「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽③

愛してる、そばにいて0865

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 ポトン、ポトン、ポトン―――。
 規則正しい点滴の雫の落ちる音が、妙に響き、時間の間隔を失ってしまっている司の意識をなんとか留めていた。
 ーーーいつかもこうして青白い顔色をした彼女の顔を眺め、自分の無力と………罪に打ちさがれていた憶えがある。
 …あれは。
 つくしが記憶を失う原因となった階段からの転落の直後、つくしが彷徨っていた生死の境から生還を果たした時のことだったか、あるいは?
 現実のはずなのに、今この場に‘彼女’がいることが信じられずに、いつも自分が見ている夢の続きなのではないかとすら疑ってしまう。
 「おい、ずっといるつもりなら、そんなところにつっ立っていないで、そこの椅子でも引っ張り出して座れよ」
 ため息混じりに総二郎が、壁際に立てかけてあった簡易椅子を引っ張り出し、司の前へと置く。
 腕を掴まれ、座れと促してくるのを許容して、総二郎が用意した椅子へと腰を下ろす。
 「お前、まだ帰ってなかったのかよ」
 「………その言い草。まったく親子揃って」
 ブツブツとボヤキ、それでも元々司がそういう性格なのは総二郎にしても承知のことだったから、さっさと諦めて、肩を竦めるに留める。
 「言われなくても、もう退散させてもらうさ。お前は残るつもりか?」
 「…ああ」
 「ふぅん。じゃ、こいつの家族への連絡ってやつも、お前に頼むか。俺だって、せいぜい兄貴の嫁の連絡先知ってるくらいだし、兄嫁通じて家族へ一報入れさせるくらいなら、こいつの目が覚めるのを待った方がよっぽど早い話だからな」
 ようは総二郎の方も戒と大して変わらない立場だったということだ。
 けれど、戒とは違ってそれなりに連絡のつける手段が多く、話も早かったというだけで、おそらく彼がダメでも戒なりになんとかしようと思えばできたことだろう。
 「戒は?」
 「帰ったぜ。お前と違ってずいぶんクールというか、母親が倒れたっていうのに、薄情な奴だな」
 司が、チラリと総二郎へと視線を向ける。
 それだけで、総二郎も司の意を解して、
 「知ってるだろ?つうか、元々わかってたんじゃねぇの?お前がここに来てる理由にもそう驚いてはいなかったしな」
 わからないはずがない。
 わかってて空っと呆けていた、つくしと同じように。
 しかし、いったいどうやって知ったのか。
 戒は母親を憶えていたのだろうか?
 唯一の縁の写真さえ置き棄てたというのに。
 …一番ありえるのは、こいつが自分で名乗ったってことだが。
 あるいはやはり調べていたのか?
 かつて慕い焦がれて、やがては諦めていたようだった母親を。
 この目の前の女を。
 目を閉じて眠り続ける、愛しい女の青白い顔をジッと見る。
 写真ですでに見知っていた。
 目に焼き付くくらいに何度も眺めたというのに、実物のこのインパクトの強烈さはどうだ。
 写真と現実の彼女ではまるで違う。
 これほどに現実の彼女は美しく、眩しかったのか。
 あらためて思い知らさせる。
 1日たりとも彼女を忘れてはいなかった、諦めてなどいなかったのだと。
 「ま、…後のことはお前たちでじっくりと話し合え。お前と牧野の現在の関係はともかくとして、戒を間に挟んでるんだ。お互いまるっきり無関係だと無視し合ってるわけにもいかねぇだろ」
 もっともな忠告を残し、総二郎も立ち去ってゆく。
 ―――二人っきりだ。
 何時間でも飽きない。
 司は今この瞬間が少しでも長く引き伸ばされることを心のウチで祈った。
 …祈る?この俺が。
 しかし、そんな愚かな世迷いごとをしてでも、そうしていたいと願う自分の健気さをおかしいと自嘲した。
 震える指先を彼女の顔に伸ばし、だが、触れることができずにグッと握り締めて引き戻し、彼女の顔から顔を背ける。
 けれど、すぐにまた彼女を見つめずにはいられなかった。
 …お前は本当に変わらねぇな。
 小作りで若く見える顔立ち。
 ほっそりとした手足や年齢を感じさせない華奢な肢体。
 今は青白いまぶたに隠れてしまっている大きな目も。
 カタチのいい小さな鼻や愛らしい唇もすべて。
 …いや、やっぱり変わったか。
 さらに輝きを増し、より美しく眩しい女となって、一目実物の彼女を見ただけで、ますます彼を魅了した。
 どんな些細な変化さえも彼女の魅力を引き立てこそすれ、司にネガティブな感情など欠片とも抱かせはしない。
 まるで何一つ悩みなどなく、ただ眠っているかのような安らかな顔。
 「髪、切ったんだな」、
 …お前の目が見たい。
 愛しくて、恋しくて。
 起きて自分を映すその生き生きとした美しい輝きを持った目が見たいという真逆の欲望に苛まれてしまう。
 彼女が目を覚ましてしまえば、この幸せな時間は失われてしまうことはわかりきっていることだというのに。
 …つくし。
 つくし。
 目を覚ましてくれ。
 そして、俺を見てくれ。
 遥か遠い記憶の彼方、いつかのように狂おしく願う。
 その目でもう一度だけでも…。
 願う司の声が聞こえたかのように、眠るつくしの瞼が小さく震えた。
 「……ぁ」
 わずかに開いた唇から吐息ともつかぬ声が溢れて…、まるでイヤイヤをするかのように小さく頭を左右に揺らして、ゆっくりと瞼を開く。
 眩しさにかギュッと再び瞑って、片目だを眇めて、傍らに座る彼を透かし見る。
 「だ…れ?」
 まだ意識が混濁しているのか、彼を彼だと認識できていないらしい、つくしが不審げに彼へと尋ねかける。
 ドクリドクリと心臓が激しく鼓動打つ。
 それでも彼女の視界に再び移る誘惑を振り払えはしない。
 「誰?戒?」
 今度はハッキリした声音での問いかけに、司がゆっくりと答えた。
 「俺だ」
 「え?」
 つくしの目が徐々に光を取り戻し、彼の言葉の意味が浸透して、大きく目を見開き司を唖然と仰ぎ見る。
 「つ…かさ?」
 「ああ、久しぶりだな」
 驚愕するつくしへと、司が微笑む。
 それは、あの日―――道明寺邸で二人が対峙した日より、実に9年ぶりの再会だった。



