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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う③

愛してる、そばにいて0954

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 「裸でいいじゃん」という司に目を白黒させながら、それでもどうしてもパジャマが着たいと頼んだつくしに、結局司が折れて、ロング丈のチュールレス・ネグリジェを着せてくれた。
 …これもけっこう恥ずかしいかな。
 自分では選ばないチョイスだが、司もやはり年頃の男だからか、わりにこういったヒラヒラとして、薄い生地のものをつくしに着せたがる。
 ーーー司とのセックスは、激しくはあったけれど、乱暴ではなかったと思う。
 …司としか経験ないからわからないけど、たぶん凄くいつも気を使ってくれてるんだよね?
 挿入される前にもかなり丁寧に馴らされ、彼女の衝撃が少しでも和らぐように努力してくれていた。
 司の激しさや回数の多さ―――起きて会えた時にはどんなに司が疲れている時にも求められた―――、性欲の強さはおそらく年齢的にも致し方がないところなのだろう。
 …よ、よくわかんないけど。
 それでもさすがに行為の直後は腰が抜けたようになっていたが、少しした今は怠いだけで足腰が立たないというわけでもないのに、司は甲斐甲斐しく彼女の世話をして、彼女に何もさせてくれない。
 …まあ、あたしがしなきゃならないことなんて何もないんだけどね。
 けれど、まだ司の明日のスーツを選んでいない。
 彼女の唯一、課せられた仕事であり、何一つ家事の類もほとんど司の世話さえもさせてもらえない彼女が唯一‘妻’らしいことができる機会だ。
 …それくらいちゃんとやりたい。
 彼以外に自分を必要としてくれる…存在意義をくれる人はいないのだから。
 すでにつくしはかなり眠気に誘われていたが、日頃激務で疲労しているだろうに、司はそうでもないらしく、肩肘を付いてもう片方の腕で背中から抱き抱えた彼女の髪を撫でたり、頬や髪、耳にキスを落として、寝物語に思いついたことをあれこれと話しかけてきていた。
 つくしにしてみても、司だけが唯一たわいない彼女の話を聞いてくれる相手だったから、できることならちゃんと起きて、いろいろなことを話したいと思うのに。
 …眠い。
 「聞いてる?」
 「……ん、聞いてるよ?」
 とたん大欠伸をしたつくしに、司が苦笑して、
 「眠いなら遠慮しないで寝ろよ」
 「平気。……椿お姉さん、あたしのこと知らなかったんだね」
 「……ああ」
 「隠してたの?」
 これまでの彼女の経験した出来事を考えれば、司は当然彼女との交際を隠していたのだろうし、それがどうしてかなんてつくしにも容易に推測できた。
 …司はこんな凄いお家のお坊ちゃまなんだもの。あたしたちはまだ本当なら高校生なんだし。きっと好きだってだけじゃダメで、すごい反対されたんだろうな。
 あるいは彼女自身の記憶喪失もそうしてことからきているのかもしれない。
 …もしかしたら、司と引き離されそうになったとか?
 だからこうして、周囲の賛同も取り付けていないのに、夫婦としてあることに違和感ともやもやとした焦燥のようなものを感じて、素直に彼を好きだと思えないのかもしれない。
 「隠してた…つーわけでもねぇけど」
 「ないの?」
 司らしくない曖昧な物言いには、どこか自嘲のようなそれでいてあきらかな皮肉が込められていた。
 「話す機会ってものがそもそもねぇし」
 「機会がない?」
 「会う機会そのものがないって言った方がいいか。……今だって、闘病中で入院してるオヤジはともかくとして、おフクロはニューヨークの本社にはいるっつーのに、ほとんど屋敷には顔出さねぇだろ?」
 「え?お母さんお屋敷に帰ってらしてるの?」
 「そりゃ、帰って来てるだろ」
 つくしが目を大きく見開く。
 てっきり帰っていないからこそ、いまだ顔を合わせることができていないのかと思っていたのに。
 「ま、会社から直接あっちこち飛び回ってることも少なくねぇし、社内ですら俺も滅多に顔を合わさねぇからな」
 「…司も」
 てっきり屋敷につくしがいるから避けられているのかと思っていた。
 おそらくそれもあったのだろうが、考えてみれば、これだけ広大な屋敷のこと。
