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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う②

愛してる、そばにいて0920

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 …あの人の手、ちょっとだけ震えていたな。
 そんなことを思い出す。
 彼女を抱き上げた司の腕は、彼の表情同様、本当につくしを心配していたことがあらわにしていた。 
 司はまるで彼女を真綿に包むようにして、大切にしてくれている。
 それがわかる。
 わかるのに…。
 …どうして、あたしはあの人のことが好きになれないんだろう。
 たとえ思い出すことができないにしても、以前は愛していた人なのだ、もう一度好きになれるはずなのに、それなのに。
 ベッドに横たわって、なんとはなしに窓の外の月を眺めた。
 ニューヨークの空はどこかいつも薄曇っていて、星が見えない。
 東京の空もそんな感じだが、それでも彼女の生まれ育ったところではそうでもないような気が何故かしていた。
 …あたしが住んでたところは、東京は東京でも端っこだったりしたのかな。
 どうせ考えても思い出せるわけでもないのに、そんなどうでもいいことを考えるとも考えてしまうのは、つくしが眠れないからだった。
 屋敷に戻ったのは、昼を少し過ぎたくらいの時間帯だったが、さすがに朝からいろいろありすぎて疲れていたのだろう。
 ―――全部、自分のせいではあったけれど。
 護衛だというSPの女性を紹介されたが、さすがに屋敷の部屋でまで護衛をされるわけではないらしい。
 屋敷に戻ってみれば、いつもと変わらない生活があるだけだ。
 司と遅いランチを摂って、彼はパーティにいかなければならないということで、一人つくしは昼寝をしていた。
 しかし、それがいけなかったのだろう。
 何かの拍子に目が覚めてしまったのが、もう夕刻もかなり過ぎた頃。
 司はどのみち、夜遅くなってしまって屋敷では夕食を食べないから、一人寂しく部屋で夕食を食べて、少しだけDVDを見て夜の時間を過ごした。
 けれど、それほど夢中になって観る気にもなれずに、結局クライマックスまで観ることなくベッドに入った。
 しかし、やはり昼寝の影響だろう、眠れなくなってしまったのだ。
 疲れて怠いのに、眠れないなんて。
 かえって辛い。
 元々自堕落な生活を送っているせいか、あまり眠りが深くなく、彼女は不眠気味だった。
 夢ばかり見て、次の日になっても疲れを持ち越すことも少なくない。
 目覚めるとどんな夢を見ていたのか憶えていないのに、悪夢だったことだけはわかる。
 「~ハァ、もう一度DVDでも見たほうがいいのかな」
 英語のテレビを見る気にはとてもなれなくて、暇潰しにかけていただけのもの。
 どうしたものかと悩んですでに小一時間ほどか。
 …あの人、遅いな。
 もちろんパーティが終わったからといって、司が直帰しなければならない理由などない。
 けれど、司がいないとここでは、つくしには他に話し相手は誰もいなかったし、彼女から話しかける気持ちにもなれなかった。
 何もかもが億劫だった。
 過去の記憶を探ることさえ。
 たぶん…寂しい、そう感じているのだろうとは思うのにその感情すら、いつもどこか遠かった。
 パタン。
 どこかで遠くで小さくドアが開閉する音が聞こえた気がして、つくしは耳を澄ませる。
 ついで、キィ~、というドアが軋んで開く音に、つくしはハッと部屋の入口を振り返った。
 「あ……」
 「牧野、……起きてたのか」 
 司だ。
 なんだかんだと言いながら、いつの間にかウトウトとしていたのだろう。
 彼が戻って来ていたことに、つくしは気がついていなかった。
 それでも今戻ってきたばかりなのか、司はまだタキシード姿で、無造作に襟首に指先を入れ、ネクタイと一緒に首元を寛げながら歩み寄ってくる。
 「顔色は悪くねぇけど、どっか具合悪いのか?ずいぶん寝るの早くね?」
 心配げな顔に小さく首を横に振る。
 けれど、それだけでは通じないことに気が付いて、つくしは重い口を開く。
 「……ちょっと、疲れたから」
 「ああ。まあ、それは…そうだろうな」
 彼女が疲れた理由に思い当たったのか、司の目が一瞬昏く陰って、真剣な…どこか思いつめたようなその表情に、つくしの胸がドキリと波立つ。
 「で?寝ねぇの?」
 「その……、ちょっと眠れなくて」
 「ふぅん?」
 ギシッと音を立て司がベッドの端に腰を落として、つくしの頬へと手を伸ばす。
 が、すぐに首筋の傷に目が行って、癇性に眉根を寄せる。
 頬に触れていた指先が滑って、首筋の傷にソッと触れて、その感触に、つくしはゾクリと体を震わせた。
 「痛いのか?」
 司から傷跡を隠すようにして首に手をあて、つくしは首を竦めて、今度はブンブンッと首を横に振る。
 「へ、平気。……大した傷じゃなかったから」
 司が彼女の肩を撫で、背を撫で、……キツく抱き竦められてしまう。
 彼にそんな風に抱きしめられるのは初めてはないのに、なぜか身震いするほどに怖いのはなぜなのだろう。
 彼女に良からぬことを企んで、彼女を引き倒したあの昼間の男たちとは違うはずなのに、彼らと同じくらいに、いやそれ以上に今、つくしは司が恐ろしかった。
 「……クソッ。あいつら、お前に傷なんか付けやがって。どうせ叩けばいくらでもホコリが出る奴らなんだ。絶対にただじゃおかねぇっ」
 大切にされている。
 今彼女を抱きしめて髪を撫でてくれている男は、たしかに自分を愛して守ろうとしてくれている人なのだ。
 しかし、そんな想いの裏側で、常に彼女の旨をざわめかせる焦燥感と嫌悪。
 両極端の振り子に揺すぶられる二律背反に惑ってしまう。
 …どうしてなの?
 たとえ記憶を失ってしまったのだとしても、どうして、自分は恋人である男性にこんなことを思ってしまうのか。
 居た堪れなさに顔を反らそうとして、鼻先を掠めた仄かな香りの違和感につくしは顔を顰めた。
 …この匂い?
 いつも彼から香る甘いコロンの匂いとはあきらかに違うその匂いは…?
 ふいにつくしの脳裏に、パーティ会場で彼にまとわりつこうと群がっていた美しい女性たちの姿が浮かび上がった。
 …もしかして?
 疑惑がカタチなる前に、ふいに司の吐く熱い吐息が頬に触れて、髪を撫でていた手が彼女の顎下にあてられ、そっと仰向けられてしまう。
 …え?
 「あ………ん………」
 落ちてきた唇が、彼女の唇を奪った。
 チュッ、チュッ、と軽いリップ音を立て、何度も軽く唇に触れては離れて、少しづつキスが深められてゆく。
 そのままベッドへと押し倒される。
 「あ、あのっ……ぁ……んん……」
 何かを言おうとするたびに、司の唇が彼女の唇に押し当てられ、薄く開いていた唇の間からヌメヌメとした舌先が侵入しては、怖じける彼女の舌先に触れ絡みつく。
 ビクッ。
 司の指先が、彼女の胸に触れた。
 



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