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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う②

愛してる、そばにいて0924

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 …はぁ、…はぁ、…はぁ、…はぁ。
 『お前の方が俺の背中に触れたんだよっ』
 男の怒声が聞こえる。
 昏く陰惨な声。
 自分に向けられたものではなのに、それがひどく恐ろしい。
 『こんな奴、ひとり死んでも世の中変わんねぇよ。おもしろいだろ?俺ら……は、ゲームの提供者だからな。笑えよ、ほら、笑え』
 恐怖に引き攣った笑い声が聞こえて、笑い声が悲鳴に変わった。
 たくさんの人たちが逃げ惑い騒然とする音や声、物がぶつかって壊れる音、そして怒号。
 音、音、音。
 彼女はその音のどれもが怖かった。
 …逃げなきゃ。
 今度は自分の声だ。
 暗闇の向こうに、底冷えする残忍さを含んだ目が浮かび上がって、『ひっ』と姿なき意識だけの彼女が悲鳴を上げる。
 ―――やだっ、こいつおかしいっ。この目、正気じゃないわっ。
 …怖い、怖い、怖いっ。
 ダアァ―――ッン。
 『よくも俺をコケにしてくれたな、この淫売が。お前をメチャクチャにしてやる』
 いつかも耳元で聞こえた声。
 ガッシャ―――ッン!
 …あぁ……ああ。
 喰われてしまう。
 あの声の主に追いつかれてしまったら―――。
 『誰かっ、助けて―――ッ!』
 …助けて、花…沢……類。
 あの時みたいに助けてよ。




*****




 総帥には及ばぬとはいえ、伯父もまた道明寺家の一族だ。
 司を匿う力があるのと同様、雑誌社各社に渡る道明寺家の監視の目を誤魔化すこともできた。
 もっとも、知られてしまえば、差し止められてしまうのを抑えるのは困難だったから、時期や規模については考慮に考慮を重ねた。
 公に現在、令嬢が彼と婚約中となっている大河原財閥との兼ね合いもある。
 …メンツはあるが、オヤジたちも俺の性格はわかってる。
 下手に刺激してどんな手に出るか、表向きはともかくとして、内心では戦々恐々としていることだろう。
 ましてや、もうすでに彼らも司がつくしになした暴挙を知ったに違いない。
 ―――長男の後輩少女に対する強姦、拉致監禁。
 実際には監禁していたわけではなく、どちらかといえば軟禁といった方いいだろうが、つくしにとってはどちらも似たようなものだっただろう。
 彼女が司によって拘束されていたのは、精神だったのだから。
 司にも自覚があった。
 これまで見ようとしてこなかっただけで。
 どんな物も、女も…人間も、彼がそうと望んで手に入らないものなど、これまでの彼の人生で何一つなかったから。
 もみ消すにも限度がある。
 誰の口を塞ぐにしても、加害者の自身の口を塞ぐことはできない。
 ましてや、当事者の司とつくしが、彼らの政敵である伯父の庇護下にいるという事実。
 もちろん、司も伯父につくしとの経緯を話してなどいなかったが、もし伯父がそれを知ったなら―――。
 …さすがのオヤジたちにしても失脚ものの話だよな。
 ただの身分違いの恋、子供の駆け落ち騒ぎなどとは次元が違う。
 どんな言い逃れを用意しようと、司はいまだ未成年で、司の両親には彼の監督責任があるのだ。
 それは経済界人としての立場とはまったく違うものではあったが、倫理的道義的ものを無視することは、たとえ彼らとしてもし得ない。
 司にとっても、伯父を引き入れたことは賭けでもあり、背水の陣でもあるのだが。
 膝の上に広げて眺めている雑誌のタイトルが、まったく違うものになることだけは確実だった。
 おそらく今頃、てんやわんやの騒ぎで大河原家に対する謝罪に回っていることだろう。 しかし、
 …伯父貴のヤツ、やっぱ素直に俺と牧野を結婚させるつもりなんかねぇな。
 彼のつくしへの態度からもわかる。
 多少はつくしを自らの養女へという心づもりもまったくないわけではないだろうが、問題は彼女の精神の不安定さだ。
 道明寺家の後継者である司が自分の手の内にあることをアピールしたい伯父の意図はわかるし、見世物よろしく財界人の社交場へと引きずり回されるのは想定内だったが、つくしを同伴させていないパーティに出向くたびに、伯父が引き合わせてくる女たちの媚を含んだ顔を思い出して、司は顔を顰めた。
 つくしを彼の好みのタイプだとでも思ったのか、黒髪、小柄の女ばかりをあてがってくる伯父の勘ぐりがちゃんちゃら可笑しい。
 …ま、あながち間違ってるとは言わねぇが。

 しかし、つくしであれば意味のある特徴というだけで、彼女が彼女であるだけで意味が有る存在であることと真逆に、どんなに特徴の似ている女を連れてこられようと、彼には意味をなさないのだ。
 勝負は十日後。
 彼の誕生日―――18才となるその日に。
 司は親指の爪を噛む。
 「……ん」
 小さな呻き声に、司は沈み込んでいた物思いから覚めた。
 「ふぅ」
 小さく息を吐き出し、気を取り直して、横で眠っているつくしを振り返る。
 彼女をまた再び抱くようになって、すでに一週間。
 ほとんど毎日の頻度で性交渉を持っていた。
 彼女がいまだ彼という存在に戸惑い、そうして抱かれることに内心では忌避感を持っていることもわかっていた。
 けれど…と思う。
 一週間前、彼女は自分の元から逃げ出した。
 そうだ。
 何をどう誤魔化そうと彼にもわかっている。
 大切にしているつもりだった。
 以前のように、彼女の心を無視して、再び壊してしまうようなことがないようにと。  …逃すわけにはいかねぇ。
 何があっても失えない。
 また同じ過ちに踏み出しかけている現実から司は目を背けていた。
 それでも、以前とは違うこともある。
 …類がいない。
 ここには、彼女が頼れるべき他の人間がいない。
 彼を愛せていなくても、彼女が依存できる人間は彼だけなのだ。
 「はぁ……はぁ………ん…………はぁ……ぁ……ぁあっ、はぁはぁっ」
 苦しげな荒い息遣いに、どうやら彼女が悪夢を見て魘されているらしいことに司も気がついた。
 かすかに逡巡して、けれどあまりに辛そうなつくしの様子に、彼女へと手を伸ばす。
 「お…」
 「……かっ、…けて。助け……て、花…沢……類」
 …類っ!?




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