「愛してる、そばにいて」
第10章 贖う①

愛してる、そばにいて0898

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 司がため息とつき、スラックスのポケットから携帯電話を取り出し、着信者の名前を確認する。
 だが、面倒臭そうでイヤイヤだった顔が瞬時に引き締まり、一瞬周囲を見回して、つくしへと視線を向けた目が不可思議な色合いを帯びる。
 「……わり、ちょっと席外すわ」
 「もしかして……おふくろさんからか?」
 「は?ババア?」
 「あったんじゃねぇの?」
 チロッとつくしを見た総二郎の顔が、何を言いたいのかもちろん司にもわかった。
 しかし、
 「一回あったみてぇだけど、あっちは今なんたらつー重要な国際会議で缶詰。一週間はそっちにかかりっきりで俺にかかずらわってらんねぇじゃねぇの?ま、手足を派遣するらしいけどな」
 「相変わらずだな」
 自分の息子が肋骨を骨折する大怪我をしたというのに、すべて人任せ。
 たしかに司自身が頑健なタチだったからこそ、今こうして平気な顔で歩き回っているが、普通の人間だったら身動きすることも難しい状態だったのだし、ヘタをすれば階段を転落した際に死んでいたこともありえる話だ。
 それでもよほど重要な電話だったのか、片手をあげ断って、退席する司を一同が見るともなく見送り……沈黙が落ちる。
 「具合…悪いなら、メイド呼んで寝室に引き上げれば?」
 意外にもその沈黙を平然と打ち破ったのは、眠そうな顔でそっぽを向いていた類だった。
 あくまでも眠そうで眠っていない。
 一人がけの椅子だということもあっただろうが、彼ならばたとえ一人がけだろうと平然と寝てしまうだろうし、そもそもどうしても眠くなれば勝手知ったる他人の家、子供の頃から出入りしている幼馴染みの司の屋敷だ。
 好き勝手に適当な部屋を拝借して寝るだろうし、あるいはさっさと自分の屋敷に帰っていただろうに、彼が今そこにいることがどうしてなのか、総二郎やあきらにしても察していた。
 あるいは、一番それをわかっていないのは当事者である類と、―――つくしだったかもしれない。
 類がつくしをどう思っているのか。
 正直、総二郎やあきらもハッキリとは測りかねていた。
 これまで司は、むやみやたらに類を敵対視してきたが、類はどこ吹く風で、たしかに彼らしくなく司のイジメからつくしを庇うような言動が見られることもあったが、あくまでも類が惚れているのは静だろう。
 司が部屋を出るまでまるで縋り付くように彼の背中だけを見ていたつくしが、司の姿が消えたとたん俯いて周囲を拒絶しだした。
 まるで、彼らがつくしに襲いかかって、ひどいことをするというに半ば背を向け、両腕を体に回し、彼らを見ようともしない。
 そんなつくしに、類が冷たく言い放つ。
 「なに、記憶喪失って、言葉まで忘れちゃったわけ?」
 いつもどおりの彼とも言えたし、だが、無視をしない、それだけでも類らしくない行動とも言える。
 「おい、類」
 「キツイ言い方するな」
 「返事するくらいできるでしょ?」
 もっともな言い分だが、つくしの様子を見れば総二郎にしても、あきらにしても無理強いする気になれない。
 司も彼が幼馴染みだからこそ、つくしを一人残して退席したのだろうし、すぐに戻ってくるつもりなのだろうが、他人を気にしない彼らにしてもなんとはなしに居た堪れない気もした。
 それでも意を決したように、キョドキョドと周囲を窺いながらも、つくしが小さく声をあげる。
 「………あ、あの」
 「なに?メイド呼ぶ?」
 「い、いえ」
 「じゃ、なに?」
 唇を舐め何度も逡巡するつくしに、あくまでも類は普段通り、少なくてもそう他人から見えるように装っていた―――不自然なほどに。
 「ホント、どうした?遠慮しなくてもいいぞ?」
 「司を呼んできた方がいいんじゃね?」
 「つーか、俺らが帰った方がいいか…」
 類の前に出るようにして、総二郎とあきらが無理矢理に割り込む。
