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「夢で逢えたら…全207話完+α」
第五章 ここより永遠に

夢で逢えたら190

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 本日二回目の更新です。
 一夜明けて。
 二人の平和な時はそろそろ終わりをむかえるのでしょうか。
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 髪をさすり、素肌の背中を撫でおろす優しい感触につくしは、目を開いた。
 逞しい胸元が目に入り、がっしりとした腰に回した手に力を込めて抱きしめる。
 「…わり、起こしちまったか」
 何度情を交わしただろう。
 抱きしめても抱きしめても、お互いがいる現実に信じられず、気が付けば何度となく手を伸ばし互いを求めた。
 つくしが意識を飛ばしてしまったのは、何度目の頂へと達したのちのことだったのか。
 昨夜の…いやもはや今朝の自分の痴態を思いだし、つくしは男の胸へ顔を伏せる。
 …は、恥ずかしい~、私ッたら。
 何やらとんでもないこともしてしまった気がする。 
 司相手に今更と言えなくもなかったが、強要された行為と、自ら進んで交わした行為とでは恥ずかしさに雲泥の差だ。 司の長くて綺麗な手が、まるで大切な宝物を扱う様に丁寧に、優しくつくしの肌を慰撫し、愛おしいと彼の心を染み入らせる。
 つくしもその手の感触があまりにも愛しくて、優しくて、目の前の薄らと汗せばんだ肌にキスを落とし、撫ですさった。
 この指先から、この眼差しから、自分の愛しさ、労わり、恋しさが伝わればいいと。
 ふと、つくしは自分の肩にシーツをかけてくれる手に目をやり、眉を顰める。
 そして、その手を取り、ジッと見つめた。
 「…時間なくてな。あんま気持ちいいもんでもないけど、機能的には支障ねえし。せいぜい、挨拶に握手した時に、相手をビビらせるくれぇ?」
 「まだ、痛いの?」
 先日来日した時に浴びた硫酸は、司の美しかった肌に醜い傷跡を残していた。
 引き攣れた火傷のような跡は、つくしの首筋のケロイドとよく似ていて、実はけっこう司的には気に入っていた。
 つくしがかつて負った苦しみの一端を感じることができるような気がして。
 そんなものは単なる自分の欺瞞であることはわかっていたけれど、司はつくしの髪の毛の一本、皮膚の一片たりとも彼女のすべてを共有したかった。
 つくしの痛みをも…。
 「時々思い出したように痛む気もするけど、ま、いわゆる神経痛って奴だろ?これくらい大したことねぇよ」
 司の手に残る赤黒い傷跡に、つくしは複雑な想いを感じずにはいられない。
 「…ん、なんだ?」
 「あ~、何て言うかさ」
 「うん?」
 つくしは、過去自分の傷跡を見た人たちの反応を思い浮かべる。
 傷ましいような、何とも言えない顔で一応に、皆顔を背けた。
 その顔を見る度に、自分は何でもないんだ。
 痛みなど感じてないと、我を張り、意地を張り続けた。
 そうでなければ、何かに押しつぶされそうな気がしたから。
 胸を塞ぐ痛み、哀しみ、孤独、それらすべてを内包した何か。
 わざわざ傷を残し、自分はこんな傷なんてなんでもないんだと、誰も何もいわないというのに突っ張り続けた。
 …バカバカしい。
 今なら素直にそう思える。
 だが、それを司に重ね合わせて自分がその傷を見る立場に立つと、傷を負った立場とは別の感慨がこみ上げ、目を背けた人たちの気持ちが理解できた。 
 憐れみじゃない。
 ただ…哀しいだけだ。 
 この美しかった肌についた傷が、その時に負った痛みを思い、辛いだけなのだ。
 愛しているから、大切だから、その苦しみを分かち合う。
 司の手の傷を優しく撫で、そっと何度も何度も口づけを落とす。
 「…牧野?」
 「何ていうか、あんたの手がどんなに醜く変わってしまったとしても、私はなんてことないけど…さ」
 「うん」
 「でも、あんたの綺麗な手が好きだったから、治るなら治してくれたら嬉しいかな。…痛そうだし」
 くすりと笑ったつくしの頬に口づけを返し、司が薄らと微笑む。
 「ああ、そうだな。お前も、治すか?」
 言いながら、首筋の傷を労わるように撫でる。
 「…ん」
 「俺もこんな傷の一つや二つ、お前にあったって気にしやしねぇけどさ。お前が気になるんじゃね?実は。…痛そうだし」
 わざとつくしの言い回しを、マネして司が悪戯っぽくつくしを見返す。
 半分本気で、半分冗談。
 つくしが負った傷跡さえも司は愛していたからそのままでもかまわなかったけれど、確かにその傷跡がつくしの哀しみの元凶でもあったので、その思いを気遣う。
 そして、ふと、気になったことを尋ねた。
 「お前、14年前のホテル火災がなかったら、記憶の戻った俺とやり直してたか?」
 突然何を言いだすのかと、つくしがキョトンと自分を抱きしめた男の顔を見上げる。
 司はつくしの頭に顎をのせたまま、自分の思考の海に囚われて茫洋としてるようだ。
 つくしは、自分の心を探り、その時の自分を思い出すようにゆっくりと口にする。
 「うーん、どうだろ。でも、たぶん、ダメだったかなあ。確かに、あんたを忘れかねていたところはあったと思う。でも、当時ね、こんな私でも好きだといってくれる人もいたんだ。あんたとのことも知っていて、それでもあんたのことを忘れないままでいいって言ってくれたの。その人のことを愛せるかどうかはわからなかったけど、もう過去は過去として私も前向きにいきなきゃって、思ってた頃だったしねぇ」
 ボウッとしていた顔が急に引き締まり、険しい視線をつくしに向ける。
 声音は怒っているようではなかったが、ヒクヒクしている唇が、司のスネて面白くない心情を顕わにしていた。
 …ホント、こいつなんだか、退行してない?
 そうは思いつつ、そんな司も可愛いと思ってしまう自分に、つくしは気恥ずかしいような面映ゆさを感じる。
 「それって、お前の初めての男?」
 「いまさら、昔のことで嫉妬しないでよ?」
 「…しねぇわけねえだろ。本気のお前を見せられて、お前に惚れねぇ男はいねぇし、お前がちょっとでも気持ちが揺れた男なんてすっげぇムカつくし、ブッ飛ばしてやりてぇ」
 男の言い草に呆れるものの、クスクス笑いが洩れる。 
 「ほんと、あんたってどうしようもない。…でも、あんたを忘れることなんてやっぱりできなかったかな」


