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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う②

愛してる、そばにいて0928

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 「吐き気があんのか?」
 「…あ、うーん、ちょっとだけ?でも吐いたりまではしてないから、そんなに気にしないで。たぶん…その、いろいろあったから、胃の調子が少しだけ悪いだけだと思うし。あたしって意外に繊細なタイプなのかな」
 ははは、と珍しく冗談めかして照れ臭そうに笑うつくしへと微笑み返しながら、内心司は彼女が訴えた症状を何度も反芻し、心ここにあらず。
 …吐き気だって?
 もしかして…と思うことがある。
 いや、もしかしてではなく、たしかな確信として司の身の内を衝撃と昏い喜びがジワジワと湧き出して、体中に染み渡る。
 しかし、たしかに医者は妊娠してもいいとは言ってたが、彼女が子供を流産して、まだ一ヶ月あまり。
 さらには、セックスを再開してからまだ半月ほどしかたってない。
 …避妊もまったくしてなかったけど、流産してそんなにすぐに次の妊娠をするなんて、俺らすげえ相性がいいんじゃね?
 司は嬉しかった。
 しかしそんなことよりも、今度は前回のようにグズグズと医者に診察させることを先延ばしにさせるわけにはいかない。
 けれど、その疑いを彼女にどう伝えるべきか司は迷っていた。
 けっして、彼女が歓迎するはずもなかったが、しかしかといって、前回のように激しく拒絶的ということもないだろう。
 少しづつだが、それでも彼女が自分に馴染んできているのを司は感じていた。
 それは、たとえ恋と愛とか、そういった類の感情ではないにしろ、以前までの彼女が彼を毛嫌いにしていたことに比べればはるかにマシな状態だ。
 今度は受け止めてやれる。
 …受け止めさせて見せる。
 「医者…か」
 「え?お医者さん?」
 「……医者に見せよう」
 唐突な提案に、つくしの方が慌ててしまう。
 「そんなちょっと気持ち悪い程度のことだよ。前……流産した後にも、そんな症状がけっっこうあったし」
 「あったのか?」
 腹痛があることは司も承知していたことだったが。
 つくしが困ったような顔で、だが小さく頷くのに司は盛大にため息をついた。
 まだまだ、彼女は自分に遠慮している。
 わかってはいたことだったけれど。
 「言えよ」
 「………ごめんなさい」
 「だから怒ってるんじゃねぇって」
 項垂れているつくしの痩せた肩を抱き寄せ、軽く揺すぶって彼女の気持ちを引き立てる。
 「心配してるだけだ」
 「……うん、ごめんなさい。あ!」
 またもや謝ってしまい、しまったという顔をして焦っているつくしのキョドった顔に、和まされる。
 つくしは彼になにかを作るということがない。
 素直な感情のままに、思ったことをいう。
 たとえ何か隠し事をしていても、そこには後暗い企みがあるわけではないのだと信じられる。
 …誰もがこの俺を利用して、うまみを得ようとすんのにな。
 媚びることやおもねることを彼女がしないのは、彼女にはその必要がないからなのだろう。
 「本当に、ご……えっとぉ」
 謝らないようにすればするほどドツボにハマってしまっているようで、グルグルしてしまっている彼女の頭にキスを落として、とりあえず堂々巡りを断ち切ってやる。
 「とにかく、そう畏まるなってことだけ。あんまり四角四面に捕らえんな」
 「……うん」
 「で、医者だけどよ」
 「あ……うん」
 今度はつくしもむやみやたらに抗うことをせずに、司の言葉を待った。
 「本当はすぐにでも病院に連れてゆくなり、屋敷に医者を呼びつけたいところだけど」
 「……呼びつけるって」
 つくしがポカンと司を見上げる。
 それに構うことなく、腕時計を確認して、司はソファを立ち上がった。
 「明日は明後日のパーティのことで、打ち合わせだなんだと時間ねぇし、医者を呼びつけようにも普通の医者ってわけにもいかねぇんだわ」
 「普通の医者ってわけにもいかない?」
 不審げな彼女の問いに、答えるべきか数秒迷って、そのままスルーすることを選ぶ。
 「カードを全部、伯父貴に曝け出すマネも避けたいところだし……とりあえず、こんな時間帯だが、中心地の方へ行けばどこかしら空いてるドラッグストア※なり、コンビニの一つもあるだろうしな」




