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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う②

愛してる、そばにいて0938

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 通された診察室は、前回と同じ、どこかのオフィスのようで、観葉植物が置かれ明るく美しかったが、それでもつくしのイメージする病院の診察室とはだいぶ違った。
 もっとも、日本でも産婦人科を受診した憶えがないのだから、日本でも似たようなものなのかもしれなかったし、やはりアメリカという国柄の違いはあるのかもしれない。
 ‘Was ist denn los!?(※なんだって?!)’
 つくしにはわからない言葉で、司がいきなり怒声をあげて、つくしがビクリと肩を揺らす。
 前回は日系人の医療通訳が間にいたのだが、今回は診察予約自体も急だったということもあったが、予定していた通訳が急な疾病の為欠勤したとかで、病院側が日本語のできる人間を用意できなかったということを、彼らが病院に到着してから告げられることになってしまっていた。
 影なりといえどSPたちが追尾している。
 その気なら通訳代わりに彼らを呼び出すこともできたが、司は彼らの同席に何色を示して、ドイツ語を理解できる医師ならば用意できると言われ、司もドイツ語なら理解できるということで、急遽前回の担当とは別の人物がつくしの診察に当てられた。
 が、診察の前段階、問診の段階でどうやら雲行きが怪しくなったようで…。
 「チッ」
 不機嫌に舌打ちをする司を不安げに見上げるつくしの手をとり、いきなり司が彼女を椅子から立たせて、診察室の外へと引っ張って連れ出してしまう。
 それでも引っ張られながらもなんとか背後を振り返って、微苦笑した医師が肩を竦めているのに会釈をする。
 …なに?どうしたの?
 今の彼女は不安で一杯だった。
 カツカツカツッ。
 タタタタッ、タッタタタッ。
 「はぁはぁっ、つ、司っ」
 自分のペースならばまだしも、ほとんど小走りの速度で、無理やりのように歩かされて息が切れてしまう。
 それでも彼女の苦しい呼びかけに、司もすぐに気が付いてくれたようで、ゆっくりと歩く速度を緩めて、はぁ~と大きく息を吐き出した。
 「……わりぃ」
 「ど、どうしたの?」
 どうやら何かを怒っているとか、聞く耳を持たないというわけではないようで、強引ではあったがそれでも彼女を掴む手の力は、それなりに気遣いがありいつかのようには骨も折れよとばかりには握り締められていはなかった。
 息を切らしている彼女を見やって、周囲を見回し、長い廊下の一部に設置されていた長椅子へと彼女を導いてくれる。
 「わかんねぇからって、妊娠してないとは限らねぇんだもんな」
 「……え?」
 独り言のように呟かれた言葉に、目を瞬く。
 しかし、
 「ちょっと待て」
 彼女をソファに腰掛けさせ、すぐそばの自販機からミネラルウォーターのペットボトルを買い、キャップを緩めて彼女へと手渡してくれる。
 「あ、ありがと」
 「けっこうここ、ヒーター効きすぎてっから喉渇くよな?」
 言われて、自分が口を付ける前にと司へと今手渡されたばかりのペットボトルをつくしが差し出す。
 「飲む?」
 「…いいよ。俺は……お前が飲み残したのもらうから、とりあえずお前飲め。パーティでもガブ呑みしてたわけじゃねぇし、あっちにこっちのと連れ回したから疲れただろ?」
 気遣いに満ちた言葉。
 司は言動もたいがい荒々しいし、かなり彼女を振り回すところもあったが、それでも彼が彼なりの愛情と気遣いで彼女に優しくしてくれようとしてくれているのが、つくしにもわかる。
 せっかくの気遣いだ。
 それほど喉が渇いた気もしなかったが、言われるままに一口口に含むと、むしろ自分で自覚する以上に、司の言うとおり疲れと喉の渇きを感じていたようで、ゴクリゴクリと半分ほども一気に飲み干してしまっていた。
 スッと司の手が伸びてきて、思わず仰け反りそうなになってしまう。
 が、その手が額にあてられ、
 「熱は…わかんねぇな。とりあえずこの間みたいに高い熱出してるってわけじゃねぇみたいだけど」
 自分でも今感じている倦怠感が果たして先日の発熱によるものなのか、単なる疲労なのか、あるいは妊娠によるものなのか判別つき難かった。
 「あの……さっき、先生なんて?」
 もしかしたら、お腹の赤ちゃんにとんでもにことが起きていたりするのだろうか?
 そのわりには、医師の態度は極めて平静で、むしろなんとはなしに呆れのようなものを含んでいたように思えるのは気のせいだったか。
 …でも、病院の先生にとっては病気とかそういうのって日常茶飯事なものなんだものね。
 そう思いかけて、この場合は病気ではないけど、と思い直す。
 一々患者の事情で一喜一憂しはすまいが…。
 司にしても一時的に逆上しただけで、それほど感情に囚われている感じではないから、何かあるにしても重篤なわけではないのかもしれない。
 開いた長い足の膝に両肘を乗せ、やや前かがみに腕を組んでいた司が、自分を見ているつくしをチラッと視線だけで振り返り、言いにくそうにわずかに逡巡を見せる。
 「なに?」
 「……って」
 「え?」
 「わかんねぇんだってよ」
 一度目を聞き逃し、問い返すと今度はハッキリ返事が返ってきたが、どこか憮然とした司の顔は不貞腐れた子供のようで、そんな彼に戸惑わずにはいられない。
 「7週になんねぇと診察はできねぇって。妊娠検査薬での検査の結果にしても、たぶん前回の流産の影響の可能性が大でまだわかんねぇんだってよ」
 




*****




 妊娠していないのかもしれない。
 そう言われて、つくしは正直複雑な心境だった。
 もしかしたら、…ホッとしたというのが一番大きかったかもしれない。
 いかにも意気消沈してしまっている司を前にして、それを前面に出すことなどとてもできはしなかったけれど。
 つくしの指にハマッた結婚指輪を撫でるようにして指先で触れていた司が、気を取り直したように再びため息をつき、立ち上がった。 
 「とりあえず帰るか。こんなところに座り込んでてもしょうがねぇ。……どちらにせよ、体調が良くないことはたしかなんだから、近いうちに今度は内科の医者を受診しようぜ」
 「あ、お水」
 慌てて司に差し出すと、「ああ」と司にしても失念していたようだったが、つくしに手渡されるままに受け取って、彼女の飲み残した水を一気に全部飲み干してしまう。
 「まあ、入籍は済ましちまったわけだし…あれだけ公の場で公言したんだ。ババアどもにしてもそう簡単に右に左にとは、俺らの結婚をご破算はできねぇ話だ」
 「……司」
 「どちらにせよ、狐と狸の化かし合いだ。………ババアが俺と同じ交渉のテーブルに乗っただけでも、すげぇ成果ってヤツかもな」




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