 つくしがシャワーを浴びて、居間へと戻ってくると、ちょうど司がベッドから起き上がって伸びをしているところだった。
 一糸纏わぬ男の彫刻のような肢体が、朝日を浴びて美しい陰影を刻んでつくしの目を奪う。
 見惚れずにはいられない美。
 そんなつくしの視線に気が付き、男が見せつけるようにゆったりとした動きで立ち上がって、つくしへと歩み寄る。
 そして頬に手を添え、もう片方の腕で彼女の腰を引きよせ、つくしの目を覗き込む様にしてそっと顔を傾ける。
 チュ、チュッ、と軽い音を立て目元や、頬に口づけを落とすと、寝起きで掠れた低い声で、甘く囁く。
 「…俺と一日、ベッドで過ごすか?」
 「ッ…」
 息を呑み込み、とっさに開けた目に映った妖しい眼差し。
 そそのかすように、つくしを蕩かすように、そのままこの男の言う通り、愛欲の海にしたり続けていたい誘惑に逆らうのは至難の業だ。
 「…ば、バカ…言わないで。あんたと私が一日寝室にこもってたりしたら、みんなになんて言われるか」
 クスッと笑って、もう一度、軽い口づけをつくしの唇に落とすと、案外あっさりとつくしの体を介抱して髪を撫でおろす。 
 「名残惜しい目で見てんからさ。なんか視姦されてる気分?」
 「ばっ!何言っちゃってんのよ。誰がそんなんするかっ。つーか、あんた、いつまでそんな恰好してんのよ。バスローブくらい着てっ!」
 真っ赤になって逆上するつくしに機嫌のよい笑いを残しながら、司がシャワールームへと踵を返す。
 …あ、あれ。
 司から目を反らそうとしたつくしが、ふと司の腰元に視線を奪われる。
 時がたち、もはや他の部分と同化し、目立たなくなってはいたが、18年前のあの日、刺されて大量の血を振りまいた傷跡が薄らと残っている。
 あの日、あの時からすべては始まった。
 司とつくしの新たな人生の始まる日となるはずだったあの日、運命は真逆の境遇を二人に与えた。
 白く薄らと浮き上がる傷跡が、あの日一心に祈った願いを思い起こさせる。
 『嵐を起こさないで』
 バタンという音と共に司の姿がシャワー室へと消え、今度こそつくしは遠い過去から顔を背けた。

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お疲れ様です

一日に二回更新ありがとうございます。
司とつくしがようやく一緒になれそうで嬉しいけど、もうすぐこの二次小説が終わるのかと思うと残念です。
日々の楽しみになってますから。。

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