*****




 『先に寝てろ』
 と言われせっかく起きて待っていたのに、司は帰宅してそのまま買い物に出かけてしまった。
 いつもなら使用人を呼び寄せ、必要なものを用意させる生活を送っているというのに、わざわざ車を出させてまでの買い物に内心首を傾げていた。
 …何を買いに行ったんだろう?それにしても、お医者さんかぁ。
 一ヶ月も世話になっている屋敷の住人たちですら言葉の通じない人間が大半なのだ。
 あるいは日本語に堪能な医師や、通訳的な人間がつくのかもしれなかったが、それにしても日本人ではない医者と対峙するのは正直億劫だ。
 司には具合が悪かったならちゃんと言えと叱られてしまったが、しかし腹痛や出血があることは知られていたのだし、どこが悪いのかといえば流産と打撲の影響でとしか言えず、そうした体調の悪さよりも精神的なダメージの方が大きく、正直自分自身でさえ自分の状態がよくわからなかったのだ。
 今思えばあの頃も、といった感じでしかない。
 たぶん、そう心の中で呟いて、ベッドに横向きに横たわった胃の辺りをそっと撫でる。
 ズキズキとした痛みだったり、激痛であれば自分でも気になっただろうがと、どうしてもため息が出てしまう。
 …単なる胃炎とかそういうのだと思うけどな。
 記憶にはない。
 しかし、なんとなくそんな気がするのは、過去の記憶の欠片がそう訴えているのか。
 「……記憶の欠片だなんて、ご大層すぎ?」
 そんなことをウツラウツラと考えているうちに、それでもいつの間にか寝入ってしまっていたらしい。
 ガチャッ、キィ~、バタン。
 ガチャッ。
 というドアの開閉音に、ハッと目を開き、その音がする方へと体を起こした。
 「なんだよ、まだ寝てなかったのかよ?」
 「………司」
 いつの間に帰宅していたのか、シャワーを浴びてきたのだろう。
 バスローブ姿の司が、ガシガシとバスタオルで髪を拭きながら、ドアの真横に設置されたキャビネットに何か、細い棒のような物を置こうとしているところだった。
 「そうか、でもまあ、起きてたならちょうどいいかもな」
 今置こうとしたいた物を手にとり、ベッドへと歩み寄ってきた。
 そして、
 「これ」
 「これ?」
 見慣れぬ細長い四角い箱を差し出され、条件反射的に受け取ってしまう。
 「妊娠検査薬。……本当は生理開始予定日の1週間後以降※2に使うようなこと書いてあるみたいだけど、お前の場合は流産して、いつその生理が始まるかなんてわかんねぇし、パーティが終わってからまたあらためて医者に行くつもりだから、とりあえずの目安で構わねぇだろ?」




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※アメリカ・ニューヨークでは2017年現在、24時間営業のスーパーがかなり多く、ドラッグストアもあるようです。そのため、かえってコンビニが少ないようですが、20年前(過去編)当時はむしろ治安面及び他の理由から、あまりもしくはほとんど深夜営業店はなかった模様。が、まったくないってこともないだろうってことで。

※2 妊娠検査薬はおよそ30年前にも存在していたようで、現在は「生理開始予定日の5日前」や「生理開始予定日」から使用することができる早期妊娠検査薬もあるようですが、20年前はなかったような^^;??そこらへん詰めてないので、とりあえず、司が購入してきたのは普通の「生理開始予定日の1週間後以降」仕様の検査薬ってことで。
もちろん、この時期のつくしが使ってもまったく正確に測ったりなどできませんが、本人が言っているように目安&英語が読めない話せない司が、他者に頼らずに説明書きを読んだ結果、さらに不正確な知識となったってことで。
ちなみに妊娠検査薬の存在を知っているのは、前回のつくしの妊娠の折にメイドから知識を仕入れています。

※※原作連載当時も連載終了まで、漫画内時間は1年弱だったのにも関わらずかなりの時代変遷がありました。ポケベル→ガラケー携帯電話の登場など。そうしたことと同様、このお話にも漫画内時間とのズレが生じています。この章及び、罪・罰は、それぞれ連載開始当時の10年前設定(9章・11章では連載開始~10年。過去編+20年)。どこを現時点にするかに迷い、とりあえず、過去編ではガラケー携帯及びインターネットはあり。しかし、スマートフォンは未登場。妊娠検査薬はあり。ピル等の避妊薬はまだ一般的ではない。携帯付属のGPSもあるかもしれませんが、一般的なものではなく発信機等。イモビライザー(車のロック)も未登場という設定としています。
私もかなり混乱している部分があり、気がついたところは修正しておりますが、そのような設定であるとご了承くださいm_ _m
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