FC2ブログ

「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う②

愛してる、そばにいて0927

 ←愛してる、そばにいて0926 →愛してる、そばにいて0928
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「体調不良?」
 そのことを指摘してきたのは、当の本人であるつくしではなく、彼女につけている道明寺本家側の女SPだった。
 もちろん彼への報告は、同時にSPの直属の雇い主である母や父にも筒抜けなのはわかってはいたが、当たらず障らずなだけで虎視眈々と彼の弱味を探り、某かの機会を狙っている伯父側のSPたちとは違う態度と立ち位置を本家側の人間の配下たちはとっていた。
 それが一つには総本家の次期総帥である司への憚りでもあっただろうけれど、それが両親の彼への返答……そうせざるえない苦渋の判断によるものであることを司も察していた。
 …これで伯父貴んとこじゃなく、まだ俺らがヤツらの手の内にいたならまた違ったんだろうけどな。
 いまは彼の手にすべては握られている。
 彼のこれからとるだろう言動が、司自身の進退、そして、両親の進退………さらには、道明寺ホールディングスの屋台骨を揺るがす事態にまで発展するかもしれないのだ。
 詰まった気がして息苦しいネクタイを緩めて、襟元を寛がせる。
 時計をみればすでに深夜を回っていた。
 ここのところこんな生活が続いている。
 伯父にしてみれば、彼が手の内にいる―――いるように見えるうちに、彼という駒を最大限に生かしたいのだろうが、同時に彼にとっても同様で、そうであればどうしても動き回る必要があったから、ニューヨークに来たばかりの一頃のようにつくしのそばにべったりと張り付いているようなことはできなくなっていた。
 そして、おそらく、この先、たとえ首尾よく彼女と一緒になることができたとしても、―――いや、一緒になった後も、今よりももっと時間に追われる生活になることは目に見えている。

 ホンの数ヶ月前、彼女と出会う前には思いも寄らなかったことだったが、しかし、今の司は、自分が真実彼女を手に入れる、彼女の人生と自分の人生を重ね合わせる為には、以前のままの怠惰な自分のままではけっして叶えられないだろうことを自覚していた。
 欲しいものがあるのなら、手に入れなければならない。
 そして、手に入れるためには、計画し、行動し、そして、必ず成功を収めなければならないのだ。
 …いつまでも、ガキのまんまじゃいられねぇ。
 「司様?」
 「…いや。俺が牧野に直接話して、病院に連れてゆくから、お前たちからは特に何も言うな」
 「かしこまりました」
 手のひと振りで、いつものように今現在の彼の私室の前で、付き従っていた一同を下がらせる。
 とはいえ、邸内でも本家側の人間が彼らを警備するようになってより、伯父の手の者たちも付近の部屋に詰めていたから、ほぼ監視詰め…室内以外の状況はまったく外と変わりはなかったが。
 疲労に凝り固まった肩や首を軽く回し、気を取り直して、拳をノックのカタチに変えドアを軽く叩く。
 トントン、ガチャ。
 中からの応えを待ちきれずに、ほとんど間を置かずにドアを開けてしまっているから、室内の人間にしてみれば、ノックをしようとしまいとあまり代わりはしなかっただろう。 けれど、
 「おかえりなさい」
 帰りの車の中で、つくしには携帯で帰宅の連絡を入れていたから、すでに屋敷に入った時には彼の到着は彼女にもわかっていたことだ。
 だから、つくしは彼の登場にも驚くことなく、ノックの音と共に立ち上がって、小さな笑みを浮かべ、彼を迎え入れてくれる。
 …この顔が見たかった。
 どこかまだ気後れしたような、複雑なものを含んだものだったけれど、それでも彼に…司にだけ向けられたつくしの笑顔。
 「ただいま」
 歩み寄ってきた彼女の体に両腕を回して、そっと柔らかく彼女の華奢な体を抱きしめ、髪にそっと口づけを落とす。
 「………こんな時間まで起きて待ってなくていいって言っておいただろ?」
 「ん…そうだけど、どうせあたしは昼間寝てばかりだったし」
 「でも、具合悪くしてたんだろ?」
 「平気」
 彼女の体からそっと体を離し、まだまだ痩せている背中に優しく手を沿え、先ほどまで彼女が座っていただろうソファへと導く。
 けれど、つくしは何事か思いついたように両手を小さくパチリと合わせて、
 「あ、そうだ。司、お茶でも、飲む?食事は済ませて来たのよね?それなら、お風呂の方がいいのかな?」
司を見上げ、小首を傾げた。
 思わずマジマジと彼女の顔を見下ろし、ついでぷっと司が噴き出す。
 「な、なに?」
 そんな彼の反応にキョトンとしているつくしの鼻をチョンとつついてからかう。
 「メシか風呂か、なんて、なんか新婚みたいだな。……の、わりには、‘それともあたし?’ってセリフがねぇみたいだけど」
 「なっ」
 つくしの顔がかあぁっと赤く染まった。
 「はははは、すげぇ茹で蛸みてぇ」
 「もうっ!」
 「痛ってぇっ!」
 バシリと腕を叩かれ、司が大げさに悲鳴を上げた。
 「え?だ、大丈夫!?そんなに痛くしたつもりなかったんだけど…」
 可愛くて、愛しくて……。
 「ごめんなさい」
 シュンと下を向いてしまったつくしの頭を撫で、柔らかく微笑む。
 「それくらいのことで、怒ったりしねぇし、そんなことで一々、すまながるなよ」
 「……………」
 「以前のお前は、俺に飛び蹴りかますほど凶暴な女だったんだぜ?」
 「え?あ、あたしが?」
 さすがに驚いたらしい。
 半信半疑なつくしに、大きく頷き肯定してやる。
 「ああ、マジだ。…まあ、いろいろあって、記憶を失くすちょっと前のあたりは、ずいぶん元気をなくしちまって、おとなしかったけどな」
 「そう……なんだ」
 彼女の元気を奪ってしまったのは司だ。
 明るく屈託のない少女を、まるで生まれながらにして明るい日差しの下では花を咲かさないというある種の多肉植物のような女へと変えてしまった。
 おそらく彼の声音の苦々しい響きに気がついたのだろうつくしが、怪訝に彼の顔を見上げるのに小さく笑って、まだ立ったままの彼女をソファへと腰掛けさせる。
 「そんなことより、やっぱちょっと顔色悪いな?今もまだ具合悪いのか?」
 「ん…そんなことないよ」
 「あんま無理すんな。………ホントは、あんまりお前に無理させたないけど、イヤでも明後日の俺の誕生パーティにはお前にも出てもらわなきゃなんねぇんだし、少しでも体調整えとけよ?」
 「……うん」
 つくしの晴れない表情に、彼女の本当の気持ちが透けて見える気がする。
 けれど、それをあえて見て見ないふりで、隣に座る彼女の長い真っ直ぐな黒髪を梳く。
 司はこの感触が好きだった。
 彼女の滑らかな黒髪。
 彼女への自分の気持ちを自覚できなかった頃、いつも心密かに触れたいと思っていた。
 それなのに、そんな自分の気持ちに気がつかず、気がついた時には――。
 …っ。
 司の顔がよほど心配げだったのか、つくしがどこか困惑したような顔で、首を傾げた。
 「本当に大丈夫。ただ、ちょっとね。胃の辺りがムカムカするっていうか、もしかしたら貧血気味なのかな?なんとなく……鬱々としてるってだけだから」




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0926】へ
  • 【愛してる、そばにいて0928】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0926】へ
  • 【愛してる、そばにいて0928】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク