「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽③

愛してる、そばにいて0864

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 カツカツカツカツカツカツカツ。
 革靴の音高く、司と総二郎がその病院に到着したのは、すでに23時も大きく回り、それこそ午前様の時間帯へと突入しようという時間帯だった。
 病院の救急窓口へと回り込み、探すより前、受付のすぐそばの待合に目的の人物が俯き加減に座っている。
 真夜中のこと。
 それほど待合に人がいたわけではなかったが、それでも二人が入ってきたことで微妙に空気が変わったのだろう。
 二人が声をかけるまでもなく戒が顔を上げ、総二郎を見やり、その後ろの司の顔を認め、驚きにわずかに目を見張るのが見えた。
 司の帰国はごく極秘だったとはいえ、もちろん戒にも知らされていたが、それでもまさか自分が連絡をとった総二郎と一緒にやってくるとは思っていなかったのだろう。
 たとえ総二郎が司の親友だったにしても。
 「あいつは?」
 「眠ってる。……夜道で男につけられた恐怖でパニック起こして、過呼吸になったらしい。とりあえずどこか怪我をしたり、重篤な状態ってわけでもないけど、まだ興奮状態が収まらなくって、一度目が覚めたけどヤバそうだからって、医者が薬を処方してくれて今眠ってる。場合によっては、一晩泊まってもいいって」
 「…そうか」
 質問を挟むよりも、戒に説明させることを優先させて、総二郎が言葉少なく頷く。
 司の方はまるで影の男であるかのように、黙りこくったまま、一言も言葉を発することなく、ただ彼らの会話に耳を傾けていた。
 その表情は、戒のよく知る冷たく怜悧なものだったが、それでもふと流した視線の先、司が手を握ったり開いたりを繰り返しているのに気がついた。
 …動揺している?
 その手をマジマジと観察する戒の視線を嫌ってだろう。
 司が戒の視線の先を辿り自分の拳を見下ろして、スッと腕を上げて、胸のところで組んでしまう。
 戒もそんな父から興味を失ったかのように、総二郎へと視線を戻した。
 今この場でもっとも冷静で、なおかつそんな親子の心の動きを正確に察していたのは、総二郎だったに違いない。
 わずかに眉根を潜めた総二郎が怪訝に戒の頬を注視する。
 「お前、どうしたよ、それ?」
 総二郎の視線が撫でた辺りを指先で触れ、すでに乾いて瘡蓋になりかけザラついた感触に、パニックになったつくしに爪で抉られた傷痕だと思い当たって一つ頷く。
 「ああ、なんでもない」
 「乱闘にでもなったのか?」
 「いや、ちょっと。……それより、マキ……あの人の家族に連絡をとろうと思ったけど、俺連絡先知らないからさ」
 言葉を濁した戒の顔を束の間ジッと見つめ、だが彼が詳しく説明する気がないのを察して総二郎も、あっさりと追求を辞め、同意する。
 「そうだな」
 もっともな言い分だろう。
 つくしは自分が戒の母親であることを隠していたのだから。
 そうであれば、戒が知るつくしに繋がる唯一の人間といえば、総二郎だけだった。
 「……あいつをつけてた男というのは、何者だ?」
 ここへ来て司が始めて口を開いた。
 その声音は堅く、かつてわが子へと向けた慈愛に満ちた優しい声音とはまるで違っていまっている。
 「さあ?俺が知るはずもない」
 応じる戒の声音もどこまでも平坦で冷たく、自分の父親へ向けるものだとは誰も思えなかっただろう。
 その容姿の酷似性とは裏腹に。
 誰が見ても親子以外の何者でもない二人だというのに、交わす会話や態度はどこまでも他人行儀で冷たく凍えていた。
 それがいまの、彼ら親子の関係だ。
 …まったく似たもの親子ってヤツだな。
 かつて総二郎は同じ光景を何度も見ていた。
 若き日、彼の前で対峙していたのは司と、その母親だったけれど。
 「変質者なんだかどうだか知らないけど、俺の姿を見て逃げ出したから、しょせん小物だろ」
 「警察へは?」
 「一応は後で届けは出した方がいいんじゃないの?」
 それが答えのようだ。
 だが、倒れたつくしに付き添って救急車でこの病院まで来た戒には、他のことにまで手を回す余裕はなかったのだろう。
 ましてや、その変質者が危害を加えたというのならともかく、どうやらそれはきっかけで、実際には彼女自身が持つ病が彼女へと牙を剥き、打ち倒してしまったのに過ぎない。
 おそらくその原因だろう男を、総二郎が見やる。
 眉根を寄せ、なにか考えているようではあったが、その表情には特に何の感情も浮かんではいない。
 だが、元々司はそういう人間だった。
 激昂しやすく感情にストレートなようでいて、彼の場合、喜怒哀楽の怒の部分だけが突出していただけで、プライドが高く、警戒心が強い男だったから他の感情を他人に見せることはめったになかったのだ。
 たぶんその全てをかつて知っていただろう戒もまた、その父親と同様、他人に喜怒哀楽を見せない少年へと成長してしまっている。
 「まあ、どっちみち、あの辺は元々変質者が多発する場所だったらしいし、こっちも暗闇で相手の顔がわかったわけじゃないから、せいぜいまた注意喚起する程度のことしかできないと思うけど」
 「そうか。で、牧野はどこにいるんだ?」
 「こっち」
 スラックスのポケットに手を突っ込んだまま、戒が顎をシャクって総二郎だけを見て、案内に立つ。
 その後ろを総二郎と司が追いかけ、戒が大きな一枚ドアの前に立ち、向こう側へ行けと差し招いた。
 「あっちの一番奥のブース。真夜中で急に病室を用意したりできないから、とりあえずあそこのベッドで一晩過ごしてくれって、寝かされてる」
 総二郎が足を踏み出す前に、彼を押しのけるようにして司が先に行ってしまっている。
 その後を追おうとして、戒が踵を返そうとしているのに総二郎が気がついた。
 「お前は行かないのか?」
 「もう、俺の役目は終わりだから。俺はあんたが来るのを待ってただけ。…マキさんの家族には連絡してくれてるんだろ?」
 「いや、時間が時間だからな」
 総二郎の苦しい言い訳に、戒が鼻で嗤う。
 「ふっ、家族に急を知らせるのに時間を気にして、赤の他人のあいつをここへ連れてきたわけ?」
 「……………」
 黙り込んでしまった総二郎にそれ以上構うことなく、今度こそ戒は踵を返してその場を立ち去ってゆく。
 「お前、本当は知ってたんじゃねぇの?」
 「……………」
 「お前の生い立ちや事情は、同情してやれなくもねぇが、……いつまでもガキじゃねぇ。暴れるだけ暴れて、気が済むまで反発したら、親の事情ってヤツも少しは省みてやれ。親だって間違うこともあれば、迷うことだってある一人の人間なんだ」
 戒は振り向かない。
 けれど、総二郎の言葉は聞こえていた。
 病院を出て、そこで初めて立ち止まって、背後を振り返る。
 「だからなんだって言うんだ?俺が理解したからって、あいつの何が変わるって言うんだ。あの人の何が変わる?」
 司が自分の間違いを認め迷うような男なら、つくしはきっとああはなりはしなかっただろう。
 夜の闇を引き裂く女の悲鳴が戒の脳裏に蘇る。
 『いやぁ、やめて、道明寺っ!!』
 ―――あたしがどれだけ怖くて痛かったか、あんたにわかる?苦しくて、怖くて、辛くて…。あいつにとって、あたしなんて人間じゃないのよ。あたしを殴って痛めつける男なんて大っ嫌い!
 少女の怨嗟の声がどこまでも戒を追いかけてきて、つくしの叫びと重なった。



