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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う①

愛してる、そばにいて0914

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 ブー、ブー、ブー。
 頭の上の枕がわりにしていたクッションの下、携帯電話のバイブの音に、司は顔を顰めた。
 それでも無視をして眠るには執拗な騒音に頭を一振り、朝の光の眩しさに目を細めて携帯電話の画面を目の前に掲げて、着信者の名前を確認する。
 ガバッ。
 「って、チッ」
 さすがに、勢いをつけて起き上がったことで、もうほとんど痛みを感じていなかった肋骨がわずかに軋んで、悲鳴を上げる。
 しかし、そんなものや切れてしまった電話はそれほど重要なものではなかった。
 時間前に自ら起きるつもりだった心づもりが、見事寝過ごしてしまったことが何よりも悔しい。
 以前の彼とは違う。
 …こんなことでどうする。
 電話で連絡が付かなかったからだろう、メールも入っていた。
 「フ―――ッ、よし!」
 司はメールの内容を一読して、大きく息を吐き出し、気合一つで気持ちを切り替える。
 たかが寝過ごしたことくらいで、一々落ち込んでもいられない。
 …いつまでもブッ弛んでらんねぇ。
 つくしを得て、彼女を守って生きてゆくつもりなら、怠惰で驕慢だった自分をブチ壊して作り直さなければならないのだ。
 いくらでもやらなければならないことがある。
 …伯父貴のヤツもいつまで信用できるもんだかわかりゃしねぇしな。
 最初から信用などできないと言い換えた方がよかったかもしれないが、とりあえず今は信じているしか仕方がない。
 とりあえず、保険もかけるつもりではあるが、その保険の一つがまた吉と出るか凶と出るものか。
 「ババアが寄越しやがったヤツを、見て来るとすっか」
 夜には、また伯父からの指示でパーティに出なければならない。
 先ほどの司の携帯に入った着信は、さすがに門前払いはされなかったようだが、司が楓へと依頼した数人のSPたちが応接の一つで足止めされているという連絡だった。
 汗ばんで落ちてくる前髪をかきあげ、寝ていたソファから立ち上がる。
 と、シャワーへと向かいかけて、そういえばつくしはどうしたのかと思い当たる。
 昨晩、どうにもつくしへの欲望を抑え切れる自身がなくて、シャワー室から出てきたばかりだったというのに、ひとしきり冷たい水を浴びてなんとか熱い身体を鎮めた。
 そのあともとても彼女が眠るベッドへと闖入するつもりにはとてもなれなくて、前室の居間のソファで眠ったのだ。
 寝室へ一度戻って、ノックをしかけて、まだ早い時間であることに思い留まった。
 彼に囚われる前、その後しばらくおかしくなってしまう前もつくしは規則正しい生活を送り、真面目に学校に通う少女だった。
 しかし、体調不良もあるのだろう。
 ここのところの彼女は、まだまだ生活のリズムが不規則だ。
 それでも、記憶を失う少し前のように、一晩中起きていたり、ただボンヤリしているようなことは減っていたが、まだ完全に完治してはいなかった。
 伯父に弱味を見せられないことから、カウンセラー的な人間にまだ診させてはいないが、いずれはしっかりとした精神科医なりカウンセラーにも診察させる必要があるだろうし、治療をさせるべきだろう。
 …元のお前に戻してやる。ちゃんと。
 自分の手で明るい太陽のような顔で笑う彼女に戻してやると、心あらたに誓ってそっとドアを開け、寝室のベッドを窺った。
 が―――、
 …まさか?

 昨日はたしかにこんもりと膨らんでいたはずの膨らみがベッドの上にない。
 広い室内とはいえ、見通しが悪いわけではない。
 いるはずがないというのに、司は目を見開き、周囲を見回す。
 当然、彼女の姿はなく、慌ててベッドへと歩み寄った。
 捲り上げられた掛布をさらにめくって、いない彼女をさらに確認する。
 「どこ行ったっ!」
 どこにも行くはずがない、行けるはずがないという理性の声とは裏腹に忍びいる声がある。
 …まさか、あの時みたいに。
 つくしが屋敷を逃げ出そうと、玄関へと向かい、彼に追いかけられた結果、階段から転落した時の情景が脳裏に蘇った。
 階段の転落?
 いや、違う。
 彼女はあの時、たしかに彼の顔をしっかりと見ていた。
 見て、呟いていた。
 ―――もうあんたから逃げられないの。
 そして、涙に濡れた顔を、何もない暗い闇の宙へと向けて………跳んだ。
 彼から逃げる為だけに。
 「……っ!」
 ダッ。
 寝室から駆け出し、居間のドアもブチ破るようにして、司は廊下へと飛び出した。
 寝室からは居間を通らなければ外へ出ることができない。
 逆もしかりで侵入者があれば、司に気づかれないはずがなかった。
 だが…、
 「なにやってんだよ、俺はっ!?」
 何度目だ、この焦燥は?
 しかし、よもや記憶も失い、頼るべき人間もいないこのニューヨークで、本当につくしが彼の下から逃げ出そうとは思わなかったのだ。
 すっかり寝こけて、彼女が自分の真横をすり抜けてゆくのに気がつかなかった。
 …いや、逃げたんじゃねぇよ。もしかしたら、散歩にでも出て、迷子になってたりすんのかもしんねぇ。
 あるいは、誰かに……伯父の手の者の誰彼らに連れ去られたか。
 もちろん邸内とはいえ、信用できない人間の屋敷だったから、内側から鍵をかけていたことは言うまでもないが、合鍵も当然持っているだろうからこれは無意味だ。
 しかし、もともと用心していたのだから、いくら寝入っていたにしても、さすがに侵入者の気配に気がつかないはずもない。
 いや、そもそももしも伯父が本気で彼女を奪おうとしたのなら、彼が留守の間を狙えばいいのだ。
 結局のところ、自分が彼女の戸惑いを無視して、同室にいることを強いたのは―――、
 …また、あいつに逃げ出されたくなかったからだ。
 今度こそ、永遠に失われてしまうのではないか。
 彼の手の届かない処へ行ってしまう、というその昏い予感に、司はゾクリと我知らず身体を震わせた。
 …ダメだ、ダメだ、ダメだ、ダメだっ!
 今、彼の脳裏を埋め尽くしているのは、その言葉だけで、奇異の目で自分を見ては通り過ぎてゆく使用人たちのこともまるで彼の目には映ってはいなかった。
 「おいっ!」
 が、さすがにすぐに自分一人で広い邸内を探し回る無理に思い当たって、すぐ横から出てきたメイドへと駆け寄る。
 「おいっ!屋敷の連中かき集めろ!」



*****



 …あ。
 いつの間にか眠っていたらしい。
 相変わらず身の置きのどころのない広いベッドで目が覚めて、ブルリと感じた肌寒さにつくしは背後を振り返った。
 いつもだったらキツく抱きしめている大きな身体がないことを不審に思って、周囲を探る。
 しかし、わずかに朝日の差し込んだ寝室には、司の姿がない。
 たしか昨日は久々に司が怖くて、寝たフリをして彼をやり過ごしたことを思い出す。
 そして…同時に、唇にされたキスを。
 カッと頭に血が上った。
 ヌメヌメとヌメる舌が彼女の唇を舐め回して、まるで彼女の唇ごと食べてしまおうとでもしているかのように、唇を喰まれた。
 …知ってる。
 少なくても初めてのことじゃない。
 そして、それが当たり前のことだともすぐに思い当たる。
 …あの人の赤ちゃんを、あたしは妊娠していたんだもの。




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