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NoTitle

再会したあああああああ!!!!
うあああああああああ~ん
早く明日の朝になれ~゚+。:.゚(*゚Д゚*)゚.:。+゚
  • #14287 切り山椒(kirizansyo) 
  • URL 
  • 2018.02/19 07:58 
  •  ▲EntryTop 

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会えてよかった

毎日の更新を楽しみにしています。
司くん、つくしに会えましたね。つくしも司を受け入れてほしい。

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NoTitle

キャー キャーキャー
うあーあーあーやっと会えた!会えただけだけど、胸キュンです。
毎朝楽しみです。長かった9年!ラブラブになって欲しいなぁ。

NoTitle

こ茶子さん、おはようございます♪
再会しましたね(涙)
杏樹登場の頃からの読者の私ですら歓喜なのですから、‘愛してる、そばにいて’の長い読者の方たちの喜びはどんなものなのか、想像もつきません。
もう大丈夫ですよね☆ 司が諦めてなどいないんですから☆☆

ついに!ついに!!

やっと…逢えた!!

明日の朝が待ちきれません。
私、長らく健康診断を受けていなかったのですが
予約しました!だってこの物語を最後まで読みたいから!!

毎朝が楽しみです!

こ茶子さま!お体には気を付けてくださいね!!

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NoTitle

つくしが目を覚ます前に司は退散すんじゃないかと思ったりしましたが、無事?ご対面に感無量な感じ♡
長かったです~~;;
明日はどんな展開になるのか、もう毎朝ワクワクです
司の心の動きが何とも切なくて・・・あー何回も読んでしまう(笑)
あと、戒~どうなるんだ。。。
皆さんのコメントを読むのも楽しいです(#^.^#)
それぞれ感じ方も色々だと思いますが、こ茶子さんの作品がみんなに愛されてるのがよくわかります
朝の早い時間なのにカウントがどんどん増えていってます~☆

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