 そのまま類に会話をさせていたら、ただでさえ萎縮しているらしいつくしをさらに脅かせてしまいそうでもあったし、うっかり二人で話し込んでいるところに司が戻ってきたら面倒なことになりそうでもあったからでもある。
 とはいえ、今の司はこれまでの彼とは180度違って、類がその場にいても余裕があった。
 それがどうしてかなんてわからないほど、総二郎もあきらも鈍くはない。
 もちろん、類もわかっていただろう。
 つくしの態度が、これまでとまったく違うからだ。
 …牧野が今頼っているのは、類じゃなく司だ。
 彼女がこれまでヒーロー視してきただろう類ではなく、毛嫌ってきた司。
 …司のヤツ、囲い込むつもりか。
 これまでも屋敷に引きずり込み、どういった経緯か半ばつくしを支配するかのように連れ回してきた。
 二人にどんな取引めいたやり取りがあったにせよ、
 …牧野もまるっきり馬鹿じゃなかったってことだろうが。
 それでも解せないと思わなかったわけではない。
 けれど、これまでどおり臭いものには蓋で、面倒なことには関わらないようにとセーブしてきた自覚が彼らにもあった。
 しょせん他人事だ。
 つくしもどうしても司を我慢できなければ、これまで赤札を貼られた生徒たちのようにさっさと学園を退学するなり、尻尾を巻いて逃げただろうし、そうせずおもねるようにして司のそばにいる以上、それなりに納得してのことだろう。
 それも当然のこと。
 彼らを拒絶できる……するような人間などいはしないのだから。
 誰もが彼らの関心を買いたがり、おもねり、実際にどんなことでもした。
 司ならばなおさらのことに違いない。
 彼らでさえ、本当の意味では司を無視し得ない。
 司の持つ背景はもちろんだったが、彼自身にもそれだけの魅力があったからだ。
 そして、自分たちさえよければそれでいい、そんな気持ちが自分たちにあるのがわかっていても、それでどうだというのが彼らだった。
 「あの……あの人、…怪我、ひどいんですか?」
 「「は?」」
 思わぬ質問に、総二郎とあきらが顔を見合わせる。
 彼らにしてみれば、何をいまさら、むしろ当事者であるつくしの方がよく知っているだろうことを尋ねられたのだ。
 「なに、あんた知らないの?」
 「……怪我を、しているのは知っていたんですけど」
 というか、司の屋敷のものだという世話係の使用人と司の会話の端々からつくしにも察せられたし、これだけベッタリと身近にいれば司の胸に巻かれた包帯も分かれば、ただつくしに付き添って病院に宿泊していたわけではなく、治療らしきものをしていたところも見かけた。
 が、司自身が何も言わなかったし、今さっきまでの会話でチラホラ出てきていた‘肋骨の骨折’というほどの大怪我をしている人間にはとても思えなかったのだ。
 たびたびつくしを抱き上げたり支えたりしている。
 思い起こせば多少顔を顰めたりもしていたかもしれなかったが、肋骨を折ったばかりの人間がそんなことをできるものなのか?
 「ま、あいつ人間じゃねぇからな」
 「回復力もすげぇし」
 つくしの不審そうな表情に、男たちもあらかた言いたいことを察したのか、言葉を探す彼女に先回りして答えてくれる。
 「あたしを庇って、階段から落ちたんですよね?」
 「司が説明したんだろ?」
 「………いえ、違う人が」
 「へぇ」
 「なるほど」
 司の性格なら声高に自分の手柄は自慢しそうなものだが。
 とはいえ、司はつくしと出逢ってずいぶんかわった。
 長年の付き合いの幼馴染みである彼らが、それこそ人が変わったと思えるほどに。
 それがいいことなのか、どうなのか、今の段階では彼らにもわからなかった。
 女は汚いと毛嫌い、幼馴染みの親友である彼らと姉の椿、それに使用人頭のタマ以外を拒絶してきた男が…。
 …牧野に執着してるのはたしかだが。
 どんなに彼女に司が執着したとしても、たとえつくしがどんなメリットにかそれを受け入れたにしても、司の親が、―――家がそれを認めるはずがない。
 「で、あんた、マジであいつと結婚するの?」




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