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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う③

愛してる、そばにいて0962

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 「…チッ、あきらか」
 すでに時刻は23時を過ぎてはいたが、いつもの日課のつくしへの帰宅メールを送るために携帯電話を取り上げ、その着信に気がついた。
 サマータイムの時差は、13時間。
 東京では14時前後、会社員であれば就業中の真っ最中だが、すでにビジネスと学業の二足の草鞋を履いてしまっている司とは異なり、親友たちはまだ大学一年生。
 あと数年の自由を満喫してるところだろう。
 …別に少しも羨ましかねぇが。
 いや、もう少し自分に時間があれば、もっとつくしとの時間をとったり、彼女をデートに連れ出してやることもできるのに、と多少の羨ましさもある。
 わずかに逡巡して、しかしこれまでも何度となくタイミングの問題であきらや総二郎からの電話を無視してしまっていることから、応答する。
 プッ。
 「俺」
 『おっ、司か。やっと出やがったか!』
 「……暇なお前らと違って、こっちは忙しんだよ!」
 ぞんざいな物言いだが、それでも意図せずして司の声音も柔らかくなってしまっている。
 あきらにもそんな彼の照れ隠しが伝わっているのだろう。
 気を悪くした風もなく、返す言葉は苦笑していた。
 『言ってくれるねぇ。が、…お前、マジにそっちで頑張ってるらしいな。この間、オヤジがニューヨークでお前を見かけたとか言って、褒めてたぜ』
 「おじさんが?」
 記憶を探ってみるが、あきらの父親にあった覚えがない。
 もっともいくら親友の父だとはいえ、親友本人でもないのに一々会いに来たりするわけもないから、どこかのパーティ会場か、商談の場ででもすれ違ったのだろう。
 『俺らにも何もいわずにいきなり渡米しちまって、……親父さんが倒れたのはこっちの耳にも入ってたし、近々引退の話も聞こえてたからそのせいかと思えば、いきなり後継者のお前の恋愛報道だろ?』
 「………ふっ」
 もちろん、あきらが言っているのは、司が伯父を動かして、わざとマスコミ各社にリークし、彼の都合がいいように書かせたものだ。
 『まさかとは思ってたけど、お前マジであいつ…牧野と籍入れたんだな』
 「まさかってなんだよ?ちゃんとお前らには言ってあっただろうよ」
 『…まあ、そりゃあな』
 しかし、あきらはもちろんのこと、その場にいた総二郎……それに類の誰も、その宣言をまともにとってはいなかったに違いない。
 いや、宣言した司でさえ、ウソを言ったつもりはなかったが、しかし本気の本気でそう言ったとは言い難い。
 ありていにいえば、放任というより放置してロクに彼に対して親として向き合ってこなかったくせに、司に権門の女をあてがい、閨閥結婚を目論む両親へのあてつけと、興味なさげな顔でつくしの関心を一心に得ている類への嫉妬、おそらくそれらから口をついて出た与太に過ぎなかったのだ。
 …けど、それでも俺の中では、常にあいつのことがあった。
 結婚するなら、惚れた女以外にはありえない。
 そして、司がこの世で唯一、惚れたことがある…おそらくこの先も惚れることがないだろう彼にとっての唯一の女はつくしだけなのだ。
 …なら、俺にはあいつしかありえねぇ。
 では、つくしにとっては…という欺瞞には目を瞑る自分を自覚して、なお、司の中にはそれしかない。
 「…そっちはどうだ?お前ら、まだ学生オンリーでやってんだろ?総二郎は、まあ、高校ん時にはもう茶会にも親父や兄貴の代理でやってんから、この先も親父が引退するまではそう変わんねぇかもしんねぇけど?」
 『まあな。総二郎はそうだろうな。俺は、……まあ、さすがに高校ん時とは違うけど、ボチボチ家業の方にも多少は顔突っ込まされてる』
 「ふぅん?」
 半分上の空で答えて、しかし、自分が本当に聞きたい…気になっているのがあきらや総二郎の現在ではないことに、司も自分でわかっていた。
 …別に、つくしが日本からいなくなったからって言って、あいつには痛くも痒くもねぇだろうし、それでどうってこともねぇはずだ。
 そうは思う。
 思うのに。
 『類のヤツ……』
 「………………」
 言葉を切ったあきらが大きく息を吐き出した。
 「なんだよ?」
 『お前、やっぱ知らねぇか』
 「だから、なんだって?」
 幼馴染みとはいえ、社交的でわりにお節介なあきらや総二郎とは違って、類から司に電話をかけてくることは滅多になかった。
 もちろん、司だけに限らないことだが、司も気が向かなければ平然と親友からの連絡すら無視するような身勝手な男だったから、一度音信不通になってしまえばそれこそ、もしかしたら1年、2年と連絡を取り合わないということも、この先はあるのかもしれない。
 常にツルンでいた学生時代とは違う。
 それでも互いに互いを親友同士だという認識は変わりはしないのだから、特に寂しさや気後れを感じるようなことはなかったが、それでも類には他の二人にはないわだかまりのようなものがある。
 あくまでも司の一方的なものであることもわかっていた。
 『類、日本、出たぞ?』
 「あ?」
 …まさか。
 まさか、という疑惑が沸き起こったこそ、自分で意外で、ドキリと胸が鳴ったのはおそらく気のせいなどではなかったに違いない。
 『静だよ』
 しかし、ついであきらの口から出た名前に、フッと小さく我知らず息を吐き出していた。
 …そりゃそうだよな。
 類がつくしを追って、ニューヨークに来るなどということはありえない。
 つくしが類に恋していただけ。
 類が恋していたのは、彼女ではなく、別の女だったのだから。
 そう思うことは、司に安心と…そして、同時にひどい嫉妬と羨望を沸き上がらせ、プライドを傷つけ彼を苦しめた。
 『静がフランスに渡ったろ?……しばらくは、類のやつも日本に残ってたけど、お前と牧野が渡米してすぐだったかな。あいつもお前らに何か触発されるところがあったのか、それともやっぱり静を追いかけずにはいられなかったのか、あっちに渡ってよ。…けど、どうなってんだか、お前とおんなじで、俺や総二郎からの連絡に出ねぇんだよ。静と上手くやってんだったら、面倒臭がってもそれなりに応答するとは思うんだよな』
 司の場合と、状況が違う。 
 実家との闘争の為に渡航した司とは異なり、目的もなく渡仏したというのなら、親友からの連絡に応答することくらいできるはずだった。
 ―――それだけの精神的な余裕があれば、の話だったが。
 『もしかしたら、もしかしたら、あいつ…………今度こそ、静にフられちまったのかもしれねぇな』
 



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司とつくし大好きです

こ茶子さんのお話全部が本当に面白くて時間を忘れて読み込んでしまいます(´;ω;`)いくつかブロ友限定の記事もあってブロ友申請したいのですが、まだ会員登録したばかりでやり方がわからずじまいです(*_*)
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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