶してつくしを離し、蹲る。
 「だ~れが、嫉妬なんかするかああああっ。あんたなんて、美人な未亡人でも、類とでもいちゃついてればいいのよっ。なにが、激レアよっ!」
 「……類?」
 怪訝に呟く司も、つくしの突然の怒髪天にあっけにとられている。
 「あたしが怒ってんのはね!たかだか、どっかの女にアクセサリー買ってやって鼻の下伸ばしてるってことじゃないのよっ!」
 ドーン!大股開きで一歩踏み出し、指先を地面にしゃがみ込んでいる司につきつける
 「……」
 「ここんとこのアンタは何!?あたしがちょ~っと電話無視してやったくらいで、連日連夜人の迷惑顧みないで、電話攻撃しまくってっ!仕事はどうした?忙しいんじゃなかったわけ?さんざんぱらあたしをほったらかして、連絡の一つもいれないと思ってたら、できるんじゃん。やろうと思えば電話できるんでしょ?だったら、いままでのあんたは何なのよっ!?NYから帰国した当時のあんたは、あたしにマメだったわよね?それがいつの間にか、忙しい忙しいって、デートどころか電話もしてくれやしない。メールだって、面倒くさいとか言ってっ!あたしがどんなに寂しかったかわかる?その癖、自分の都合で、男と会うな、会社の飲み会でるな、ハッ!もう、笑っちゃうしかないわよっ」
 「…お前、俺が電話しまくったの怒ってんのか?それとも電話しないことを怒ってるわけ?論旨がバラバラ」
 頓珍漢な返答に、思わずつくしは切れて、司に回し蹴りを入れかける。
 い、いかん、いかん、もう高校生の時みたいな子供じゃないんだから。
 こんな往来で、いかにもな高級スーツを着た、知名度ある男をノシたら、とんだ恥かきだ。
 司だって恥ずかしいだろうけど、つくしだって十分恥ずかしい…。
 もっとも、司にそんな世間体があるかは大いに疑問だったが。
 「ああああぁぁぁぁ!このバカ男っ!ムカつく!腹立つ!!もうっ嫌っ!!!」
 自分でも自分が何を言いたいのか、すっかりつくしはわけがわからなくなっていた。
 人間我慢しすぎると、一気に爆発する。
 これまでの憤懣が溢れすぎて、言いたいことの半分も言えない。
 「…お前、寂しかったんか」 
 寂しかったか?
 もちろん、寂しかった。
 そうよ、あたしは寂しかったのよ。
 つくしの方が自分自身のヒステリーにあきれ果て、項垂れる。
 「ごめん、あたし、どうかしてるわ。今日は黙って帰って?明日か、明後日には復活するから。うん、電話にも出るよ」
 「待てよ」
 「じゃ、気をつけて帰って?お疲れ様…って、まだ、これから仕事か。あんまり無理しないようにね」
 ため息をついて司を置いていこうとする素直じゃない女に、司の方がため息が出る。 
 それでも、この女の素直じゃないやせ我慢が愛おしいんだから、仕方がない。
 …どうしようもないくれえぇに、いかれてるからな、俺。
 苦笑しながら、パンパンと膝をはたき、立ちあがる。
 「待てって、言ってんだろ?言いたいことだけ言って、人の話も聞かずに俺を置いてゆくなよ。帰るなら俺も一緒だ」
 それでも立ち止らないつくしの横に、長い足であっという間に追いつき、横に並ぶ。
 なんだか辛い顔して、無理やり前を向いて歩き続けるつくしの意地っ張りな横顔を伺いながら、司が一人喋りだす。
 「この間のことは、本当に仕事。前々から、中東関係であきらんとこと合同でプロジェクト組んでるって言ってあっただろ?その取引相手が日本の伝統芸能とか芸術とかそういうのに興味あって、茶の湯は総二郎んとこに頼んだんだけど、華道は華道で総二郎と懇意のところに接待を頼んでたんだ」
 「…」
 「で、この間お前と出くわした女性は、その華道の一門の人で今回の接待のメインになってもらってる。その関係で、何度か打ち合わせするのに会っただけで、個人的に会ったことなんてほとんどないんだぜ?それがまさか、お前とあんなところで出くわすとはな」
 男はいなかっただろうな、とつくしに疑惑の視線を向ける。
 だが、つくしはいっぱいいっぱいだったので、そんな司の疑惑の目には気がつかない。
 「…宝飾店に入ったのも、その打ち合わせだったわけ?」
 「……」 
 痛いところをつかれてグッと詰まる司を一瞥して、つくしは歩き続けた。
 本当に疑ってるわけではないと思う。
 ただもう、いままでの不満が爆発して、司に無理難題を吹っかけ、駄々をこねたいだけ。
 そんな自分がわかっているから、頭を冷やしたいと言っているのに、この男はどこまでついてくるつもりなんだ。
 正直、自分に辟易し、司にうんざりし、つくしは情けないやら哀しいやら、憤しいやら、とにかく家に帰って一人になりたかった。
 あれほど、司に逢いたかったのに。
 「…これ」
 つくしの変わらないこわばった表情に、諦めて、司が懐から小さな箱を取り出す。
 こんな風に気まずい雰囲気の中で渡すつもりじゃなかったけれど。
 「なにそれ」
 「開けてみろよ」
 押しつけられた手の中の箱に、つくしはハッと目を見張った。




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