「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う①

愛してる、そばにいて0905

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 人の話し声で、つくしは目が覚めた。
 昨夜は結局、日が窓から寝室へと差し込むまで司とトランプに興じてしまい、気が付けば寝入ってしまっていて、自分がいったいいつまで起きていたのかさえ記憶がない。
 …あの人は?
 そろそろと体を起こして、周囲を見回す。
 縦に寝ても横に寝ても、十分以上に広いベッドの上には自分以外の姿が見えない。
 すでに日は高く登っていて、時計も10時を大きく回っていたが、これが時差ボケというやつなのか、寝すぎて頭がいたいにも関わらず眠気が残っていて、とてもまだベッドから起き上がる気持ちになれなかった。
 『…………誕生日……………婚…………よ』
 …誕生日?
 そういえば、今日…いや、一日巻き戻ってしまったのだから明日になるのか、自分の誕生日だと誰かが言っていたか。
 「即断即決がビジネスの基本だろうに、グダグダと結論出すのがおせーよ」
 誰かの面倒臭そうな声―――いや、間違いなく司の声だ。
 いつものように耳に心地よい甘い声音ではなく、どこか凄みと威圧のこもった低い声が聞こえて、つくしは我知らずブルリと肩を震わせた。
 ダンッ!!
 ビクッ。
 「本来なら、私が道明寺の総帥になるべきだったのだっ!!」
 激昂した男の怒鳴り声に、つくしは飛び上がった。
 つくしの目がハッキリと覚める。
 ギョッと、寝室と居間の境のドアを見れば、わずかに隙間が空いていて、激昂する男を窘める他の人間の声もかすかに聞こえ、どうやら隣室には司の他に何人かの来客がいるらしい。
 だが、男の怒声につくしの体がカタカタと小刻みに体が震え出す。
 …なに?誰?
 「あんたが俺や俺の親父にどういう個人的感情を持ってるか俺にはまったく興味ねぇよ。けど、道明寺から駆逐されたくなけれりゃ、俺に力を貸すしかねぇだろ?このままじゃ、親父どころか、ババア……俺の母親の風下に立つことになるんだ。あんたに選択の余地はないんじゃねぇの?」
 「そうか?お前は自分を絶対的優位に立っているか何かと勘違いしているようだが、ここは私の手の内だ。自ら飛んで火にいる夏の虫になったとは思わないのか?お前はどこまでも世間知らずで、自分を王だと勘違いしているだけの井の中の蛙だ。親の庇護の下、道明寺家の後継よ、唯一の直系よと祭りたてられ自分の無力をわかっていない愚か者。ここはアメリカだ。……たとえば、お前の存在を跡形もなく最初からいなかったものとして消し去ることも私には可能なのだ」
 話の内容は彼女には理解できないものだったが、どこか陰惨なものを含んだ年配の男の声音に、つくしが怯える。
 そこには彼女の知らない世界、冷酷な論理が透けて見えた。
 「どうだかな。あんたのところに俺が来たことくらい、早晩オヤジにしてもババアにしても、気が付くとは思うが。どちらにしても、たとえあんたが俺を消しでも、そうしたら今度は俺の姉貴の婚家が出てきて、結局道明寺はあんたやあんたの息子のものにはならない。」
 「………………」
 「俺の望みはごくシンプルで、あんたにとって造作もないもののはずだ。俺は望みのものさえ手に入ればそれでかまわない。他のよけいなもんはいらねぇ。俺の噂、あんたも知ってんだろ?道明寺の実権にも興味ねぇよ。もちろん、ビジネスもな」
 威圧的だった司の声音がおもねるような…唆すようなものに変わる。
 …怖い。
 なぜか、つくしは怒声を上げ憤怒もあらわに司に詰め寄っているらしい年配の男よりも、司の方が怖かった。
 「あんたは俺を傀儡にして、あんたをコケにした連中を駆逐して、道明寺を手に入れればいい。―――さあ、選べよ?俺の後見になって、俺と手を組み一気に王手をかけて生き残るか、俺を突っぱねて先の見えねぇ戦いを俺の親とだけじゃなく、有象無象の親族連中と延々と尻つぼみに続けるか」
 「……………」
 「……………」
 沈黙が続いた。
 やがて、
 「ふっ、小僧が言うものだ。今のお前を見る限り、お前が言うほどお前はシンプルではないようだが、たしかに今のままでは我々の先行きは尻つぼみになるばかりで、明るいとは言えないものになるだろう。……お前の望みがあの娘だけだというのなら、たしかに私にとっては取るに足らない造作もないもので、お前の手を取る以外の選択肢はないように思える」
 周りくどい言い方をしてはいるが、それでも相手の声音には司の言葉への傾きが現れていた。
 それでもそこに警戒と意外さが含まれているのは、つくしの気のせいではなかっただろう。
 「が、単なる口約束程度でお前の口車に乗せられるほど私はお人好しでも、愚か者でもないのだ。お前が私の力を借りたいというのなら、私からも条件がある」
 「……………条件?」
 「そうだ。保証と言い換えてもいい。お前の連れている女ではなく、お前が……私の娘を妻に迎えること。それが条件だ」
 …っ!?
 「ぶっ、なんだよ、それ。言ってること、おかしいだろ?」
 噴き出した司の声音はまったく楽しげでもなければ、彼が愉快に感じていないのはあきらかだったが、まだ余裕は崩れていない。
 自分の名前が出たことで、怯えて縮こまっているだけだったつくしも、ソロリソロリと蹲っていたベッドから足を踏み出し、男たちが密談する部屋へと続くドアへと向かう。
 そっと覗き込んだドアの隙間からは、それほど広範囲に部屋の中がで見るわけではなかったが、それでもこちらに背を向けて座っている司らしい背の高い男の背中と、その対面側に座る初老の男を取り囲むようにして立つ幾人かのスーツ姿の男の姿が見える。
 司の対面側に座る初老の男は、この家の主なのかラフな服装だったが威風堂どいうとして、いかにも地位あるひとかどの人物のようだったが、それでも親子ほど年が離れているその男を相手に司は対等に対峙していた。
 「第一、あんたには娘なんていねぇだろうよ?それとも外の女に産ませた娘でも引っ張り出してくるか、どこぞの子飼いの手下の娘でも養女にしようっていう算段ってか?」
 「……そのつもりなら、いくらでも‘娘’など調達できる。お前の女は愛人として囲えばいい。庶民の娘だというのなら、下手に総帥夫人の地位など用意されても荷が勝ちすぎるだけで、結局は不幸を託つ元になるに違いあるまい。まともな頭を持っていれば自ずとそのことに気がつくものだ」




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