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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う③

愛してる、そばにいて0955

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 「いくら親子だって、なんでもかんでも話せるつーもんでもないし」
 「え?」
 「特にウチ場合は…つーか、ウチは特にそうだな。親子の関係なんて希薄なもんだし、干渉してくるだけ、赤の他人より厄介なんじゃねぇの?」
 「……………」
 言葉のとおり、投げやりな司の声音はどこまでも淡々としていて、自分の親との関係を語るにしては冷めて、寒々としている。
 「そうじゃなくても、姉貴の場合、もうよそんちに嫁いでるからな」
 「……?」
 「ああ。お前んとこみたいな家だとそういうのってねぇのか」
 まったく理解していない風のつくしのキョトンとした顔に、司が呟きを溢す。
 しかし、その呟きの意味さえ、今の彼女にはわからなかったんだと思い当たったらしい。
 「たとえ親子だ、姉弟だっつーても、もう他所んちの嫁になった姉貴は、本当の意味ではもう‘道明寺’じゃねぇってことだ」
 「道明寺じゃない?」
 「ああ。姉貴にも姉貴の……今の家の中での立場っつーもんがある。実家を最優先できないのは当然のことだが、俺らんちみたいな家にはよそには洩らせねぇもんあるからな。板挟みになるって意味でも、よけいなことは知らせない方がいい場合もあんだよ」
 「……………」
 寂しい関係だと思うのは、つくしの思い込みだったか。
 自分の常識に当てはめて他人を測りにかけるなど傲慢なことだ。
 けれど、
 「………司にとっても、そうなの?」
 椿はとても司のことを心配しているように見えた。
 彼女の司を語る言葉の端々には弟への深い愛情が溢れていて、バカアホという悪態にも椿がどれほど彼を心配して大事にしているのかつくしにも容易に伺えた。
 「……………」
 「司?」
 彼女の髪を撫でていた手が止まって、司が口を噤んだ。
 しばらく、彼の答えを待ったものの答えがないことが彼の答えだということなのか。
 再び司の手が動き出し、彼女の髪を優しく梳いてくれる。
 …あたしには、それをどうこういうことなんてできない。
 たとえ妻であろうと別々の人間であり、また違う環境で育った人間なのだ。
 それに先ほどからの眠気がもう耐え難く…起きていられそうにもない。
 …ねむ。
 背中にあたる彼女より高めの司の体温や、髪を梳いたり撫でたりといった優しい手の感触に、気が付けば瞼が落ちていた。
 「……結婚式、ちゃんとそのうちやるから」
 …え?
 「入籍した時に約束したろ?誰よりもすげぇ結婚式やるって。……新婚旅行にも連れて行ってやる。だから、今はごめんな」
 しかし、そんな密やかな声をバックに、つくしは眠りに引き込まれてゆく。
 …もうダメ。
 ただ寝入りしな考えたのは、司がしてくれた結婚式や新婚旅行の約束ではなく、
 …スーツ、どうしよ。明日早めに起きて、支度しておかなくっちゃ。




*****




 スー、スーと聞こえる寝息に、つくしが寝入ったことが司にもわかった。
 子供みたいなあどけない顔で眠る彼女は、普段の童顔がなおいっそう幼く見えて、どんなことをしても守ってやりたい庇護欲を司に感じさせる。
 …以前は、火の玉みてぇな気性の女だとしか思わなかったのにな。
 今の彼女は風にも耐えられない花の風情で、弱々しく、それこそ以前の司だったらそうした女には興味の欠片も惹かれなかっただろうにとおかしくも思う。
 とはいえ、勝気な女にも、どんな気性の女にも惹かれたことがないのだから、‘つくし’だからこそ、ということなのだろう
 …お前だから。
 どんなつくしも恋しく、愛おしい。
 彼が綺麗に梳いてやった髪を背中に流し、あらためてギュッとつくしの華奢な体を抱き込み、司も目を瞑る。
 …本当はまだ抱きたい。
 それが本音だ。
 おそらく性欲も人並み以上に強い方なのかもしれなかったが、司はまだ18才、もっとも性欲の強い時期でいわゆるヤりたい盛りというヤツだ。
 なるべく優しく…とつくしへの配慮も心がけているつもりだが、やはりどうしても一度彼女の柔肌に触れてしまえば、理性がきかなくなることも度々だった。
 激しい気性は昂ぶり安く、以前はスポーツや暴力というカタチで発散していた。
 しかし、ここのところ仕事と勉学に追われ、とてもではないが気晴らしなどしている暇はない。
 暴力にしても、やるせない苛立ちをブツけていただけで、愚かなガキである自分を辞めることを決意した今の彼にとって許される行為ではなかった。
 …けど、ムシャクシャすんのはどうしようもねぇんだよな。
 らしくはなかったかもしれなかったが、ため息をつかずにはいられない。
 今の彼には、こうして愛する女を抱き、彼女の素肌に触れ、温もりを感じることでしかストレスを発散する方法がないというのに、それさえもここのところ彼女が起きている時間帯に帰宅すること自体が稀だったから果たせないことが多かった。
 かといって、適当な相手を見繕って同じことをする気になれない。
 司には元々誘惑も多く、そうと望めば、遊び本気を問わず手に入らない女などいなかっただろう…つくし以外には。
 機会はないわけではないのに、自分でも不思議なくらいに他の女に興味が沸かない。
 いや、興味を抱けない。
 …我ながらどんだけだっつーんだよな。
 苦笑してしまう。
 「ま、いいけど。こうしてるだけでも、なんかすげぇ気持ちいいし」
 …落ち着く。
 気が付けば、彼女の後ろ頭やうなじ、肩にチュッ、チュッとキスを落としてしまっている。
 意識してやっているわけではなかった。
 以前の…彼女を知る前の自分がどうやって生きていたのか、いまや思い出せないほどにつくしに依存してしまっている自分を自覚してもいた。
 …この俺が、な。
 誰よりも自分がそう思うのだから、他人から見たらそれは意外だろう。
 意外…からの連想で、久々の再会で自分を見た時の意外さも顕な姉の顔が思い浮かんだ。
 「………姉貴を信用してねぇのか、か」
 先ほどのつくしの質問が蘇る。
 ―――タマさんも心配さんも心配していたわよ。
 それはそうだろう。
 彼の諫められなかった。
 まっとうな人間にすることができなかったと、彼の荒んだ行状に責任を感じて長年勤めた道明寺家を離れいったくらいだ。
 それでもなお、最後まで司のことを心配していただろうということを、彼も疑ったことがない。
 『私からあんたたちのことはタマさんにも話したわよ?凄く驚いていたけど、あんたのために良かったって喜んでた。寂しがり屋な坊ちゃんだから、これでもう寂しくはないだろうって』
 ふっと溢れた司の微笑は、けっして皮肉を含んだものではなかった。
 『……あんたのつくしちゃんに会いたいって。凄く使用人とか立場を慮る人だから、いくら家族同然でも、タマさんからあんたに直接連絡なんてできないでしょうから、あんたもたまには連絡してあげなさいよ?』




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