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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う②

愛してる、そばにいて0922

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 「フ―――ッ」
 「…ぁ」
 大きく息を吐いて、体の中から司が出てゆく気配に、つくしは小さく喘ぎを零した。
 「……大丈夫か?」
 優しい問いかけに、つくしは無言でコクコクと頷いた。
 司は始終ずっと優しかった。
 不安と戸惑いに中々快楽を捉えられない彼女のペースに合わせて、大切にしてくれたと思う。
 それなのに――。
 なぜか、涙が溢れた。
 溢れ出した涙が止まらない。
 そんな彼女を痛そうな顔で見ていた司が、気合一つで、自分と彼女の位置を入れ替え、彼女の体を自分の体の上へと乗せた。
 司の熱い体はまだドキドキと心臓が激しい鼓動を打っていて、まるでシャワーを浴びたように汗を噴き出させている。
 ぼんやりと彼の胸に伏せて、泣き咽ぶつくしの頬に手を置いて、仰向けさせた司が、唇を寄せて、目元や頬に流れ落ちる涙を優しく吸ってくれた。
 彼女を抱いている間中、ずっと彼が囁いてくれていた『愛している』を信じさせてくれる。
 「俺は、お前の恋人なんだ。お前を好きだ、愛してる。そして、お前も、……お前も俺を好きだったんだ。だから、お前を抱いた」
 どこか疚しげな呟きは、まるで彼女に言い聞かせるようで、もしかしたら彼なりの謝罪なのだろうか。
 まるで彼女へと言い聞かせるような彼の呟きに、つくしも逆らわずに小さく頷き返す。
 それでも、イヤだと言ったのに…という心の声はどうしても消せなかった。
 髪を撫でて梳いてくれる大きな手が疎ましいと思ってしまう自分がいる。
 …でも、あたしも同意した。
 つくしにもわかっていた。
 結局、司に見捨てられてしまったら、自分はこの先どうしたらいいのかという不安と引き換えに、自分は彼に抱かれることを承諾したのだと。
 保身の為に、……自分のカラダを売ったのだ。
 ブルリと体が震えた。
 「……牧野?」
 彼女の背中を撫で、半分眠ってしまいそうな感じに微睡んでいた司が不審げに問い返すのに、小さく首を横に振り、つくしは司の胸から体を起こす。
 長い黒髪が胸の大半を覆い隠してくれたけれど、それでも司の視線の先に自分の裸の胸がむき出しになっていることが恥ずかしくて、つくしは顔を赤らめ胸元を片腕で隠した。
 引き締まった筋肉質のしなやかな体が、つくしの眼前に横たわっている。
 「どうした?」
 起き上がろうとする気配に、慌てて視線を反らし、咄嗟に誤魔化す。
 「そ、その……も、うギブスして、ないんだなって」
 「ああ」
 「階段から転落したあたしを庇うために、肋骨が折れちゃったんだよ…ね?
 「…まあな」
 それで思い出した。
 この目の前の男は自分を庇って肋骨を骨折する大怪我をしたのだと。
 気が付けば、攫われるようにしてニューヨークに来ていた…つくしの認識ではそんな感じで、なぜか記憶を失い目覚めた直後から、NYのこの司の伯父の屋敷に身を寄せるまでの間のことも彼女の記憶は曖昧だった。
 少しづつ、‘まとも’な思考能力が戻るに連れ、その頃の記憶までも抜け落ちていっている気がするのだ。
 …たしか、両親にも会ったはずなのに。
 彼らがどんな人で、彼女にどんな言葉をかけてくれたのかすら憶えていない。
 ただ他人よりも遠く、彼女を自宅へと連れ帰らずに、司のもとへと残して行ったという事実が、彼女の中に痼りとして残っていた。
 …普通はこういう時って、いくら婚約者だからって、他人に任せっきりにしたりしないよね?
 挙句においそれと関わることさえできないだろう海外なまで連れ出されてしまっている。
 日々の生活の中で、思いつくままに司が説明してくれる彼女の両親像は、どこまでも‘庶民’で司のような富裕の家ではないらしいことはわかっていた。
 だからなのだろうか。
 自分たちが面倒を見るよりも、富豪の司の屋敷に預けておいたほうが治療も進んで、世話の手も多いから?…そう思う裏側で、‘お金持ち’という言葉の中に違う意味合いを勘ぐってしまう。
 まさか、自分の両親が、とも思うのに、それでも今の彼女には彼らの記憶が欠片ともないのだから、その浅ましい勘ぐりを否定する材料が何一つなかった。
 「大丈夫、なの?」
 「ああ」
 嬉しそうに笑う司の顔がなぜか真っ直ぐに見ることができなかった。
 それをどう勘違いしたのか、司の手がつくしの頭をクシャクシャっと撫でる。
 「あんま気にすんな。折れたつーても、運よくつーか、特に内臓に刺さったわけでもねぇし、けっこうポッキリ単純骨折しただけだから、痛みさえなければ自然治癒が基本で、普通特別に治療も必要ねぇようなもんだし」
 「でも、…凄い、痛いのよ…ね?」
 「ま、ヤッちまった当初は、痛くなかったとは言わねぇけど、俺にとっちゃこれくらいの怪我のうちに入んねぇよ」
 「そう」
 つくしにしてみれば、骨折したというだけでも一大事だ。
 それなのに肋骨などという凄いところを骨折したと言われてしまったら、とてもではないが怪我のうちに入らないとは言えなかったし、司が「折れた骨が内蔵に云々」と言った時にはギョッとした。
 しかも、その怪我は自分を庇ったせいだというのに、本当になんでもないことのように司は言うのだ。
 何とも言えない気持ちに、胸が詰まる。
 「それより、どうした?…便所?」
 司のデリカシーのない言葉に唇を尖らせる。
 しかし、ちょうどいいきっかけかもしれなかった。
 とてもでないが、彼女的には裸のまま男に抱かれて眠るなどとてもではないができそうにもなかったから。
 「えっと、お、お風呂に入って来ていいかな?」
 「風呂?」
 「………その汗、かいたし」
 「ああ。いろんなもんでけっこうベタベタしてっか」
 赤裸々なセリフに、恥ずかしくて仕方がない。
 言葉で言われてしまうよりも、もっと凄いことをしてしまったはずなのに、どうしても平然としていることがつくしにはできない。
 「俺も行ってやるか?」
 「え?」
 「風呂まで抱いていって、俺が洗ってやろうかって言ってんだよ」
 「ええっ!?」
 仰天して仰ぎ見た彼の顔は大真面目だ。
 とんでもないことに。
 「久しぶりだったから、けっこうカラダ、キツいんじゃねぇの?」
 「……………」
 …久しぶり。
 司の自分を気遣う言葉に感動するよりも、なぜかシンとした冷たいものが胸の内を滑り落ちるようなイヤな感覚を憶えた。
 もちろん、そうした関係だったのだから、司の言うことの何が変だったわけではないはずなのに。
 彼女の腰を抱き込んでいた腕が離され、ゴソゴソと本格的に体を起こしそうな司の気配に焦る。
 「い、いい、いいです。大丈夫」
 「遠慮すんなよ?」
 「う、ううん、ううんっ。ひ、一人で、は、入れるからっ!えっと……行ってくるね!!」
 下手に問答していると、本気で風呂までついて来られてしまいそうだ。
 急いで後退ってベッドを降りる。
 足を床につけたとたん、ズキリと走った痛みに顔を顰め、半ば滑り落ちるようにして、つくしはベッドの下にしゃがみ込んだ。
 「どうしたっ!?」
 「あ…なんでもないです」
 飛び起きた司を片手で制して、つくしは慌てて立ち上がる。
 しかし―――、
 「………あっ、ウソ」
下腹部を抑えて、つくしは再び床に蹲った。




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