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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う②

愛してる、そばにいて0923

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 胎内を滑り落ちる感触に、それがなんなのか、つくしにはわかった。
 それなのに、頭の中は半分パニックで、なぜ、と、どうしてが渦巻いて、ブルブルと体が震えてしまう。
 「牧野っ、大丈夫か!?」
 ただならぬ彼女の様子に、司が蹲る彼女の傍らに腰を下ろし、彼女を抱き起こす。
 「…どうして」
 「は?」
 「避妊っ!」
 「……………」
 つくしの口から溢れ出した単語に、司が口を噤む。
 「どうしてっ、どうして避妊っ…して、くれなかったのっ!?」
 胎内から流れ出したもの―――つくしはそれに心当たりがあった。
 記憶にないはずなのに、なんであるのかわかったのだ。
 司が彼女の胎内に残した、彼の残滓。
 かつて彼女の子宮に根付き、やがて失われてしまった命の源。
 さっきまで心配げな顔で彼女を気遣ってくれていた司の顔が、一瞬奇妙に歪んで…しかし、それはつくしの見間違いだったのか、まるで表情の見えない、冷たい無表情が彼の感情を覆い隠した。
 「……ああ」
 「なんで!?」
 「ガキが欲しいからだ」
 「なっ」
 平然と吐き出された言葉につくしが絶句する。
 虚のような昏い司の目に、驚愕している自分の顔が映っていた。
 つくしの頬をなぞる手はこれまでと同様に柔らかく、優しいままなのに。
 「医者も言ってたろ?セックスしてもいい、妊娠しても大丈夫だって、言ってただろ?」
 「でも、結婚もしてないのに、赤ちゃんだなんて」
 至極真っ当な反論。
 彼女は憶えてないかったが、以前の彼女もそう司に訴え、避妊の必要性を強く願ったのだ。
 それなのに、
 「するさ」
 「…っ」
 「お前と結婚する。俺は後半月もすれば18になる。日本でも結婚できるっちゃできる年齢だが、あっちじゃハタチになるまで未成年者には親の同意がいる。しかも、日本じゃ道明寺の権力は絶対だ。どんな横槍が入るかわかりゃしねぇしな」
 司の口の端に浮かんだどこか酷薄な笑みには、自身の血統の持つ強大な権力に対する自負と、その権力に真っ向から立ち向かおうとしている皮肉が含まれていた。
 「けど、アメリカなら事情が違う。男女共に18才になれば、大抵のことには成人と見なされて、当然結婚も親の同意はいらねぇし、法律に則って届け出たもんをたとえオヤジやババアどもが暗躍して道明寺の権力を使ったにしても後の祭り、どうしようもねぇ」

