FC2ブログ

「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽③

愛してる、そばにいて0877

 ←愛してる、そばにいて0876 →愛してる、そばにいて0878
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「あのちょっと伺ってもいいですか?」
 滋の話が一段落ついたのを見計らって、今度はつくしの方が前々から尋ねたかったことを聞いてみる。
 「うん、なにかな?」
 「その、アメリカにいる知人から聞いた話なんですけど、戒があちらの学校で、えっと、イジメ?めいたことをしていたことがあったようだと」
 「あ、ああ…あれね」
 その言葉は、肯定だったか。
 少なくても否定ではなく、あっさり滋が思い当たったらしいことにつくしはショックを受けた。
 まさか、という思いがある。
 以前、アメリカにいる隼斗から聞いた噂。
 ―――道明寺の息子がイジメを先導し、親の威勢を傘に来て何人もの子供たちを学校から放校処分にしている。
 最初耳を疑った。
 そして、信じられなかった。
 けれど…。
 …あの子は司の子だ。
 忍び寄る陰に、つくしは身震いした。
 自分がそんなことを考えてしまうなんてと。
 けれど、事実から目を塞ぎ耳を塞いだとしても、事実は相変わらずそこにあり続ける。
 「それが本当かウソかって言ったら…本当のことなんだろうけどさ。でも、外から見たことだけが真実ってわけじゃないし」
 「……………」
 「今私たちが見ているあの子は、もうそんな後暗いところからは抜けてしまっているんだと、私は思う」
 「………そう、なんでしょうか?」
 「たぶんね。他人に八つ当たりしても少しも自分が楽にならないって、わかっていてもそうせずにはいられないのが人間ってものじゃない?でも、戒君は本当に賢い子だからさ。私なんかこの年齢になっても迷うし、時には人や物に八つ当たりしちゃうこともある。なのに、あの子はそんなことをしても無駄だと悟ったら、スッパリとそういうことからは足を洗ったんだと思う。でも、…アメリカってただ人が良かったり、正しいだけじゃ生きていけない土地柄でしょ?」
 それはおそらく、日本でも同様のことだっただろう。
 人は優しいだけの生き物ではないから。
 …私には何も言う権利はない。
 我が子の荒廃の気配を感じ取っていながら、自分には手が届かないところにいるから、きっと父親である司が何とかしてくれるに違いないからと、母親である彼女が目を瞑ったというのに、どうしてつくしに戒や司、それに滋を責められようか。
 自分へと同情的な目を向けてくる滋から顔を反らし、何度も目を瞬かせ熱くなってしまいそうな目元を指先でそっと抑える。
 それでもツンと鼻頭が痛くなって、ポロリと涙が一粒頬を転がり落ちてしまうのを堪えきれずに、つくしはスンと鼻を啜った。




*****




 ブー、ブー、ブー。
 携帯電話のバイブの音につくしが反応する前に滋が手元のスマートフォンに手を伸ばして確認する。
 「あ…ごめんなさい」
 「ああ、どうぞ」
 つくしが返事を返すか返さないか、それくらいのタイミングで片手を謝罪のカタチにして、滋がスマートフォンを片手に席を外す。
 なんとはなしに壁にかかった壁掛け時計を確認すれば、すでに20時を大きく回って、21時も近い。
 …もう、こんな時間なんだ。
 まさにあっという間に時間が過ぎたという感じだった。
 仕事の関係ではなかったのか、あるいは折り返すつもりなのか、席を立ってそう時間が経つこともなく滋が戻ってきたのを機会に、つくしも席を立つ。
 「あの、私、食事も終わったし、時間も時間なので、そろそろ」
 「え?、あ、ああ。そういえば、もう21時近くなんだぁ。時間が過ぎるの早かったわねぇ」
 どうやら滋も似たような感慨を覚えたようで、シミジミとそんなことを呟いた。
 「つくしは、明日も仕事?」
 「はい」
 そのとおりだが、たとえそうでなくても、さすがにもう解放して欲しい。
 どうやら本当に苦情を言いにきたわけではなさそうだったから、なおさらのことだ。
 「そっか、ごめんね。すっかり引き止めちゃって。お宅までウチの車で送っていくから」
 「あ、いいえ。まだ、電車も普通にありますし」
 終電だというのならともかく、まだまだ早い時間帯だ。
 「いいの、いいの。もう少しつくしといたいし、たしか横浜方面だよね?」
 「ええ」
 「私も明日は神奈川にある工場の視察が早朝にあって、今夜はそっちのホテル泊まっててこのまま移動する予定だから」
 「ああ、そうなんですか」
 甘えてもいいものだろうか?
 滋と自分の関係は…というのも今さらには違いない。
 「ほら、お互い仕事もあるじゃない?また今度いつ、こんな機会が取れるかもわからないから、せっかく出来たママ友同士、もっと交流を深めちゃいましょう!?」




*****




 さすがにさらに交流を深めるほどには、長距離の移動ではなく高速を使わずともすぐに到着してしまった。
 …元々、ウチの職場から近いし。
 「は~、残念。大して話す時間がなかったね」
 開け放った車のドアの中から、滋が本当に残念そうに顔を顰めている。
 「はは」
 「これ、私の直通の携番だから、良かったら時間がある時に電話して?いつでも出れるとは限らないけど、つくしからの電話なら必ず時間を見て折り返すから」
 「あ、…はい。えっと、じゃ、私も」
 社交辞令かもしれないとは思ったが、お洒落な名刺を渡され、つくしも自分のバッグに入れてあった名刺入れから一枚取り出し、裏面に個人携帯のナンバーを記載して滋に渡す。
 滋から番号を渡されたのだから、彼女は渡さなくてもいいようなものだが、それでもやはり自分からかけるというのは気後れしてしまい、あるいは彼女からの連絡がなければかけないだろうという予感があったのだ。
 …でも、せっかく言ってくれているんだし。
 戒のことがある。
 あざとい話かもしれないが、戒の継母である滋との友好関係を断ち切りたくはなかった。
 滋がつくしの家の外灯を窺いみるように顔を伸ばす。
 「……戒君って、今いるのかな?」




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0876】へ
  • 【愛してる、そばにいて0878】へ

~ Comment ~

母親

こ茶子さん、こんにちは♪
つくしが、まず母親としてあることがうれしいです。
屈託を抱えた子に生半可は通じないですよね。
司のことより戒のことだ。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0876】へ
  • 【愛してる、そばにいて0878】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク