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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う②

愛してる、そばにいて0929

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 肌の色の違いや、言語の違いはあっても、そこに人がいれば集い、愛憎渦巻き、権や栄華を競い合う。
 それはどこに行っても同じことで、司の目に映る人々は誰も彼もが醜く色褪せていて、彼の目を引く人間も、興味を引くものもなかった。
 けれど―――、
 俯きかげんに傍らに立つつくしを、目を細めて司は見下した。
 今日の彼女は、真っ直ぐな長い黒髪を背に流して、柔らかな色合いのベビーピンクのシフォンドレスを身に纏い、大柄な女性の多い中、春を呼ぶ妖精のような可憐で清楚な魅力を引き立て、周囲の男たちの目を惹きつけていた。
 そんな彼女を独占していることへの誇らしさと、他の男には見せたくないという矛盾した独占欲と。
 「牧野」
 挨拶に押しかけてくる人々の切れ間を塗って、先程から気になっていた顔色の優れないつくしへと声をかける。
 ここ数日体調不良を訴えていた彼女だったが、ついに昨日はダウンしてしまい熱を出していた。
 伯父宅の主治医を呼び寄せた診断は、環境変化による心労と軽い風邪。
 今日、この場……司の誕生日パーティの会場であるニューヨーク・メイプルに彼女を引き出してくることは、直前の直前、伯父宅を出る時まで司も迷っていた。
 普段であれば、もちろん一もにもなく屋敷で休ませることを選択するのだが、彼にはそうはいかない事情がある。
 …今日が勝負だ。
 最後まで伯父宅で誕生日パーティを開くべきか、あるいは両親が提案してきたようにマンハッタンの本家…両親の屋敷でやるべきか、迷いに迷っての決断だった。
 『……誕生日パーティを開くつもりなら、そちらで行うことだけはやめなさい』
 電話での疲れたような母の声が蘇る。
 『痛くもない腹を探られるだけです。……この場合は痛すぎる腹なのでしょうけれど。あなたにしても、わたくしたちと全面的に争うほど愚かではないでしょう?』
 自分たちを完全に敵に回してやっていけるはずもないだろうという脅しがそこには含まれていなかったか。
 …当然、含まれてたさ。
 だが、司には切り札がある。
 自分自身を賭けのカードとした極めて捨て身のジョーカーだったが。
 声をかけられ不安げなつくしが、彼の顔を見上げて、視線が合ってしまったことで視線を揺らし、目を反らして、それでも小さな声で彼の呼びかけに返事を返す。
 「なに?司」
 ここのところ少しづつ彼に馴染んでいるのを肌で感じていた。
 けっして彼との肉体関係を歓迎していたわけではなかっただろうが、それでも彼女も‘恋人’だという彼の言葉を信じ、許容していたように思う。
 素肌と素肌が触れ合い、体温と体温の交わる感覚に、人は慕わしさを感じ馴染んでゆくものなのだという。
 時として、カラダの関係が男女の恋愛に発展することもあるのだということを、司も総二郎やあきらから聞いていた。
 そして、実際、司もそれを日々感じている。
 つくしを抱けば抱くほどに深まる愛着と恋慕。
 人はそれを単なる執着と呼んだかもしれなかったけれど、司は他の誰にも、どんな物にもそんなものを感じたことはなかったのだ。
 彼女の目に映りたい。
 彼女の可愛い顔を見て、笑顔を見せて欲しい。
 ―――彼女を自分だけのものにしたい。
 誰がそれを彼に‘恋’などではない。
 ‘愛’のはずがないと言えただろう。
 いや、たとえ誰に何をどう言われてもかまわなかった。
 ただひとり、つくしが今度こそ彼を見て、彼の心―――ハート(心臓)を受け入れてくれさえすれば。
 そして彼女もまた、彼に少しづつでも絆されてくれてはいなかったか。
 まだ恋ではないかもしれず、愛ではないのかもしれなかったが、それでもつくしのほぐれた顔に、声音に、遠慮がちにでも触れてくる手に、彼女の彼への親しみと好意…情めいたものをわずかながらにでも実感していたというのに。
 それなのに、今の彼女はまるで、記憶を失くす前の彼女に戻ってしまったかのようだ。 どこか隔意を含んで堅い表情の彼女に、胸が痛む。
 つくしに試せと渡した妊娠検査薬の結果は……陽性だった。
 彼の目論んだことだ。
 そのつもりで、毎夜の営みで避妊することを拒んだ。
 「熱、大丈夫か?」
 「…ん、大丈夫」
 意外に頑健なタチなのか、熱は一晩で下がり、今朝には平熱に戻っていた。
 もしかしたら知恵熱のようなものだったのだろう。
 高熱というほどではなく、それほど消耗しているわけでもないようだった。
 それでも病み上がりには違いない。
 気遣ってやる必要がある。
 「それとも疲れたか?」
 何か言いたげで、それでいて何も言おうとはしない彼女。
 あきらかに今の現状を迎合しているわけではなのに、それを遠慮会釈なく口にできるほどには彼に打ち解けてはいない。
 それでも記憶喪失直前の彼女と今の彼女とでは格段に違うところがある。
 彼女が彼を疎んじて、死を選んでまで彼から逃れようとした頃とは。
 つくしは困ったようなに小さく首を横に振って、小さな愛想笑いを浮かべた。
 少なくても以前の彼女、本来の‘牧野つくし’のようには、今のつくしは彼を完全にhは拒絶してはいない。
 …戸惑ってるだけだ。
 おそらくそこには、流産して間もなくの妊娠のこともあっただろうが、突然に告げられた婚約発表のこともあったに違いない。
 SPにも常に彼女を見張らせている。
 よもやもう彼の下から逃げ出すことなどできはしまいが。
 「あの……」
 「……あ?」
 よく知る人物を人と人の隙間、人垣の向こうに見つけた気がしてそちらへと気を取られていた司は、つくしが彼へと話しかけているのにしばらく気がつかなかった。
 しかし、タキシードの袖をチョンと掴まれ、引っ張られてやっとそれに気がつかされる。
 「なに?」
 「えっと…その、さっき」
 「……………」
 「このホテルに来る前に、……このパーティで、婚約を発表するって言ってた、じゃない?それって………?」
 つくしには直前まで、今日の彼の誕生日パーティで婚約を発表するつもりであることを伝えていなかったが、すでにそのことは現在の司の後見的立ち位置にいる伯父も了承していた。
 もちろん、司の両親の了承はとってはいなかったが、ある程度、彼の父や母も予想してはいるだろう。
 このパーティの前に、いくつかすでに爆弾を披露してもいる。
 …俺とこいつの間を邪魔すれば、俺が黙っていねぇことくらい伝わってるだろうよ、さすがに。
 そして、またこれは伯父も承知していることではなかったが、今日の婚約発表から間を置かず、メイプルから伯父の屋敷への帰路……母や伯父たちを出し抜いて、司はつくしと入籍してしまうつもりだった。
 すでに裏口から手を回して、アメリカでの入籍に必要な書類※も手に入れている。
 これにはかなり骨を折って、伯父を唆して手を回させたのだが、さすがにその当の伯父もよもや司が18才になった当日に強引に入籍を済ませてしまうつもりでいるとは夢にも思ってはいないことだろう。
 そのためもあって、伯父を説得し、両親の差し向けたSPたちを受け入れた。
 徹底交戦を望む伯父を説き伏せ、あたかも両親との和解を望み、その上での結婚を目論んでいるように見せかけたのだ。
 実際とのところ、両親との和解は方便ばかりの話ではない。
 伯父では場合によっては、沈没する船の道連れになりかねず、また信頼できない相手とのタッグは先行き不安定で、司の望むところではなかった。
 たとえ信用できないにせよ、少なくても彼の両親にとって司は一人息子であり、未来へと続く唯一の駒なのだ。
 そして、両親こそが、まごうことなき道明寺財閥―――彼らの帝国での最高権力者なのだから、彼らに真っ向から対峙し、抗戦し続けることなど利口なわけがない。
 …目や耳を働かせろ。頭をフル回転で動かして考えるんだ。
 まるでそれが彼の遺伝子に組み込まれたプログラミングを呼び戻す作業であるかのように、司はこれまでの怠惰や稚気を捨て去り、自身を変えた。
 ただ、彼女を…今目の前で、不安そうに目を揺らめかせているただひとりの女を手に入れるためだけに。
 「さっき言ったとおりだ。このパーティでお前との婚約を正式に発表する。……そして、俺はお前と結婚する。お前と俺は家族になるんだ。お前の腹の子供と三人で、今度こそ」
 ―――誰にも邪魔はさせねぇ。
 それがたとえつくし本人であってさえも。