 司は強行突破しようとしている。
 それは同時に、彼の両親が彼女のことをけっして認めてはいないということなのだ。
 「……でも、あたしは」
 「お前はまだ18じゃねぇけど、日本でも女は16才になれば結婚できる。こっちじゃ、14才から※親の同意があれば結婚できっし、お前の親は反対しねぇよ」
 「………………」
 つくしの親は反対しない。
 それは、以前彼女が疑った両親への疑惑を後押ししているようにも思えた。
 …でも、あたしは妊娠したくない。
 結婚などしたくなかった。
 先ほど言いかけて、司の言葉に遮られてしまった言葉をそっと胸で一人ごちる。
 自分が誰なのかさえ思い出せていない。
 この目の前の男を愛していたことさえ憶えていないのにどうして結婚できようか。
 それ以上に、
 …あたしは、この人を愛していない。
 「それより足、どうしたよ?」
 もう話は終わったと見てとったのか、司が彼女の頬にあてていた手を離し、床に横座りに投げ出したままの彼女の足首へとそっと触れる。
 「骨が折れてたり、特に腫れてる感じもしねぇけど、少し熱持ってるか。怪我してたのかよ?」
 「あぁ、ちょっとだけ」
 無法者の男たちの手から救い出されて以来、司に抱いて運ばれていたので、彼はつくしの怪我に気がついていなかったのだろう。
 彼女のことに関しては心配症すぎるくらいに心配をする司だったから、もし怪我をしていることが知られていたら、もっと前にあれこれ気遣って治療だなんだと騒ぎ立てていたに違いなかった。
 「でも、大丈……きゃっ」
 いきなり横抱きに抱え上げられてしまう。
 まるでつくしの体重など感じてもいないかのように、彼はいつも彼女を軽々と抱き上げた。 
 頼もしい腕。
 広い胸や肩。
 彼女を大切だと、大事にしてくれる人。
 なのに、どうして、自分は―――そして、司は。
 …言ってみれば。
 今の自分はまだ彼を愛せていない。
 ―――愛せるかもわからない。
 …でも、言ってどうするの?
 まだ彼の腕にわずかに染み付いているようにも思える、先ほど香った別の人間の…女の香水の匂いが、また再び彼女の鼻先に香った気がした。
 もし、彼に見捨てられてしまったら…。
 そうしたら、
 …もしかしたら、日本に帰れる?
 たとえ誰一人彼女を気遣ってくれる人も、想ってくれる人もいないのだとしても、それでも。
 保身の為に愛してもいない男に抱かれて、愛していない男の子供をまた再び宿してしまうよりもずっといい。
 …また?
 自分の不可思議な想いに虚をつかれながらも、つくしは口を開いた。
 「あ、あのっ」 
 「……もうどこにも行くなよ?」 
 いつの間にか、彼女を観察するように彼女の顔をジッと見ていた司が、ボソリと呟いた。
 「え?」
 「SPを連れてなら気晴らしに出かけるくらいかまわねぇ。…けど、俺に無断で勝手にどこかに行くな。ニューヨークは女が何の予備知識もなく一人でフラフラしても大丈夫なほど安全な街じゃねぇんだ」
 「……あ」
 あっというまに終わってしまった逃避行。
 もし、司が来てくれなかったらと思うと震えが止まらなくなってしまう。
 もしかしたら、奪われたネックレスどころか、男達に輪姦され、……悪くすれば殺されていたかもしれないのだ。
 「ここにはお前を知っている人間は誰一人としていない。俺以外、お前を大事に想って心配してやる人間はいないんだ」
 胎内に注ぎ込まれた司の残滓がドロリと彼女の胎内から溢れ出し、彼女の足を伝い、ポタポタと滑る落ちる感触がした。 




*****




 つくしの怪我はやはり単なる捻挫だった。
 空港でブツかられてつまづいた時の怪我だったが、強盗犯への司の怒りと彼女への心配をなお一層かきたててしまったらしく、屋敷外に出る時にだけつけるはずのSPたちを、部屋から出る時には常に同伴させるくらいの徹底のしようだった。
 もっとも、また再びつくしの生活は、司の部屋で始まり終わるという閉塞的なものに戻っていたから、それで特に不自由とうことはなかったのだが。
 それでも、司の自分への執着をまざまざと知らされているようで、正直息苦しさも感じていた。
 「ふ…ん、……やっぱいくら財閥唯一の後継者つーたって、事業にはまだまったく関わってねぇ未成年だし、ハッキリと財閥を継ぐことも公然としていなかったからな。大した扱いにはなってねぇな」
 ソファの上で膝を抱えてドラマを見ているつくしの横に、雑誌を手に持った司がドサッと座る。
 特に興味があったわけではなかったが、わずかに傾いたソファの揺れに、なんとなく司へと視線を向ける。
 そんな彼女の視線に気がついた司が、彼女へと雑誌を差し出し紙面の写真をピンと跳ねた。
 「ほら、これ、今、日本でも販売されてる雑誌」
 「……え?」
 「俺とお前の記事が掲載されてる」
 ―――道明寺財閥御曹司、純愛を貫きNYへの逃避行。シンデレラガールは、高校の後輩。大河原財閥との提携は暗礁か?




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※執筆当時、2017年に結婚可能年齢を18才に引き上げられていますが、過去編ってことで14才設定のまま。が、もはやこの過去がどの地点での‘過去’なのか、書いている私にも定かではないため、もしかしたら、原作連載当時の法律とは異なる可能性もありますこと、ご了承くださいm_ _m


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