 そうと告げられなければ、誰がどこに滞在していようと、楓が帰宅していてもつくしには知りようがない。
 …でも、お義母さんは、あたしに会おうと思えば会えたよね。
 「記憶ねぇこと」
 「え?」 
 「姉貴にはお前から言ったの?」
 「あ…えっと、ううん」
 首を横に振る。
 「なんで?」
 「なんでって……」
 むしろなぜ司が姉には伝えていないのか、そちらの方が不思議なくらいだ。
 「何をどう切り出したらいいのかわからなかったし」
 「姉貴、すげぇおしゃべりだったろ?」
 「あ~、まあ」
 否定はできない。
 マシンガントークで口を挟めないくらいで、さらに司ばりに強引だったから、ほとんと椿の勢いに押されて、彼女のなすがまま頷いていただけのような気もする。
 …でも、イヤな感じの人じゃなかった。
 強引さの中にある温かな優しさ。
 「明るくて、フレンドリーな人だね」
 「……すげぇ凶暴だけどな」
 「え?そうなの?」
 意外な形容詞だ。
 司の姉の椿は、弟によく似て、それこそ女神のような気品のある華やかな美貌の女性だ。
 たしかにかなりハキハキとした物言いといい、たおやかとかおとなしやかというよりは、かなり勝気そうな女性ではあったけれど。
 「ガキの頃から、俺がイタズラしたり悪いことすっと、平気で俺を殴る蹴るするような女だし」
 「そ、そうなんだぁ」
 「……お前もだけど」
 「……ええっ!?」
 ポツリと呟かれた言葉に驚いて振り返る。
 …冗談だよね?前にもそんなこと言ってけど、まさかあたしが司に殴る蹴るだなんて。
 しかし、やはり聞き違いだったのか、何食わぬ顔の司がチュッと唇にキスを落としてくる。
 「つ、司」
 「タバコの代わり」
 チュッ、チュッと羽のような軽いタッチで触れるだけのキスが照れ臭い。
 …こういうキスは嫌いじゃない。
 舌を絡めて、性感を高めるようなキスは、セックスと同じようにどこかゾワゾワとして、快楽よりもなぜか嫌悪感と逃げ出したいような気持ちが沸き立ってしまうのに。
 「なんか聞かれなかったか?」
 「…聞かれたけど」
 馴れ初めとか、司はどんな恋人で…夫なのかとか、日頃何をして毎日を過ごすのかとか、詰問というよりは、単純にたわいない雑談として。
 …たぶん、っていうか、間違いなく気を使ってくれたんだよね?
 「どう答えていいのか困っちゃって、言葉に詰まってたら、お姉さんの方から察してくれて、今度また気が向いたら聞かせてね、って」
 「ふぅん?」
 「えっと、司のお友達?幼馴染みの人たちにも、少しはあたしのこととか聞いてたみたいだし」
 「……ふっ」
 司の失笑にはどんな意味合いが含まれていたのか。
 ぞんがいに冷たい冷笑に、つくしが司の顔をジッと見上げる。
 「キス?」
 「え?」 
 「キスして欲しい?」
 とんでもない勘違いに、つくしは慌てて首を横に振り、前に向き直る。
 「ち、違うから」
 「なんだ、残念。ツマンネーなぁ」
 くくくと楽しそうに笑われ、どうやらからかわれたらしいと検討をつける。
 …なんだかなぁ。
 やたらと外人ばりに愛情表現をしてくる司へなのか、いつまでも慣れない自分への呆れなのか、そんなことを思う。
 「親は…ある程度俺らの事情を把握してるし、俺もまあ…全部が全部ってわけじゃねぇけど喋った」
 「えっと?」
 「コトが発覚して、慌てて俺の身辺調査したらしいな。……ま、たいがい放任つー名の放置親だから、何かあってもまたもみ消せばいいって思ってたんだろうが、さすがにそうもいかなかったんだろうぜ?珍しく焦ってたか」
 「……………」
 クククという、今度の司の嗤いは良くないものだ。
 つくしにもそれがわかる。
 司を愛せるかも知れないと思う度に、なぜかそうやって冷水を浴びせかけられたように、ひんやりとした冷たい何かが心の内に滑り落ちるのは、こういう時だった。
 …考えちゃダメ。
 無意識のストッパー。
 司を嫌いになってしまえば、誰を頼ればいいのか、そんな打算でこうしている自分が厭わしくなってしまう。
 「……親御さん、司のお父さんやお母さんからは、お姉さん、あまりいろいろ聞いていなかったみたい」
 「そうだろうな」
 「どうして?……あたしたちのこと、お父さんたち反対してるんでしょ?普通はお姉さんにもどうしたらいいのか相談するものじゃないの?」




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