「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽③

愛してる、そばにいて0875

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 「だけど最初は、司との結婚はあくまでも愛とかそういうのじゃなくって、…私の事情と司の事情がマッチしたというか、えっと、詳しくはちょっと言えないんだけど、いわゆる政略的なものだったのよ。さっきの話と矛盾してるんだけど」
 「ええ、わかります」
 個人の主義主張はともかくとして、元々彼らの結婚とはそういうもので、つくしと司の場合、あるいは滋とその元夫の場合こそイレギュラーなものだったのだ。
 「だけど、今はせっかく司や戒くんとも縁があって、夫婦になったり親子になったんだからって、気持ちがあるの」
 滋の気持ちはつくしにもわかった。
 …この人、司のこと。
 だが、だからといって、なぜそれを自分に言わなければならないのか。
 あるいは、やはり釘を刺しにきたのかもしれない。
 そう思い当たって、
 「あの、滋さん?」
 「ね!?つくしは司に未練とかあるの?」
 「………は?」
 さすがに逡巡していたようだが、それでもつくしとは違って滋はあくまでもストレートなタチらしい。
 まだ数時間の付き合いだが、すでにつくしもある程度滋の気性を把握していた。
 「どう?」
 「………いえ」
 他にどう言いようがあるというのだ、元妻が現在の妻に対して。
 たとえ未練があったとしても、面と向かって肯定できるものではないのではないだろうか。
 しかし、そこらへんの不条理や整合性のありなしは滋の中にはないらしく、大真面目に問いかけてくる。
 「ホント?」
 「……ええ。道明寺さんと離婚した後、私も再婚しましたし、…結婚を考えていた恋人がいたこともありますから」
 本当のことだ。
 「あの、もし道明寺さんと私の関係を疑ってらっしゃるなら」
 「あ、そういうのじゃないから。ま…全然ってわけでもなかったのは本当だけど、でも、考えてみればあいつ、たとえ不倫したくてもできない状態なわけだし」
 「……はぁ」
 凄い自信だ。
 司のようなステータスがあって身上の男であれば、愛人がいる男も少なくはない話だ。
 それこそ総二郎のように。
 しかし、
 …それだけあいつに愛されてる、ってことだよね。
 司は一途な男だった。
 愛する女以外に目もくれず、どんな女の誘惑にも屈しなかった男だったのだ。
 滋を愛しているのなら、他の女に目もくれないだろうし、司はそうした気持ちをストレートに愛情表現する男だったから、当の滋も重々承知しているのだろう。
 「じゃあさ」
 今度はどんな質問が飛び出してくるのか。
 少しだけ脈拍を早くさせながらも、下手に動揺している様を見せて妙な誤解をさせまいと何食わぬ顔を懸命に作る。
 感情を隠すのが下手くそだとさんざん言われたつくしだが、そこらへんは年の功、多少は少女時代ほどではなかったし、何より滋の方もあまり他人の心の機微を気にするような性質ではないらしい。
 ガンガン聞づらい、答えづらいことを、平然と切り出してくる。
 「あいつとのHどうだった?」
 ……H?エッチ。
 「…………………はあっ?!」
 「セックスね」
 慌てて周囲を見回すも、平日の夜間のカフェは夕食時といえそれほど人影もなく、当然店員たちも過剰な興味を向けてなどこなかったから、よほど大きな声を出さなければ店内に流れる音楽に紛れて、つくしたちが話している内容など他人には漏れ聞こえはしないだろうけれど。
 「セ、セック…スって」
 「気持ち良かった?」
 「……い、いや」
 「ヘタクソだったの?」
 「ど、どうでしょ」
 …なんなの、この会話。
 「あいつって、これまでどうだったのかって思ってさ。ゲイじゃないなら、淡白にしてもそれなりに以前は欲望とかもあったはずよね?あなたともシてたわけでしょ?…戒くんがいるんだし」
 もうつくしの頭の中はグルグルだ。
 …え、これって普通の会話?本当に普通の会話なの?!
 しかも元妻と今妻……何度目だ、この確認。
 「あの、そういうことは、…その、滋さんご自身が、え~、一番ご存知なんじゃ…」
 「まあ、そうなんだけどさ。…私これでもけっこうカラダには自信があるつもりだったんだけど、もうアラフォーだし、私の性的魅力のせいなのか…とかさ」
 さっきからつくしはもう冷や汗ダラダラだ。
 滋が彼女を訪ねて、病院で待ち伏せしていた時とはまるで違う汗を、テーブル野端に置かれた紙ナフキンで拭いまくる。 
 …こ、これはもしかして、この人にあいつとの夫婦生活を語られちゃったりするとか、そんな感じ?
 さすがにいくらなんでも、それは御免蒙る話だ。
 司にもはや未練がない…と滋に言ったのは痩せ我慢のつもりはなかった。
 今はもう彼に対しては幸せになって欲しい、懐かしく思うだけだと自分にも断言できたが、それでもさすがに今の妻にその当の男との夜の生活を赤裸々に聞かされるほどには、まだまだつくしも達観できていない。
 「つくしって、スレンダータイプで凄い若々しいし、肌が綺麗よねぇ。私ももっとこうボディをキュッと絞って華奢な感じにして、触り心地…」
 …もう、聞きたくないっ。
 「あ、あのっ!」
 すっかり自分の中に入り込んでしまっていた滋が、つくしの呼びかけにやっと口を噤む。
 「私には関係ない話ですから。夫婦生活なんて…他人が聞いてもどう返事を返しようもないことですっ」
 ポカンとした顔に出くわし、ハッと我に返る。 
 …あ。
 つい極まってしまったストレスに本音が噴出してしまった。
 これでは未練がないと言い切ったのに、意味がなかったどころか変に勘ぐられてしまうかもしれない。
 「あの…つまり」
 「そうか、そうよね。ごめんなさい。…私ったら、昔っからこうなのよね。それでも大人になっては、だいぶ気遣いとかもできるようになったつもりだったんだけど、…無神経っていうかさ」
 「あ、いや」
 「こんなんだから、ロクに友達とかもいないし、子育ての悩みとかできるママ友とかいたこともないのよね」
 「……いや、私もママ友とかは」
 道明寺家の若妻時代は、ママ友などというのを作って交際する余裕もなかったし、戒が入舎していた英徳では浮きまくっていた。
 陽太の時には夫婦共働きで、すでに陽太が小学生中学年ということもあって、中々同世代のママたちと知り合う機会がなく、隣家のよく陽太を預かってくれていた奥さんはママ友というより同志という感じだったから、思えばそれらしい人間はいなかった。
 …洋子ちゃんくらいだったかな。
 懐かしい名前が思い浮かぶと同時に、苦い記憶も蘇ってわずかに顔を顰める。
 「…迷惑かけちゃって」
 シュンとされてしまい、つくしの良心が疼く。
 「ちょっとだけ、…あ~、居た堪れないっていうか、返事に困っちゃうこともあったりしますけど、た、大してかけてません」
 …たぶん?
 意気消沈していたようだった滋の顔があっという間に立ち直って、明るさを取り戻す。
 「本当に?じゃ、これからも相談に乗ってくれる?」
 「はいっしますっ………え?」
 「やったぁ、嬉しいぃ~」
 …相談って、私が?
 元妻が今妻の?
 「あ、あのぉ」
 「こういうの夢だったのよ!よく小説とかドラマであるじゃない?夫婦の悩みを友達に相談したり、子育てのことを話し合ったり!ちょうど良かったわ。これで戒くんのことも話せるし、一石二鳥ね!」
 …そ、そうだろうか。
 違うとは言えなかったが、あまりに複雑な関係につくしは目眩を堪えた。




