「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う②

愛してる、そばにいて0918

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 突き飛ばされた拍子に捻った足首をどうにかこうにか引きずって、アパートだろうか人通りのない軒先を借りて、階段を椅子がわりに腰を下ろす。 
 ぐぎゅるるるるるる。
 さっきから空腹を訴える腹の音がうるさい。
 それ以上に、
 「……喉が渇いた」
 所持金0では、二進も三進も行きそうにもなかった。
 かといって、誰かに助けを求めようにも、通りを歩く人々はつくしにとっては誰も彼もが異邦人で、言葉さえ通じないのだ。
 さっきまであった奇妙な高揚感もあっという間に霧散して、不安ばかりが残る。
 ポトリと手の甲に水滴が落ちてきた。
 とうとう雨まで降ってきたのか。
 これじゃあ、本当に泣きっ面に蜂だ。
 誰もいない。
 どこにも行くところがない。 
 誰一人として、自分を必要となどしてくれないのだと、気が付けばポトポトと落ちてきた水滴が手や服を濡らし出して、それが自分の目から流れ落ちた涙なのだと、やっとつくしも気が付ついた。
 「雨も振りそうだけどさ」
 …携帯電話も盗られちゃった。
 もはや司の下に戻ることさえ出来なくなってしまった。
 …あの人、心配してるかな。
 そんなことを思う。
 けれど、そうした思いとは裏腹にこれでいいんだという、自暴自棄にも似た不可思議な思考。
 それは司に対してどうしても拭いきれない不信感にも似ていた。
 「はぁ~、こんなところで、いつまでも座っててもしょうがないっか」
 アパートの住人だろうか、横を通り過ぎた老婆がジロジロと彼女を眺め、迷惑そうな顔で首を振っているのに出会って、重い腰を上げる。
 もしかしたら、こんなところで座り込んでいたりなんかしたら、不審人物だと思われて警察を呼ばれてしまうかもしれない。
 おそらく彼女にとっては、その方がいくらもマシだったに違いなかったが、今の彼女にはそれがいかにもありがたくないことのように思えた。
 パンパンとスカートの膝を叩いて、砂埃を払い落とす。
 「人目があんまりないところ」
 キョロキョロと周囲を見回して、少し歩いたところの細い路地の向こう側に、緑の公園らしきものが見えた気がする。
 「公園かな」
 公園ならベンチの一つもあるだろうし、水飲み場の一つもあるのではないだろうか?
 「……トイレも行きたくなっちゃうかもしれないし」
 今のところむしろ水分不足な方で、まだそんな必要性を感じてはなかったけれど。
 トコトコと何も考えずに細い路地に入り込んで、公園だと思ったところはどうやら未開発な一角だったようで、しかも途中に高い塀に反対側に出るのを遮られ、後戻りを余儀なくされてしまう。
 …あ、なんかやだな。
 先ほどは誰もいなかった道程に、背の高い若い男が立っている。
 まるで道を塞ぐようにして道の両側の建物の壁に寄りかかって、こちらをニヤニヤ笑いで見ているように見えた。
 それがどうにも感じが悪く感じられて、他に道はないかと探すが男たちの間を通らなければ戻ることすらできずに、気にしていない風を装い、足早に通り過ぎる。
 が、
 「やっ」
 いつの間に背後に回ってきたいたのか、ニヤニヤ笑いの男の一人に、手首を掴まれていた。
 「な、なんですかっ!?」
 ‘Hey,where are you off to?(※よう、どこに行くの?)’
 もう一人がまるで彼女の進路を塞ぐように反対側に回り込んでくる。
 剣呑な雰囲気に、つくしの体が小さく震えだす。 
 伸びてきた手が腕を掴まれていない方の肩をいきなり掴んできて、引き寄せられた。
 ギョッと体を捩って男たちの手から逃れようとするが、ガッチリ掴まれ、万力のような怪力に逆らうことができずに、男たちの手を振り払えない。
 「離してっ、何するのよっ!?」
 握り締められた手の力にゾッと怯えた。
 ‘このネックレス、ダイヤじゃね?’
 ‘それより指輪の方を見てみろよ。すげぇぞ!’
 ‘ゴクン、ま、まさか、本物っつーことはねぇよな?’
 つくしの抗議を無視して、男たちが彼女の手を自分たちの眼前に無理やりに掲げさせ、指輪を眺め出す。
 ‘まったくどこのお嬢だよ’
 ‘中国人か何かの観光客のガキだろ?こんなところ呑気に歩いてるなんて、頭がちょっと弱いんじゃねぇの?’
 ‘じゃ、俺たちがせっかくだから、いっちょNYに来た記念に楽しませてやっか’
 ‘いいねぇ。で、お駄賃にこの指輪やらネックレスをいただくってわけだ’
 顔を見合わせゲラゲラと笑い、男たちが浮かべた表情の残忍さが、淫蕩な雰囲気が、言葉はわからないというのに、つくしを心底震え上がらせた。
 人目につかないように、更に路地の奥へと引きずり込まれかけるのを踏ん張って、なんとか抵抗しようとするが、男たちの力の前にまるで歯が立たない。
 …どうしよ、怖い、誰かっ。
 思考が空転する。
 ―――どこかで誰か聞き覚えのある男の声が聞こえた気がした。
 カツコツと追いかけてくる足音が、やがて彼女をめちゃくちゃに壊してしまうのだ。
 『お前をメチャクチャにしてやる』
 …あれはっ。
 「いやああぁっ!だ、誰かっ、誰かっ、助けてっ!!キャ―――ッ、ヤ―――ッ」
 最大限の悲鳴が、つくしの喉を迸った。
 …助けて、助けて、助けてっ!
 「誰か助け…むごっむぐぐ……っ」
 叫ぶ彼女に閉口してか、男の大きな手が伸びてつくしの口と鼻を塞ぐ。
 …い、いやっ。く、苦しい。息ができないっ。
 死に物狂いで暴れてその手から逃れようとするが、戒められた両手を動かすこともできずになすがまま、男たちに引き倒されて、息を塞がれたまま押さえ込まれてしまう。
 目の前をチカチカと光が瞬いて、酸欠の脳が徐々に意識を遠のかせてゆく。
 生理的な涙が滲んで、いつの間にか閉じてしまっていた瞼の裏にいくつもの黒いシミが落ちて彼女の思考を黒く塗り潰してゆく。
 …もう目覚めたくない。
 もしもまた―――。
 「おいっ」




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