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※アメリカでは戸籍の概念がないそうで、マリッジライセンス(婚約証明書)というものを取得して、それを牧師(神父?)に渡し、結婚式を挙げることが必須だそうです。
結婚式は形式的なものではなく、あくまでも本物。マリッジライセンスの取得方法や流れは州によって異なり、また、これまでと同じように過去編のために、いろいろ法律等も時代によって変わっています(もう何がなにやら^^;)。そのため、詳細は省きますのでご了承ください。
ちなみに20年前の状況はわかりませんが、2017年現在NYでは、このマリッジライセンスはオンラインでの記入10分ほどで取得出来て、これを持って市役所に持ってゆき、質問事項に答えて手数料を払えば30分くらいで終わるのだとか。それで翌日~60日以内に結婚式を上げればOKなのですが、結婚式も市役所内で出来て、こちらも必要書類を持って、立会人を連れてゆけば、法務官が結婚式を執り行ってくれて1時間半くらいで終了なのだとか。日本に比べれば面倒といえば面倒ですが…。

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こ茶子さん、こんばんは♪
どうしても つくしの年齢を思ってしまいます。
後年 つくしも振り返ってますが、司も まだ子供です。

つくしのことを好きなだけなのに、起こした事も、これから起こす事も、全てが取り消せない事実。
悲しい悲しい 恋なのが、ただ悲しいです。
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