「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う②

愛してる、そばにいて0919

 ←愛してる、そばにいて0918 →愛してる、そばにいて0920
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 シュッという風を切るような音とほとんど同時に、ガッ、という肉を打つ音が響く。
 ‘ぎゃっ!’
 ‘なっ!?’
 バギッ。
 ‘…ぐわぁっ’
 次々に苦鳴が上がって、つくしの上にのしかかっていた男たちの重みが退かされる。
 それでもすぐに目を開けることができなくて、ガチガチに固まったまま身動き一つすることができない。
 「牧野っ」
 かけられた声に、ソロリソロリと片目づつ開けてゆく。
 息を切らして、前屈みになった司が彼女の眼前に中腰で立っている。
 「あ………」
 汗まみれの心配そうな顔が、彼女を見下ろしていた。
 半ば失神しかけていたつくしの視界が少しづつ焦点を結んだ。 
 「ハァハァハァ…大丈夫か?」
 しゃがみこんだ司の手が優しく伸びてきて、未だ震えの止まらない彼女の頬をそっとなでて抱きしめてくれる。
 「すげぇ探したんだぜ?……マジ、間に合って良かった」
 「うっ……ぁ」
 嗚咽が溢れた。
 …ああ。
 怖かった。
 助かったのだ。
 そう思う心と二重写しのように、裏腹な感情がいつものようにジワジワと不快な熱を孕んで滲み出す。
 見つかってしまった。
 この男から逃げられなかったのだ、と。
 …でも、でも、この胸の中がこんなにも温かいから。
 だから。




*****



 「とりあえず、伯父貴んちに戻るぞ」
 つくしに否やを言えるはずもない。
 司に横抱きに抱き上げられ、車体の長いリムジンへと運び込まれる。
 背後では、見慣れたSPたちの他に、見覚えのない何人かの…やはり護衛だろうダークスーツの男たちがいて、司が殴って転がした男たちを取り押さえているのが、司の肩ごしに見えた。
 車の中にも何人かの人間がいて、その中に見慣れぬ女性の姿を見つけて、つくしは思わずその女性をジッと見てしまっていた。
 そんな彼女の視線に気がついたのだろう。
 小さく微笑みを浮かべて、女性は彼女へと軽く会釈した。
 「この女、今日からお前につくSP」
 「え?」
 「ミランダ・バークレーです。どうぞ、ミランダとお呼び下さい」
 流暢な日本語での挨拶がかけられる。
 「今までは、お前だけで外出するとかなかったから特につけたりしなかったけど、これからはそうもいかねぇだろ?」
 「……それって」
 「出かけたかったなら、あらかじめ言っておけよ?黙って抜け出したりなんかしたら心配するじゃねぇか」
 司の言葉は咎めるようではなかったが、むしろ咎められた方がずっと良かった。
 そうしたら、言うことができたのに。
 出てゆくつもりだったのだ、と。
 …帰りたい。
 でも、どこへ?
 それさえもわからないのに。
 「当家からも、あらためて女性の護衛をご用意いたします」
 見慣れた司付きのSPが苦虫を潰したような顔で口を挟んだ。
 「ああ、頼むぜ」
 皮肉に笑んで答える司の顔を怪訝につくしは見上げた。
 そんな彼女の視線に気がついてたのか、司が説明してくれる。
 「バークレーは、伯父貴んとこのヤツじゃなくって、俺のウチから派遣させたSPなんだよ。他にも、お前が見覚えのない連中もそう」
 「……あなたのおウチ?」
 「ああ。お前もいつまでも屋敷に閉じ篭ってもいらんなかったみたいだし、……いろいろな兼ね合いって奴だな。伯父貴もたいがい狸だが、ウチのババア…お袋も大した狐だからな。狸の屋敷にどっぷり身を任せてんのもアレだし、どうせなら狐にも兵隊出張させて、狐と狸の化かし合いってやつで互いに牽制してもらおうって算段だ」
 司のセリフには、その狐の兵隊も、狸の兵隊も思うところがあったのだろう、あからさまではなかったけれど、双方の顔に微妙な表情が浮かぶ。
 果たして自身の算段とやらをあっさりと暴露してしまった司にはどんな意図があったのか。
 ただこれだけはわかる。
 司は彼女にも外出の自由を与えてくれると言っているのだ。
 ただし、護衛という名の監視付きでの自由。
 いや、もしかしたらそれこそ監視をつける為の方便なのかもしれない。
 唇を噛んで俯いてしまった彼女の顔を見ていた司の眉根が寄って、彼女へと司の手が伸ばされる。
 思わず仰け反ってしまいそうな衝動をなんとか堪え、内心ビクビクと司の指先の行方を目で追う。
 司が彼女の顎の下に指先を置いて、少しあげるようにすると彼女の首を確認するように覗き込んできた。
 「……これ、どうした?」
 「え?」 
 「首んとこ、傷になってる」
 言われて首筋を確認すると、どこか切れているところでもあるのか、皮膚の一部がチリリと痛む。
 …ネックレス。あ。
 そういえば、襲ってきた男たちがイヤに興味を持っていたことを思い出した。
 もしかしたら、千切り取られてしまったのかもしれない。
 「ちょっと血が滲んでるな。……もしかして、ネックレスを盗られたか?」
 「……ごめんなさい」
 素直に謝罪する。
 ネックレスは…というか、彼女が身につけているもの、持っているものすべて、もしかしたら自分自身さえ含めて、すべては司のものなのだ。
 縮こまるつくしの髪をポンポンと小さく叩き、司が小さく息を吐き出す。
 「いいさ、お前が無事なら。物なんかいくらでも買える。また買えば済む話だからな」
 「司様、屋敷へやってよろしいでしょうか?」
 話の切れ間を狙っていたのか、SPの一人が声をかけてくるのに頷いて、
 「あいつらは適当にマッポに引き渡しとけ。こいつの所持品持ってっかもしれねぇけど、ケチがついたもんなんかもういらねぇから、適当に誰かに処分させておいて?」
 「……かしこまりました」




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0918】へ
  • 【愛してる、そばにいて0920】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0918】へ
  • 【愛してる、そばにいて0920】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク