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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽③

愛してる、そばにいて0878

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 「え?」
 「いや、泊まりに来ていないの?」
 「……いえ、夏休みが終わってからは全然」
 「そうなんだ」
 いつまでもつくしの玄関先を覗き込んだまま、どこか納得いかげな顔をしている滋の様子に思い当たる。
 「あの、ウソじゃないです」
 「え?あ…いやいや、そういうんじゃないのよ。うん。ごめん、気を悪くしないで」
 「もしよかったら、中でお茶でも」
 戒を隠しているわけではないことを証明する意味合いであることは、滋も承知だろう。
 「いや、ホント、疑ってるわけじゃないから。個人的には、と~っても気を惹かれるお誘いだけど、今日はもう遅いし、ほら、私、明日早朝から仕事だって言ったじゃない?つくしも疲れてるだろうから、またの機会にするね」
 「……はい」
 むしろつくしの方が納得しがたい気持ちだった。
 しかし、だからといって、なおも誘いかけるのもかえって迷惑なことだろうという分別はつくしにもある。
 だが、
 「もしかして、戒…帰ってないんですか?」
 家に帰ると言っていたはずだ。
 だが、何日も平気で外泊するような子なのだ。
 それがつくしの家に限定して、というよりも、これまでもそうしたことを平然と行ってきたような風情が元々あった。
 戒自身もそうだし、滋や司の口ぶりからも。
 「何日も行方を把握していないってことはそうそうないんだけどね」
 やっぱりだ。
 「どうやら昼間、学校に行っているらしいから、誘拐とかそういうのとかは心配いらないと思う。そこらへんは戒君も承知していて、完全に行方を晦ましたりしたことはめったにないから、司も大目にみてるわけだし」
 「……………」
 それでもまだ中学生だ。
 そういう思いもある。
 けれど、保護者ではないつくしには、何をどう言うこともできない。
 おそらく倫理的には母親として口出しする権利はあるはずだが、そうしてしまうことで戒の立場を悪くすることや、完全に自分からの接触を拒絶され、また再び戒の気配さえも感じられないくらいに大きな壁を置かれてしまうことは避けたかった。
 道明寺家は普通の家とは違うのだ。
 道明寺家や戒本人がそうと望まなければ、あるいは許さなければ、たとえ戒の実の母親だとしても一生その姿を、雑誌やそれらの類の媒体でしか垣間見ることができなくなってしまうだろう。
 どちらにせよ、戒の安全に関しては、道明寺家側とて神経質なくらいに気を使っているはずだ。
 実際に、昼間には学校に通学していると確認しているのだから。
 「男の子のことだしね。……たぶんまたひょっこり、こちらにも顔を出して、何食わぬ顔で泊めて欲しいって言いに来るんじゃないかな?」
 悪戯っぽい滋の物言いに、つくしは曖昧な笑みで返す。
 「でもさ、戒君もまだまだ子供っていうか、…こんなこと言ったのがバレたら怒られちゃうだろうけど、ママが恋しい年頃なんだね」
 それこそ戒が知ったら怒り出しそうなセリフに、つくしが目を瞬かせ、意外さに滋をジッと見返した。
 「そう思わない?」
 「いえ」
 「ふぅん?やっぱり照れ臭くて、つくしにも突っ張った態度とってるのかな」
 戒は母親を恋しがってはいない。
 それは一緒に過ごした短い間のことでも感じていた。
 彼はそうした子供時代をもう脱していて、あるがままを受け止め、滋だけが…司の妻である女性だけが自分の母親なのだと言い切っていた。
 そして、おそらくその方がいいのだろう。
 ほろ苦い寂しさを感じないではいられなかったけれど。
 いつまでも自分を捨て去った母親ではなく、自分を慈しみ大切にしてくれる人たちを彼も愛し、大切にするべきなのだ。
 「そういうわけじゃないと思いますよ。滋さんが自分のお母さんなんだと言っていましたし」
 「ええ?ホント?そんな嬉しいこと言ってくれちゃってるんだ。はは、本心だったら、なんか感動ものだけどね」
 「本心ですよ」
 「うーん。…あの子って、年齢のわりにずいぶんスカした子じゃない?実のお母さんに言う形容詞じゃないかもしれないけどさ?」
 「そうですね」
 つくしにしても反論できない。
 「でも、それでもやっぱりまだ14才なんだよね。かえって私は安心したけど」
 「安心、ですか?」 
 「そう。本人は認めないだろうけど、元々あの子、マザコンぽいっていうか、年上の女の人が好きみたいなのよ。でもそれにしても戒君ったら、また今度はずいぶん年上の人を好きになっちゃったものだなぁとか思ってたのね。年の差やジェンダーに偏見はないつもりだけど、それにしても、ってね」
 「…ああ」
 それはそうだろう。
 つくしにしも、そこらへんは心配だ。
 自分のことは誤解にしろ、たしかにそうした付き合いも戒はしているらしいことはすでにわかっている。
 「でも、違った」
 「え?」
 「戒君、…好きは好きでも、お母さんに会いに来てたんだよね」




*****




 「それじゃ」
 別れの挨拶をして、ドアの閉まった車をつくしに見送った。
 正直、今の彼女の気持ちとしては、
 …なんか、妙なことになったわよね?
だ。
 そこに司は関わってはいないとはいえ、自分と滋は司を挟んで元妻と今妻。
 恋敵として、お互いに相争ったわけではないのだから、特に憎みあう謂れはないだろうが、滋的にはなにか思うところはないのだろうか。
 …私が、もし滋さんの立場だったら。
 夫からいくら愛されていると確信していても、かなり複雑だろうと思う。
 「ま、考えてもしかたないか」
 見えなくなった車へと衝動的に腰を折り、一拍置いて踵を返した。
 それは自分を疎むことなく受け入れ、戒のことを教えてくれたことに対する礼だったのか、あるいは、彼女にとっても大切な二人―――戒と司の幸せを託す祈りとも願いともつかぬものであったのか。
 本当は聞きたかったことはもう一つあった。
 けれど、すぐにそんな自分を窘め、けっして口にすることはなかったけれど。
 …あいつ、どっか身体の具合でも悪いのかな。
 たしか、司と別れた当時、悪性の病ではなかったが、過労とストレスから胃潰瘍、そして胃穿孔を発症し倒れたことがあったはずだ。
 元々無駄な贅肉などない男だった。
 しかし、あの痩せようは尋常ではないのではないか?
 それでも美を損ねるほどではなかったが、スレンダーというよりは痩せ痩けたその体つきは不健康そのものだったし、とても類と同い年とは信じられないほどに円熟した容貌は、その非人間的な美貌と相余って、現在の司には死神のような風情があった。
 …老けたっていうのとは違うかもしれないけど。
 だが、美しいだけによけいに凄艶で、今の司は散る寸前の花の危うさと壮絶さを内包してるように見えた。




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いよいよ

こ茶子さん、こんにちは♪
こ茶子さんが滋を登場させた意図が少しわかったように思いますが・・・

閑話休題☆
さあ、いよいよだ★
戒は学校に行ってるんですね♪

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