「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽③

愛してる、そばにいて0876

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 無邪気に、戒のことを教えたり相談できると滋に言われ、たしかにありがたい話ではある。
 けれど、戸惑わずにいられない。
 「やっぱり子育てって難しいわよね。……女の子もね、16才にもなるといろいろ考えるみたいで、昔のようには中々話してくれないの」
 「……………」
 母親として、我が子と身近に接してきた人間の生の声だ。
 「男の子になるとなおさらね。……えっと、再婚したって言ってたけど」
 ちらっと流れた滋の視線が、つくしの薬指を確認したことに彼女も気がついた。
 「えっと、今は独身です」
 「ああ、そうなんだ。…恋人は?」
 「そちらもいません。…ただ、前夫の息子と今も交流があって、私にとって………実の息子も同然です」
 戒と同じく―――と口にしようとして、だが、さすがに今現在その戒の‘母’である人に言えるセリフではないと、言葉を濁す。
 「会ったりしてるの?」
 「……いえ、いろいろあって、今海外にいるので中々。でも凄くよく出来た子で、一緒に暮らしていた頃、むしろ私の方が慰められたり、諭されたりで…教えられることも多かったです」
 「そうかぁ、あるよね」
 たとえ人より際立って聡明な子ではなかったにしても、子供を育てるということは、その親自身も学ぶ機会でもあるのだ。
 稚い人に教えられ、学ばされる多くのことがある。
 人はただ年を得ただけでは‘大人’になることはできない。
 人を知り、自分を知り…生きることの意味を自覚することはさらに稀有なことであり、大半の人間は日常の喜怒哀楽、苦悩に気が付けば歳月を費やしてしまっていることがほとんどだ。
 意外に滋は、ただ押しの強いだけの無神経なだけではなく、本能的なのだろう、彼女には他人を気遣うこともできる心根の柔らかさもある女だった。
 自分の娘の萌奈のことを語る傍ら、つくしが内心で知りたがっていた彼女と別れてから現在までの戒のこれまでの生い立ちを教えてくれた。
 「なんていうか、戒君って繊細な子よね。突っ張ってるけどさ、本当は凄くお父さんのことが好きだし、聡明な子だからそんな自分をわかってるし、司にちゃんと愛されてることもわかってるんだと思う。でも、素直になれない。…なんでなのかな。たしかにプライドの高い子ではあるし、頑固さも持ってるけど、意外にそれほど頑ってこともなさそうなんだけどね」
 …頑固。
 それはおそらくつくしから受け継いた性質に違いなかった。
 やはり戒の口ぶりどおり、滋と戒との関係はそれほど殺伐としてものではなく、むしろ良好なようで、それなりに交流があることは滋の口ぶりからも窺える。
 「ま、司に似て警戒心は強いから、最初の頃はガン無視に近かったけど、ひょんなことからそれなりに親しくなってね。本当は、お父さんの後妻の私なんてイヤだろうに、意地悪されたりとか、イヤミを言われたりとかまったくないのよ。かなりフェミニストだしね」
 「フェミニスト?」
 「そう、司なんかよりよほど女に優しいわよ?」
 パチンと両手を合わせてニコニコ言ってくれるが、それは果たして良いことなのかどうか。
 …普通に受け取れば、悪いことじゃないだろうけど。
 しかし、戒に再会した時の自分との経緯ややり取り、総二郎の考察、それに司の口にしていた、‘どこかの女の家に渡り歩く’的な発言を思えば、一概にいい意味とも捕らえかねた。
 複雑なつくしの表情に、滋も今度は気がついたらしい。
 「あ、でも女好きとか、女ったらしって感じじゃないから、そこは安心かな」
 「…そうなんですか?」
 「たぶん?今は好きな子はいないみたいだけど、……前に好きだった子にはずいぶん一途に惚れ込んで尽くしてたしね」
 「戒がですか?」
 「そう」
 戒は14才。
 早熟だとは思っていたが…。
 「…どんな子だったのかな」
 「ん~、悪い子じゃなかったわよ」
 「会ったことがあるんですか?」
 つくしが驚きに目を見開く。
 「まあ、ちょっとしたことでね」
 「悪い子じゃなかった…って、じゃあ?」
 「うーん」
 滋らしくなく困ったように、曖昧に笑むその顔の意味を考えてしまう。
 「さすがに戒くん本人でもないのに、いくら生みのお母さんにしても、私からあまり事細やかに話してしまうのはね」
 仁義に反するということなのだろう。
 子供にもプライバシーがある。
 親という立場上、そのプライバシーを侵して監視せざるえないこともあるが、今現在戒の保護監護を行っているのは滋や―――司であって、つくしではない。
 「……あ、ああ。そうですね」
 「ごめんね?」
 「いえ」
 当然のことだ。
 滋はかなりしっかりと戒を見てくれている。
 さすがに激務の実業と道明寺夫人としての役割の中、べったりと寄り添うことまでは出来てはいないのだろうが、それでも継母としては精一杯の努力をしてくれていると、つくしは感じていた。
 「たぶん戒くんが屋敷にいつかないのは、萌奈のせいも大きいんだと思う」
 「萌奈ちゃんの?」
 「……ん。戒くんに比べて大人になりきれていないっていうか、私が一番いけないんだけど、あの子の体や未来ばかりを心配して、今現在の心を慮ってあげられなかった…たぶん、そういうことなんだと思うのよ」
 唇を噛み締め視線を落とす、滋のその顔は少し前までの年齢に見合わぬ無邪気な女性ではなく、たった一人の娘を心配する母親以外の何者でもなかった。
 「もしかして、萌奈ちゃんは滋さんの再婚を?」
 「……ええ、凄いお父さん子だったから、私が司と結婚したことを裏切りだと思っているみたいでね。しかも再婚の少し前、司と私が婚約するのと前後して、あの子の安全の為に、一人遠くの外国の寄宿舎に入れて一人っきりにしてしまったこともあるし」
 萌奈の寂しさは察してあまりある。
 大人でさえ、愛する人たちと切り離されて一人生きることは、孤独で辛いことだというのに。
 「でも、あの子甘えっ子だから、母親である私を憎むことができずに、ある意味、私をあの子から奪った司や戒君に八つ当たりしてるんだと思う。戒君がまたあの子を相手にしていないから、よけいに反感を募らせてるのかなぁ。理不尽なマネだけはさせないように気をつけてるつもりなんだけど、なかなかね」
 滋の重いため息に、萌奈の心の傷の深さがつくしにも垣間見えた気がした。
 「上手くわかってもらうことができなくって、本当に難しい。……自分の心さえ、ちゃんとコントロールできないことがあるのにって、そんなことばかりを思う事もあるの」
 「それ、よくわかります」
 むしろ、つくしの方こそそう感じてばかりの人生だったから。




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願望

こ茶子さん、こんにちは♪
萌奈も戒も杏樹も苦しいですね。(杏樹はようやく幸せになれましたが。)
いずれ子供は、自分で生きて行かなければならないのだから、子供時代は幸せに過ごさせてやりたいと、たいていの親は必死ですよね。
萌奈は、十分 理不尽なことをしてるので、滋さん、自分のことより、まず萌奈のことではないでしょうか!(←願望)

この前 誕生日のディナーをしてた萌奈は、高1なのですね。
戒と同じ中3で、生まれ月が早いのかと思ってました。
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