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~ Comment ~

司はつくしを殴ってない

「あたしを殴って痛めつける男なんて大っ嫌い!」

司自身がつくしに1度だって“殴って痛めつける”ことはありましたっけ?
たしかに監禁レイプはしましたが…。誰かと記憶が混合してるのだろうか?
高校生の頃の赤札で殴られたというのであれば、
それって司の自称舎弟とかいう奴らがしたのでは?

だいたい、レイプにしてもつくし自身も遙香、桜子、楓と結託して
司に薬物を飲ませ、遙香がするレイプ&計画妊娠の共犯でもある。
仕返しした時点でつくしを完全擁護するつもりは無いかな。
もし桜子から渡された薬物が毒薬ならつくしは殺人にもなりかねなかった。

つくしだけ悪夢に悩まされる被害者という書き方が何度も出てきますが、
むしろ、仕返しされても元妻が行った罪もすべて背負い、
夫の不貞だと世間で見られ、そのことで一時期株も下がり、
不本意な妊娠にも受け入れ、惚れてる妻であるつくしは記憶を失くしてから酷い言葉を投げつけられ離婚、好きでもない女と結婚させられ、親友にまで裏切りったのは司の方だと数十年間も思われ続け、さらには親友につくしを寝取られた。
正直いって司の方に同情してしまう。
それら全て含めて「因果応報」でまとめられるとなると不憫でならない。
しかし司が未だにつくしを想い続けるのは未練たらしい男だなとも感じます。
類と恋人同士になって同棲までして何度もセックスした女でも愛せるなんて
真性のドM男でしかないが、ここが原作の道明寺司とは全く逆な設定ですね。
原作の司だと、類と浜辺で抱き合ってキスしてるだけで、また椿の計らいで類と同室で一泊というだけで牧野が好きな気持ちにケジメをつける男気がありましたから。でもこの物語では、こ茶子さんが司をドM男で書きたいと以前告知してたこともあって、それだけは「どこがカッコイイ男」のか
同姓として未だに理解できません^^;
この物語で司の登場はほとんど出てきませんが、最終あたり?大活躍に期待したいところですね。マジでハードル高そう・・・こ茶子さんファイトっ!!

ジーナのことかと

初めまして。
花より男子はアニメから入り、原作を後から読みました。こちらのブログはパスワードが外れたころからおじゃましています。
戒が少女と表現する場合は、ジーナのことだと思っています。645前後の描写をここでは重ねていらっしゃるのではないかと思いますがどうでしょう。
264での総二郎たちとの会話も思い出しつつ、二人だけではなく戒が入ることから、終わり方が大変だろうなと心配しつつ、読ませていただいています。

そういえば

ずっと気になってたことなのですが、

飲ませた薬物の効果が下がり、司の意識がはっきり取り戻したとき
自分が抱いていたのは妻であるつくしではなく
遙香に入れ替わってることにショックで呆然としてる中、
つくしに「ざまあみろ!」と罵られたときの
愛する者に裏切られた司の青ざめる表情や狂ったような笑いで
部屋から力無く出て行った後姿などを
つくし自身も司を傷つけたことにたいして
1度もそのときの司を悪夢で見ないのが不思議でなりません。
それに全く触れていないのは、後の展開で語られるのだろうか。

個人的には、司のED回復も気になる(心の声)
「責任とれよ元気復活」番外編か!?なーんてね(笑)

気になる

こ茶子さん、こんにちは♪
ここからの戒には、言葉しかないのかなと思っていますが…
これからも戒はつくしの元に行くのかな?
戒が会おうとしなくてもつくしが会いますよね。司もそれを止めないと思うし。
司もこれから戒に語らないとダメですよね。何をどう語るのか楽しみです☆

この日、雨が降るのかどうかが気になって仕方ない(笑)

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肝心なことを忘れてました

再コメントです^^
ついにつくし(眠ってる?)と再会ですね❤
司うれしいだろうな♪
総二郎が見届けてくれるんですね!
総二郎いつまでいるんだろ?司と二人きりにされてもつくしも困りますよね?
あー楽しみです★

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大大ファンです。

初めまして。去年頃から再花より男子にはまりはじめました。
漫画、アニメが好きで、ドラマは..ですが、韓国ヴァージョンが好きです♥️
今は、毎朝6時の更新が待ち遠しいぐらいです。
司の痛いぐらいのつくしを、思う気持ち。つくしの、隠しての司を思う気持ち。痛くて涙が出る表現が、同じ二次小説を書いてる私にとって、 すごいっ!と、尊敬してます! 完結を1人で妄想してるぐらいです 笑っ
うぅ、この完結すごく気になります!
司つく、ラブです!

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