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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽③

愛してる、そばにいて0871

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 現在の司は既婚者だ。
 それが妻ではない女と抱き合っていたとなれば、スキャンルにもなり得るし、その相手にも迷惑がかかるのは必定。
 「よくもこんな撮り方ができたもんだな」
 けっして、自分はつくしを抱きしめてなどいなかったし、もちろん疚しいことなど何一つない。
 心の内を除けば、不倫などと言い立てられる筋合いではなかったが、それでも芋づる式につくしの過去―――彼の妻であった前歴までも明るみに出されることがあってはならないことだ。
 本当に彼女を守りたいのなら、けっして自分は近辺にど現れず、あくまでも人手に任せて、影から見守るに留めるべきだったのだ。
 …わかっていたのにな。
 たとえ、わずかな間でも一緒にいたい自分の欲望に抗えなかった。
 幾つになっても自分は、自分勝手でいることをやめられない。
 「削除依頼は?」
 「気がついた分に関してはすでに」
 「これだけじゃないってか?」
 「拡散されてしまってはお手上げですから」
 「芸能人でもあるいまいにご苦労なことだな」
 それでも、NYやロンドン、いくつかの主要都市に置いてきた影武者が動いている。
 あえて道明寺の主要商業圏の一つである日本で、彼が隠密行動に徹しないのも撹乱作戦の一つなのだ。
 特にハリウッドで、名前の売れた女優と練り歩く彼の方が遥かに話題性があるに違いなかったから、あまり心配する必要はないはずだった。
 「あまり不用意なことをされては」
 チラリと西田を振り返って、それでも特に反駁することなく、視線をスマートフォンに戻す。
 …ずいぶんもの欲しげじゃねぇか。
 抱き合ってるかのようなカットで撮影されている画像の他に、もう一枚アップに撮された自分の横顔を鼻で嗤う。
 実際にはしょせんスマホのズームに過ぎなかったから、それほど大きく撮されていたはずもなく表情もそんなにハッキリとわかるわけではなかったが、それでもその時の自分がどんな顔していたかなど、自分が一番よくわかっている。
 まるで、そう、―――乾いた砂が水を吸うように、彼女がすぐ傍にいる、ただそれだけ息を吹き返し、沸き立つ自分の血潮と心臓の音が、目の前に立つ女に気づかれてしまうのではないか、そんな風に不安になるほど自分は舞い上がっていた。
 生きて動き、彼へと話しかける彼女を感じられるだけで、満たされる心とは裏腹に、その手に触れたい、抱きしめたい。
 愛してると叫んしまいそうな自分を堪えるのに精一杯だったのだ。
 彼女の目の中に、再びいつ憎悪が溢れ出して、自分への怨嗟が噴き出すのかと恐れながらも。
 …お前がいた。
 たしかに、俺の目の前にお前はいたんだと、たしかな感動に打ち震えて、その喜びをそっと抱きしめる。
 たとえ、…再び彼女に復讐の刃を向けられ、今度こそ破滅へと導かれようとも。
 それでも、またお前に逢うことができたと。 
 ただそれだけで―――。
 「あいつのところにしばらく護衛を。それと、あの辺の治安の強化と変質者の取締りを警視総監に依頼してくれ」
 「はい」
 「あとは、戒の行方と動向だな。……あいつ、どこへ雲隠れしやがった?」




*****




 花木や病院の関係者の何人かには、戒の顔を見られてしまっている。
 戒自身は、日本のメディアに露出していなかったから、それほど日本での知名度は高くなかった。
 しかし、‘道明寺司’は違う。
 単体では似ていると気がつく人間がいなくても、間につくしを挟んで父子両方が揃ってしまえば、その関連性を疑われるのは必然で、この9年間ほとんど疑われることもなかったかつての『シンデレラガール』が彼女だとバレてしまうことも時間の問題のことかもしれなかった。
 …ていうか、すでに私と戒と親子だとバレてるし。
 こうなってしまうと、同僚の一人に言い当てられてしまった時に恍けることをせずに、認めてしまったことはやはり痛恨のミスだったのではなかったかと、プチ後悔する。
 あれやこれやと、根掘り葉掘り尋ねてくる花木を振り切って、這う這うの体で業務を終え、職場を脱出してきたつくしは、病院のエントランスのアプローチにデーンと鎮座している長大なリムジンに困惑していた。
 …も、もしかして、院長の来客とか?
 それならば裏の職員駐車場に停めているのでないだろうか。
 そんなことを思いつつ、それでも自分と無関係な方にかけて、知らん顔で通り過ぎようとして、
 ガチャッ、ガッ。
 「おわっ」
 いきなり開いたリムジンの後部座席のドアにあてられそうになって、大きく仰け反り後退った。
 「牧野さんよね!」 
 戒の現在の母、司の後妻の滋が飛び出してくる。
 「……道明寺さん」
 ニッコリ綺麗に笑って、いきなり彼女の両手を取った滋にブンブンと振り回される。
 戸惑う彼女へと、マシンガンのごとく矢継ぎ早に爆弾投下。
 「あなたって司の最初の奥さんでしょ!?そういえば、この間会った時にもどこかで見たことがあるなぁって思ったのよ!私もその頃まだ日本にいたから憶えているけど、たしか‘現代のシンデレラガール’とか言って持て囃されて、騒がれてたわよね、あなた!?」
 …あたたた。
 物見高く集まりだした人垣の中に、花木ら同僚の他にも、何人もの医師や看護師、その他病院関係者他、担当している患者の家族の顔を見つけ、つくしはクラリと目眩を覚えて項垂れた。
 「さ、乗って乗って!?司の前妻と、後妻で、妻々会談行っちゃおう!」
 ガックシ。




*****




 ジロジロジロジロ。ニコニコニコニコ。
 何が嬉しいのか、さっきから向かいに座って、紅茶を優雅に啜りながら滋は満面の笑顔だ。
 そのせいか、ガン見されていることはそれほど不快ではないのだが、それにしても。
 「あの?」
 ニコッ。
 「なに?」
 「……いえ」
 わざわざ用があるといって連れ出したのは滋の方なのだ。
 それなのに、この調子ではちっとも埒が明かない 。
 しかし、滋は滋なりに、この十数分間の面談の間に、自分なりの考えなり推測なりをマトメていたらしい。
 「そっかぁ、そういうことだったんだねぇ」
 「はあ?」
 唐突もいいところだが、よく考えてみればこの目の前の司の妻である女性は、つくしを待ち受けていた最初からすでに突拍子もなかったのだ。
 再びマジマジとつくしを見つめて、うんうん頷き、一人で勝手に何かを納得している。
 …まさか、戒のことで何か?
 司からは今のところ、訴える的なことは言われていなかったが、もしや彼の代わりに妻の方が出てきて苦情を言われてしまうのかもしれない。
 なんだかよくわからない汗が出てきて、落ち着くためにつくしも目の前の紅茶を一口口に含む。
 「もうてっきりこりゃ、司は真性のホモだとばかり思ってたけど、やっぱりそういうことじゃなかったってことよね?!」
 「ブ―――ッ!?」



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祈ります

こ茶子さん、こんばんは♪
あの日の司の気持はよくわかりましたが(涙)、UPされるような有名人の自覚があるなら気をつけなきゃ。

同じことは、滋にも言える?
やっぱ、有名人のリムジンは裏口でしょう!
ここでの滋の登場は、司が既婚者であることが ほどけるのか、からまるのか、ほどける方だといいと祈ります。
続きを待ちますね。

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