「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽③

愛してる、そばにいて0868

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 落ち着いているようだし、特に問題もない。
 それならば帰宅も可能だという医師の言葉に、つくしは帰宅を選んだ。
 とはいえ、時間が時間だ。
 公共の交通機関もほとんどが最終を終えていたから、タクシーを呼ぶつもりだったのに、なぜか今、つくしは司と道明寺家のリムジンに同乗していた。
 気まずい。
 戒にほとんど10年ぶりに再会し、再会以来初めて二人っきりで食事をした時の比ではなかった。
 …ど、どうしてこんなことに。
 なにをどうなってこういうことになったのか。
 自分が病院にいた事情は司から聞いている。
 彼女自身の記憶と照らし合わせても、ほとんど差異はなかったから、そのとおりなのだろう。
 しかし、今はそんなことではなく、この状況にこそつくしは困惑していた。
 とにかく、
 …え~、話題、話題。
 つくしが搬送された病院は、彼女が勤めている病院ではなかったけれど、それでも自宅までは車では目と鼻の先だ。
 そんなに長い間の辛抱ではないとはいえ、こうして向かいあってただ無言でいるのが辛すぎる。
 「いつから…」
 「えっ!?」
 いきなり司から声をかけられ、思わず飛び上がってしまった。
 車に連れてこられて、数分、司は無言のまま窓の外を眺めてソッポを向いてしまっていたら、よもや話しかけられるとは思っていなかったのだ。
 話題を探していたわりには、いざ声をかけられるとびっくりして、過剰な反応をしてしまい、バツが悪い。
 司の方は相変わらず冷たい顔で、無感動に彼女を見返していただけだったけれど。
 病室に詰めていた司とはあまりに違う顔。
 司は病室を出てから、この表情とあくまでも冷ややかな態度を崩していなかった。
 彼女が目を覚ました瞬間の、まるで愛し愛されていた過去が彷彿としたような甘く優しかった顔や眼差しは、彼女の目の錯覚だったかのように。
 …そりゃそうでしょ、私ったらまったく何考えてるのよ。あたりまえじゃないの。
 歪んでしまいそうな顔をうつむき加減に隠して、小さく唇を噛み締め、だが、なんとか動揺を隠して取り繕う。
 彼女の反応を窺っているように見える司へとあらためて向き直って、つくしはなんとか小さな笑みに唇のカタチを変え、質問の意味を聞き返した。
 それでもなんとか、不自然な敬語は改善している。
 …どんなふうに喋ればいいのかなんて、やっぱり全然まだわからないんだけどね。
 「いつからって、ここにいつから住んでるのか、ってこと?…それとも、戒と関わっているのか、そっちなのかしら?」
 「ああ。……どっちもだ」
 司が調べていないはずがない。
 そうでなければ、分刻みのスケジュールで追い立てられるようにして激務をこなす彼がこんなところへやってくるはずもなかった。
 …そういえば、なんでこの人ここにいるんだろ。
 つくしのもとへやってきたこともそうだが、彼が日本にいることなど誰も行ってはいなかった。
 それはともかく、尋ねられたことを答えなければ。
 「東京からこっちに引っ越してきたのは、え~彼此4ヶ月くらいになる…かな」
 当初、半年の予定で借用していたから、本来ならソロソロ新居を探さなければならないのだが、海外出張中の家主の事情が変わって、あるいは一年、もしかしたらそれ以上のことになれば、せっかく購入した家だが、手放すかも知れないという話も出ていた。
 とりあえずは、一年に延長の約束で借りていて、その後はつくしにしてみても意識が変わってきていたから、そのまま今の家に住み続けるつもりはなく、あるいはもし売りに出すつもりならそのまま市場価格で譲り受けてもいいと思っている。
 …ま、先々の話だし。
 お金も絡み、親族同士のやりとりはトラブルも多いと聞くので今のところ、思いつきに過ぎない段階だったが。
 そんなことまで説明する必要はないので、サラリと流して、もう一つの質問も答えてしまう。
 ―――こちらが本題だ。
 「戒とは…2か月前に、再会したの。友人とお店で飲んでいて、帰りのタクシーを待ってる時に、本当に偶然だったのだけれど、……あなたも承知していたことなんじゃない?」
 「…ああ」
 あっさり肯定され、探りを入れるつもりかと眉根を寄せたところで、当の本人から否定される。
 「戒が世話になってる先の家の人間が、そうやって偶然に出会った相手で、総二郎の知人であることは、俺もあらかじめ承知していた。だが、それがお前だと知ったのは、つい1週間にもならない最近のことだ」
 「そうなの?」
 「さすがに中学生の戒をまるっきり野放しにするわけにもいかねぇからな。氏素性のハッキリしない輩のところに入り浸っているというのなら、それなりの調査もするが、総二郎が身元やひととなりは保証してたから、それを信用してた」
 「ああ、なるほどね。西門さん」
 総二郎が自分のことを保証してくれていたというのは意外だったが、しかしたしかに、司の親友であり、日本伝統の後継者である西門家の次期家元が保証人とあれば、誰であっても信用せざるえないことだろう。
 だが、
 …司との約束がある。
 正直、いつ司の口からそのことが話題として出され、なじられることかと戦々恐々としていた。
 あの時には戦わなかった。
 戦ったとしても勝てたとも思えないが、それでも精一杯戒と…自分の為に、せめて面会権くらいは勝ち取る気概で向き合うべきだったと、今ではわかっている。
 …後悔したってしょうがない。
 過去の非を認められたのなら、前進しなければ。
 「あの……」
 「戒が…」 
 司とつくしの口が同時に開いて言葉が重なった。 
 顔を見合わせ、目と目で話合って、
 「お先に、どうぞ」
 つくしが、司に先を譲る。
 なにを言われるにしても、まずは司の彼女に対するスタンスを探らなければ始まらない。
 9年前はただひたすら彼女を戒にとっても迷惑だと言い切った司だったが、それは現在もなのか、それとも。
 …たとえ、迷惑だ。もう二度と会わないでくれと言われてしまうにしても。
 たとえ這い蹲ってでも、もし戒が望んでくれたならば、彼に会う許可を保護者である司からもらいたかった。
 「その節は、本当に戒が世話になった。その後も、何かと厄介になってると聞いている。…あらためて、ありがとう。感謝している」
 

 
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こんにちは

こ茶子さん、こんにちは♪
二人のやさしい静かな時間に歳月を感じると共に、今も変わらない思いが伝わってきて胸が痛く痛くなってきます。
司やー、間違わないでゆっくり進んでねー。 見守ってるよー。
つくしと戒の再会が2か月前。司がつくしのこと知ってまだ1週間にもならない。そうだったんだ。
>過去の非を認められたのなら、前進しなければ。
今までのつくしの後悔。今までの司の後悔。もう2度と、それだけはしないでほしいです。

主導権(?)は3人のどこにあるんだろう、などと考えたりもしてます。

もどかしい…。

こ茶子さま、こんにちは。
毎日、こんなに面白い話をありがとうございます。

最近、毎朝5時に起き、
朝ごはんを作りながら更新を心待ちにしています笑


どうなるのか気になり過ぎて
もどかしさに悶絶している日々です笑

素直に思いを伝えるだけなのに
それが1番難しく…せつなく、
読んでいてもどかしいです笑
ゆえに面白いのですが、原作も
もどかしかったなと思い出しました笑

寒さに気をつけて頑張って下さいね!
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