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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う③

愛してる、そばにいて0946

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 息巻くでもなく自身の母親を嘲る司の顔を、まるで不思議なものを見たかのように椿がマジマジと凝視する。
 「なんだよ?」
 「いや、相変わらず親に対してのさんざんな物言いだけど、なんかやっぱりあんたかなり変わったわよね?」
 「俺が?」
 「大人になった…そう言ってもいいのかわからないけど、少なくても以前みたいにむやみやたらにお母様たちに反発して、逆らって、バカなことしでかすだけのボンクラじゃなくなってきた気はするわね」
 司のこめかみに青筋が浮かぶ。
 ここまで歯に衣着せぬ物言いをするのも、この姉とかつてのつくしくらいなものだ。
 …ガキのまんまじゃいらねぇ。
 ―――カエルの大将。
 かつてつくしに言われた言葉。
 それこそむやみやたらに親に逆らい、つくしを手放すのはイヤだとダダを捏ね続けても、望みが適うことなどないことはもう彼にもわかっている。
 彼が道明寺財閥を手に入れるしかないのだ。
 牙を磨き、爪を研ぎ、……道明寺財閥を手中に収め、誰に邪魔されることもないよう力を、自分自身の力を手に入れる。
 「………ところで、あんた伯父様と手を切ったわけじゃないのね?」
 「あ?」
 「つくしちゃんにつけてるSPのウチの何人かって、あれって伯父様のところの人よね?」
 「よくわかったな」
 司がうっすらとした笑みを浮かべ、わずかに椿が眉根を潜めた。
 我ながら寒々しい笑みだっただろう。
 しかし、椿はそのことに対しては何も言うことはなく、話を続けた。
 「私もさすがに最初はわからなったんだけど、ミランダ…あの子が新米の頃、ちょっと私にもつけられてたことがあるから」
 「へぇ?そうだったか?」
 司は憶えていない。
 というか、大半の使用人は置物のようなもので、一個人として覚えていることなどほとんどなかったから、それも当たり前だった。
 かつて乳母代わりだったタマと、数人の主だった使用人たちだけで、それもタマ以外は役目を辞せばいずれ忘れ去る程度の者たちばかりだ。
 「姉ちゃんにベラベラ喋ったってか?職務違反もいいところだな」
 皮肉に笑んだ司の表情に椿も彼が瞬時に心積もりしたことを察して溜息をつく。
 「…ちょっとだけよ。私にまで隠すあんたが悪いんでしょ?」
 司が肩を竦める。
 「お母様たちが、つくしちゃんに何かするとでも思ってるの?」
 「するだろ、そりゃ」
 「………………」
 あっさり肯定した司に、椿が口を開けたまま絶句する。
 「伯父貴の手下どもにしても、完全に信用できたもんでもねぇから、どっちにも張り付かせてんだけどな」
 双方が双方の監視役だった。
 伯父の屋敷と場合とは逆に、伯父のSPの方を重用してはいるが、その伯父の思案次第では、つくしを連れ出すこともあり得るから油断はできないが、かといって一日中彼女の傍に司がいれない以上、どうしても両親による彼女の拉致を防ぐためには彼らが必要だった。
 「ま、でも、オヤジやババアの方は、そうあからさまなこともできねぇだろうけどな」
 「…………なによそれ?」
 傲慢に嗤う司の顔は、皮肉に歪み、彼が何かを抱えていることが椿にも容易に察せられた。
 いや、隠すつもりもないだけだろう。
 「お父様たちの弱味でも握ってるわけ?」
 「どうだかな」
 「………あんた」
 「俺は姉ちゃんとは違うぜ?」
 ハッと椿が司の顔を見直す。
 「…お、そろそろやべぇな」
 司の腕時計を確認して顔を顰めた。
 元々忙しいからと面会を断ったにも関わらずゴリ押しされ、無理矢理にもぎ取られた30分の時間だ。
 「わりぃけど、俺、このあと、重要な会議に顔出さないといけねぇんだわ」
 「………会議?」
 「商家の小僧よろしく、あれこれ叩き込むだけじゃ飽き足らず、壁の花してでも実地で学べとさ」
 「なるほどね」
 司には基本がない。
 下地の下地は幼き日からすでに教え込まれてはいたが、グレて荒んでいた数年間はそんな両親に反発して、英才教育からも逃げていたから、余計に四苦八苦していた。
 …つくしにはそんなん、とても見せられねぇけど。
 両親は熟知しているだろうが、それでも自身の苦労や努力を彼らや他者に見せて弱味を見せることができなかったから、せいぜい涼しい顔をして他人の何倍もの努力をするしか司には方法がない。
 それでも、つくしのために…いや、彼女を得たい自分のために。
 …折れるわけにはいかねぇ。
 改めて、司は自身の肝に銘じた。
 「あんたがそうしたことに反発もしないで、ちゃんと向き合ってるなんてね」
 「なんだよ?」
 シミジミと呟く椿の顔はなんとも言えない複雑なものを含んで苦笑していた。
 「違和感ありまくりだけど、それも全部つくしちゃんのおかげかぁ。それだけでもお父様たちはつくしちゃんに感謝して、嫁として歓迎すべきでと私なんかは思うんだけどねぇ」
 司は答えない。
 たださっさとしろとばかりに、自分も席を立ち先ほど投げ出した書類の束から必要なものを抜き出し、半ば椿を無視して支度を始めてしまっている。
 「ま、しょうがないわね。…あんたがお母様たちを脅してまで手に入れたつくしちゃんとさえも、ロクにデートもできないくらい忙しいっていうんだもの。お姉さまの相手もそうしてられないか」
 「そういうこと。さっさと行けよ」
 「はいはい。……でも、もうちょっとあんた、あの子のこと気にかけてやりなさいよ?」
 「あ?」
 司が眉根を寄せ、顔を上げた。
 あからさまな不機嫌な顔は、思わぬことを言われ気分を害していることを椿にも伝えていたが、それで怯むような姉ではない。
 「気にかけてんに決まってんだろ」
 「そう?そうは思えないわよ。……あんたが本当のところどういうつもりでこんな無茶を―――あんた自身もまだ高校生で、私たちの世界とはあまりに違うところにいたつくしちゃんを親元から引き離してまで強引なマネをしたのか知らないけど、人間は食事をさせて、ものを与えていればいいってものじゃないってこと、あんたちゃんとわかってる?籠の鳥みたいに囲って、……あの子を、つくしちゃんを壊してしまうつもりなの?」




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