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「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う①

愛してる、そばにいて0913

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 自分の誕生パーティでの策略に頭がいっぱいで、まさか彼女の誕生日が近くだったなんてまったく気づきもしなかった。
 きっとつくしも不審に思ったことだろう。
 恋人が自分の誕生日を知らなかったなんて。
 だが、それでも、彼とつくしが知り合ってからまだ一年も経っていないのだということで、一応の納得はさせられた。
 本当にそれで納得したのかどうかは別として。
 バスローブを纏って、頭をガシガシとバスタオルで拭きながら浴室を出る。
 今日は疲れたという言葉のとおり、つくしはすでに寝室に引き上げたらしい。
 …っていうか、俺と顔を合わしたくもねぇんだろうし。
 部屋に戻ったつくしはあきらかに、再び動揺を取り戻してしまっていた。
 司の一挙一動を窺って、それがまるでかつての彼女を彷彿とさせた。
 いつ司が自分に襲いかかるのか。
 彼が自分を傷つけるのではないかと、ビクビクと怖がっていた。
 その度に思い知らされる。
 たとえ彼女が全てを忘れてしまっていても、いまだ彼女の何者にもなれていない自分を。
 …どうして、信じてくれねぇんだ。
 彼がつくしを好いていて、けっしてもう彼女を傷つけることはしないのだと。
 今は偽りの‘恋人同士’であっても、いつかは真物となり、‘彼女が愛している男’になりたい。
 いや、なるのだ。
 寝室の明かりは常夜灯を残して落とされていて、ベッドのこんもりとした盛り上がりから彼女が横たわっているのがわかった。
 いや、どのみち、ここ以外のどこにも彼女に行くところがない。
 たとえ部屋を出たとしても、何処へ行く?
 ベッドに腰掛け、ほとんど頭から被ってしまっているうわ掛けをめくり、つくしの顔を覗き込む。
 …眠ってる。
 もしかしたら、眠っているフリをしているだけかもしれないとも疑っていた。
 けれど、つくしはスースーと規則正しい寝息を立て、子供みたいな顔でぽっかりと口を開けて眠っていた。
 それでも、あるいは、という疑いを晴らすことができずに、ムギュッと鼻を摘んでやると、フガフガと言うが、顔を顰めて司の手を振り払おうと顔を右に左に振る。
 「おもしれぇ」
 が、
 「ん~、んん、スー、スー、すぴ~~」
 起きるかと思ったが、口でも呼吸できることに気がついたのか、顔を顰めることもやめて再び寝入り出す。
 その呑気な顔がなんともおかしく、癒される。
 …なんだか、小動物みたいだな。
 彼女の顔を見ているだけで自然に笑みが浮かんだ。
 掴んでいた小さな鼻から手を放してやり、髪を撫でる。
 すると鼻呼吸に戻ったのか、つくしは開けていた口を閉じて、今度は唇を尖らせた。
 なんとはなしに、…なんとなく、吸い寄せられるように、司はつくしの唇へと唇を寄せる。
 躊躇はホンの一瞬だけ。
 「……チュッ」
 音を立て軽く唇にキスを落とし、名残惜しく舌先で、彼女の唇のカタチをなぞってゆく。
 …甘ぇ。
 舐めてはチュッと音を立てキスをして、唇で唇を挟み込み、舌先で歯列を確かめる。
 歯と歯の隙間から覗き見える赤い舌から目を離せない。
 「……ん」
 わずかに上がった呻きに、ハッと司は我に返って、半ばのしかかっていたつくしの体から退く。
 「………………」
 無言でジッと固まって、つくしの顔を見ていた。
 眉根を寄せていたつくしだったが、やはり目が覚めてはいなかったようで、すぐにため息のような息を吐いだけで、どうやら起きる気配はないはなさそうだ。
 「ハァ~~~」
 司は頭を抱えた。
 …ヤバかった。
 下腹部に憶えのありすぎる重鈍い感覚が凝おっているのを自覚する。
 「……チッ」
 司はまだ10代、世に言うヤリたい盛りの年頃だ。
 そうでなくても、つくしの妊娠が発覚してから、彼女と性交渉を持っていない。
 彼女が妊娠中はもちろんのこと、階段転落の事故の後彼女が目覚めて、NYに連れてきてからもずっと彼女への欲望を押し留めてきた。
 しかし、それは必死の自制心で堪えていただけで、彼女への尽きせぬ欲望が、けっしてなくなってしまったわけではないのだ。
 それどころか、司は人一倍性欲は強い方だった。
 彼女に出会うまで、自覚がなかったけれど。
 好きな女と…それも以前は欲望の赴くまま、欲しいだけ快楽を貪っていた女と一緒に寝ていて、手を出せないのは地獄だった。
 それでもなけなしの理性で今のところ、襲うようなマネは堪えているのだが。
 …もたねぇかもしんねぇ。
 別の部屋で寝るというのは、今のところ状況的に無理な話だが、それでも私室内には別室もある。
 寝室を分けることは不可能なことではない。
 どうするべきか。
 感情は、つくしと別のベッドで寝ることなどイヤだと言っていた。
 けれど、このままでは理性がとても持たないことも事実で、今の状態の彼女に肉体関係を迫るのは、いかにも非道で、危険なことであることは彼にももうわかっていた。
 …また二の舞を踏む。
 彼女に毛嫌いされて憎まれていたあの頃に。
 今もけっして彼女に愛されているとは言いがたいが、少なくとも頼りにはされていたし、拒絶されてはいない。
 いつかは、またあの輝くような笑顔が彼女に蘇って、彼を見てくれる日が来るかも知れない…いや、きっと来る。
 …今度こそ、お前を俺のものに。
 カラダだけではなく、ココロも伴った牧野つくしを手に入れるのだと再び繰り返し心に誓う。
 伸ばしてしまいそうな手をグッと握り締め、司は断腸の思いで、つくしの眠るベッドから立ち上がった。
 「……フ―――ッ」
 気合一つで、つくしに背を向けて、司は寝室を出た。




******




 キィ~バタン。
 ドアの締まった気配に、つくしはパチリと目を開けた。
 ソロリソロリと目だけで周囲を窺って、完全に司がいないことを確認し、ゆっくりとベッドから起き上がった。
 唇を抑えて、はぁ~と大きく息を吐き出す。
 触れた唇はどこか腫れぼったくて、濡れていた。
 カッと頭に血が上る。
 目が覚めてから、反応しないようにするのがいかに難しかったことか。
 それでもガチガチに固まった体が身動きしそうになる彼女の動揺を制止してくれた。
 …怖かった。
 たしかに、司から感じた気配は‘男の欲望’。
 …食べられちゃう。
 そして、めちゃくちゃに壊され、今度こそ元に戻ることはできなくなってしまうんだという恐怖が、彼女の脳裏一杯を埋め尽くしていた。
 「怖い」
 一度口に出してしまえば、確かなカタチとなって彼女に自覚させた。
 自分は司が怖いのだと。
 あれほど自分を大切にしてくれる彼に恐怖を感じている。
 …どうして?
 いまさらながらにブルブルと体が震えだした。
 あのまま、司が思いとどまってくれていなかったら、自分は―――自分たちはどうなっていたのだろうと。
 「どうしよう」
 どうしたらいいのか。
 医師の言葉が再び脳裏に溢れ出す。
 ―――性生活を再開しても構いません。
 …そんなこと、絶対にいや。




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