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つくしもたいへん

こ茶子さん、こんにちは♪
「つくしと滋の将来の関係が垣間見れ、ホノボノしますねー。」ということではなくて、ここは笑うところでいいでしょうか?
滋と司の婚姻はビジネスで、婚姻期間も契約で決まっているようですね。
司が不倫できない状態なのも、契約に抵触するからですよね?
滋も頼れる相手がいることで、肩肘張らないでいられるのがいいのだとは思いますが、ビジネスでなくなれば、司が滋を好きにならない限り、遥香と同じことになり辛いだけなのにな。
職分を超えてしまった結果が、遥香や取締役副社長だったのにな。

つくしもたいへんですねー。(いえ、笑うところではないんですよ☆)

正に原作のように突然現れ、ゴリ押しで友達になっちゃいましたね(笑)
恐るべし滋パワー…。

不倫したくてもできない状態と言ったのは、契約に縛られてるというより、単にED継続中で女性を抱けない身体だからって意味合いかなぁと私は捉えました。
つくしは滋と司の仲を色々と誤解しているようですが、これも後々原作に則って、滋が引き際に種明かしするのでしょうかね。
つくしは滋に戸惑いこそすれ、嫉妬してる様子ではないので、つかつく復縁まで遠い道のりになりそうですね。
焦れ焦れしながら毎日の更新を楽しみにしています。

再コメントです

再コメントです^^
契約にはないようです。
474話に、「男漁りしたいなら止めねぇ」とありました。
いい加減ですみませんm(_)m

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