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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う③

愛してる、そばにいて0958

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 「あ、あの…その……えっとぉ」 
 『………………』
 「あ、あたし」
 牧野、と名乗ったのだから、通話に出たのは牧野家の誰かに間違いないはずだったし、牧野家の家族構成は、父と母、娘のつくしと、弟の4人だと聞いているのだから、電話に出た女はつくしの母・牧野千恵子だろう。
 それなのに、
 …ど、どうしよ。
 第一声をなんと呼びかければ良いのか、まるで思いつかない。
 自分から電話をかけたというのに、かけることへの気後れに気持ちが集中していて、相手が出た場合、また相手が父だった場合、母だった場合、弟だった場合と、それぞれの相手に応じたシチュエーションを想定していなったことを今更ながらに後悔した。
 果たして、『お母さん』と言えばいいのか、あるいは、自分は娘のつくしだと名乗ればいいのか。
 ―――何をどう話せばいいのか、突然にかけた電話の理由にまでどう繋げればいいのかまったくわからないでいる。
 …このままじゃマズイよね?
 いたずら電話だと間違えられ切られてしまったらどうしようと、焦れば焦るだけ言葉がでない。
 「あ……ぁと…その」
 『もしかして、つくしなの?』
 しかし、どういった恣意だったのか、あるいは母親のカンだったのか、シドロモドロで「あ」と「その」の繰り返すことしかできないでいたというのに、千恵子から尋ねかけられる。
 「………うん」
 『つくし……』
 電話の向こう側の見知らぬ女―――母親の彼女の名を呼ぶ声は、どこか湿って震えていた。
 …本当にお母さんなんだ。
 先程まで、グルグルとテンパっていた気持ちが、それでストンと腑に落ちて、電話口の向こう側の母親と同様心の中が湿った何かでいっぱいになってゆく。
 どんな人なのか。
 どうして、自分一人を見知らぬ男になど託したまま平気でいられるのか。
 そんな心のどこかにあったわだかまりを溶かして、母に今の自分の気持ちを、哀しみや孤独、……怯え惑っている心を慰めてもらいたい、頼りたいという気持ちが湧き出してくる。
 「お母……さん」




*****




 電話越しの声だけとはいえ、やはり唐突すぎた母子の相対は、感無量に黙り込んでしまうばかりで、かなりの時間が過ぎてしまっていた。
 それでも年の功なのか、千恵子の方が立ち直りは早かったのか、グスグスンと鼻を啜り、咳払いをして口を開く。 
 『元気なの?』
 「………うん』
 『もうずいぶん遅い時間だけど、……あんたいつもこんなに夜更しなの?』
 「あ」
 千恵子の言葉で気がついた。
 現在、時刻は朝9時半を回ろうとしているところだが、日本―――東京では真夜中だということを。
 …そうだ。時差があるんだった。
 「ごめんなさい」
 『あらやだ、別に叱ったわけじゃないわよ。……あんたももう大人なんだしね。夜更かしくらいで一々あたしも怒ったりはしないけどね。健康の為に、できるだけ早寝早起きは心がけたほうがいいわよ?』
 そうではなかったが、かといって母の勘違いを訂正しようにも、まだ彼女に慣れていなくてどこか気後れしているつくしには、間断なくおしゃべりを展開する千恵子は、どうにも口を挟みづらい相手だ。
 『それにしても急だったから、驚いちゃったわ』
 「そう…だね。……ごめんなさい」
 『だから、責めてるんじゃないわよ。さっきからなに、ママ相手に他人行儀に謝ったりしてるのよ!』
 今度こそ叱咤されてしまう。
 つくしにとっては、『母』という呼称だけで、いまだ見知らぬ女でしかなかったが、千恵子にとっては今も変わらず自分の娘なのだろう。
 そして、つくしも『母』であるというだけで彼女が恋しい。
 『まあいいわ。急でもなんでも。あたしたちからじゃ、番号を教えてもらっても、イロイロあったし、あんたによけいな刺激を与えてしまうんじゃないかってかけられないでいたし。……あんたの方から電話をくれて、本当に嬉しいわ』
 「お母さん」
 これまでほとんど脳裏に浮かぶことがなかったが、強烈に彼女へと傾倒してゆく心が、母に会いたい、会って甘えたいという気持ちで我慢できなくなってしまいそうだった。
 「お、お母さん、あの、あのね!日本にっ」
 …帰りたいの。
 『おめでとう!』
 「………………」
 出鼻をくじかれ、言いたかった言葉が飲み込まれてしまう。
 『とうとう道明寺様と結婚したんですってね!道明寺様から連絡いただいたのよ。もうママ嬉しくって……ホント、良かった、良かった。良かったわ』
 歓喜の声。
 千恵子が言う‘道明寺様’とは、当然、司の両親ではなく、司自身のことに違いない。
 「……司に、聞いたの?」
 『そうよぉ。一時はどうなることかと思ったけど、あんたもついに腹を括ってくれたのね。そうよ、そうじゃなくっちゃ。それがあんた自身の幸せの為なんですもの』
 「……………」
 嬉しそうな千恵子の声音は真実、つくしへの愛情に溢れ彼女の幸せを願っているように聞こえる。
 大財閥の御曹司との道ならぬ恋に怖気いていた娘が、ついに勇気を振り絞って、すべてを恋人に託し、ゴールインした―――そして、きっとその最後には二人は永遠に幸せになったというオチがつくのだろう。
 千恵子が語るそんなシンデレラ・ストーリーは、どこかの物語の世界のようで、とても現実味がなかった。
 ましてや、それが自分自身のことだとは、とてもつくしには思えない。
 …でも、そうなんだよね。
 『あんな凄いお屋敷のお坊ちゃまなんですもの。そりゃあ、あんたが怖気づいて逃げ出したくなる気持ちもわかるわよ?ましてや、ご両親が反対されてるそうじゃないの?……まだ高校生の若さで赤ちゃんができちゃったのは置いておくにしても、そういう精神的に不安定な時期に、イロイロあったら、……つい冷静な判断を失って、突拍子もない行動をしちゃうのも仕方がないことだと思うわ』




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