「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽③

愛してる、そばにいて0870

 ←愛してる、そばにいて0869 →愛してる、そばにいて0871
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 …そういえば、あいつと二人っきりでもあんがい平気だったな。
 もしかしたら、約10年前、高校生の時の自分に戻ってしまって時のような、司のあまりの変わりように彼だという実感が沸かなかっただけかも知れない。
 わずかに混じる白髪は彼の年齢にしては落ち着いた印象を与えてはいたけれど、それでも渋味を増した美貌は貫禄を持ち、彼の魅力になりこそすれ決してネガティヴな評価を他人に抱かせることはないだろう。
 だが…。
 真面目な顔でパソコン画面に見入るフリで、気が付けば先日の出来事を反芻してしまっている自分がいた。
 午後も、ちょうど昼食を終わり、一番眠い時間帯。
 さすがに仕事中のこと、突っ伏して眠るわけにはいかないが、ついつい画面を見ながら仕事とはまるで違う事柄へと思考が流れがちになってしまっていた。
 それでも忙しければ、そんな私事に意識を飛ばしているわけにもいかなかったのだろうが、ちょうど仕事の切れ間。
 思えば奇妙なことではある。
 彼女の男性恐怖症や嫌悪感の元々は司が原因なのであって、たとえ彼と愛し合って彼への嫌悪感や憎悪が拭われたにしても、彼女自身のそうした障害そのものはいまだ完治はしていなのだ。
 誰よりも司を恐れてもいいはずなのに、どういう意味での恐れが湧かないのは、いったいどういう心のメカニズムなのか。
 自分で自分のことがわからないということも珍しくない。
 わからないことを悩んでもしかたないと、あっさりと思い切る。
 今の彼女は、そうした思い切りができるようになっていた。
 こだわることが必ずしも解決には繋がらないことがわかっていたから。
 「はぁ~」
 彼女の他に室内に誰もいないことを良いことに、ついにはパソコン机の前に両腕を組み、その上に突っ伏す。
 「…もう一度くらい、戒の顔を見ておきたかったな」
 そんなことをボヤく。
 戒に会った最後。
 会ったと言っても、過呼吸の苦痛の中で意識が朦朧としていた彼女には、それが現実のことなのか酸欠のもたらす幻覚だったのか、ハッキリとしたことはわからない。
 けれど、戒は、あの時自分を母と呼んでくれていなかったか。
 ―――母さん。
 「まさかね」
 そんなはずもない。
 もし、戒が彼女の正体をわかっていたのなら、そう言ったはずだし、あるいはかつて彼を捨てて家を出てしまった彼女を恨んでいたのなら、おそらく彼女の家に入り浸るようなことをすることはなかっただろう。
 それでも思わずにはいられない。
 …私のこと、どう思ってるの?
 …もし、私があんたの実の母親だと知ったら、あんたはどう思うんだろう。
そんなことを何度も考えては、振り払うことをさっきから繰り返している。
 だが、そんなことを思う端から、
 …何の役にも立たない、迷惑なだけの母親なんて、あの子には必要ない。せっかく今のお義母さんともうまくいってるんだから。
と、自分を窘めて。
 戒の荒みの一端を口にした司の言葉が気にになりはする。
 けれど、名乗ることさえ許されていない彼女にはどうしてやることもできない。
 それに、おそらく戒はもうつくしの下へはやって来ないだろう予感があった。
 いや、それは予感ではなく、当然の推測だったか。
 司がきっともうそうすることを許さないだろうし、彼女の正体も戒に話してしまったに違いない。
 「はぁ~」
 さっきからつかずにはいられないため息を再びついて、起きようとした彼女の眼前に、スマートフォンが翳される。
 スマホからそのスマホを持つ手を辿って、辿った先に見知った女の悪戯っぽい顔に出くわした。
 「花ちゃん」
 「ため息をつくと、ため息の数だけ幸せが逃げてくって知ってる?」
 もちろん、知っているに決まっている。
 が、
 「……これって何?」
 「え?」
 怪訝に翳されたスマホの画面に視線を落とす。
 「あや、うっかりブラウザ、落としちゃってたか。ちょっと待ってね」
 パパパパッと素早く画面を叩いて、再び差し出された携帯の画面を覗き込む。
 途端、
 「え?これ」
 「もしかして、牧ちゃんじゃないの、これ?まさかとは思ったけど、でも絶対そうだよね?牧ちゃんちっぽいし。いやあ、しっかし、牧ちゃんも隅に置けないわ。有名人との深夜のデート?!」
 そこに写っていたのは、自宅の前、長身の男と並んで立つ自分の姿だった。




*****




 「……撮られていたか」
 西田に指定されたURLに掲載された画面に、司は顔を顰めた。
 『有名人発見!深夜のデート。もしかして、あの道明寺司?!』
 そんな見出しのタイトルは、どこかの雑誌社や新聞の記事などではなく、素人記者による投稿ニュース。
 今や、誰もがスマホ片手ににわかパパラッチになり得る時代だ。
 おそらくつくしの近所の人間か、何度かすれ違った通行人の誰かによって撮られ、UPされたものだろう。
 フラッシュには気がつかなかったが、たしかフラッシュを炊かずとも、夜間でもそれなりの明るさを保って撮影することができるアプリもあるはずだ。
 道明寺財閥の権威を持ってすれば、マスコミ各社の記事を差し止めることは可能だ。
 しかし、こうしたものは枚挙がなく、チェックすることすら困難だった。
 …気をつけているつもりだったが。
 「ツイッターの方では、メイプルのバーで西門氏とご一緒のところに出くわした、という人物がツィートしていて、それなりに話題になっているようです」
 「ふ、ツイッターね。どうせ、NYやロンドンでも目撃されてるんだろ?」



◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ




web拍手 by FC2



関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0869】へ
  • 【愛してる、そばにいて0871】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

こんばんは

こ茶子さん、こんばんは♪
つくしが倒れた日は、雨は降らなかったんですね。

これは・・・
戒が知る?怒りと絶望ですよねー。
類も知る?今度は類が司に怒鳴り込んでやればいい!!
続きを待ちますね。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0869】へ
  • 【愛してる、そばにいて0871】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク