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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽③

愛してる、そばにいて0861

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 それが総二郎なりの幼馴染みへの友情であることは司にもわかっている。
 …名前のない関係は余計だけどな。
 ズバリと言い当てた言葉に、司の顔にもホロ苦い苦笑が浮かぶ。
 「しかし、お前も因果なヤツだよな」
 「……………」
 黙って総二郎の言葉の先を待つ司へと、同情とも憐れみともつかない複雑な顔を向ける。
 「類のヤツが牧野と婚約してる時には絶縁しなくて、ヤツがあいつの手を離したら縁を切るのかよ?普通逆だろうが?どんだけなんだよ」
 「ふっ」
 司にも総二郎の言いたいことはわかる。
 「類にも言われたな」
 「だろうな。健気っつーか、誰も信じねぇだろうな、そんなお前は」
 司が無言で酒を煽る。
 すでに一瞬の激情は遠く消え去り、いつものようにシンとした冷たい虚無が心を覆い出していた。
 苦い酒だ。
 いや、美味いと思ったことなどなかった。
 ただ飲まずにいられなかっただけのことで。
 「さっきお前、昔のお前じゃ…あいつを笑わせてやれねぇ、幸せにしてやれねぇから手放したんだと、じゃあ今なら、今のお前ならどうなんだよ?司」
 総二郎の問いかけに、司が緩く首を横に振る。
 「バカか」
 「はぁ?」
 「覆水盆に返らず…もう、そんなことがわからねぇ俺じゃねぇよ」
 脳裏に蘇る一つの姿がある。
 戒とつくしのことを調べさせた調査書に同封されていた一枚の写真。
 つくしと並んで微笑む戒の姿が、かつての―――自分の姿と二重写しに見えた。
 誰に会わせても自分と瓜二つだと言われる息子。
 だが、彼は戒をつくしに重ね、自身との相似性よりも彼女との相似性を愛でていた。
 けれど、その写真に写っていた二人の姿は、司をあらためて打ちのめした。
 もしかしたら、あったかもしれない司とつくしの別の未来。
 今尚笑い合い、…真実彼女に愛されいた現在があったのかもしれないのだと。
 …バカじゃねぇの。
 総二郎へと言い放った言葉は、自分への言葉だったのだ。
 過ぎたことを連綿と悔いたとしてもけっして取り戻すことはできない。
 過去に戻ることなどできはしないのだから。
 「…もう終わっちまったことだ」
 力ない司の顔を、総二郎がマジマジと見る。
 奇妙なくらいに生真面目な表情で…。
 だが、やがてはいつものように飄々とした顔で肩を竦め、妙に深刻になってしまった空気を嫌い、総二郎が口調を明るく変えた。
 「ふん、らしくねぇな。弱気な道明寺司なんてよ。それこそお前の方がバカなんじゃねぇの?」
 「抜かせ」
 司も総二郎に合わせて、口調を変える。
 たしかに弱々しい道明寺司などらしくないし、あってはならない話だった。
 「司」
 「ああ?」
 「人間生きている限り、本当に取り返しのつかないことなんか、そうそうないと思うぜ?」
 ジッと見返す司に今度は邪気なく破顔して、総二郎が酒瓶を手に司へと酒を勧める。
 「さ、お前ももっと飲めよ。久しぶりだろ。付き合いの悪いお前のことだ。また次会うとなったら、どうせまた数年後、とかいうことなるんだろうしよ」
 「………ああ」




*****




 「ね、本当に車が来るまでウチで待っていないの?」
 最初から彼女を家に送って、戒がそのまま屋敷に戻るつもりであることなどわかっていたことなのに、ついつくしはそう言わずにいられなかった。
 「特になんか荷物があるわけでもないし」
 いつものようにソゾロ歩きしながら、送迎の車を待つということらしい。
 「だったら、現地解散で、わざわざウチまで送ってなんかくれなくてもよかったじゃない」
 「いくらオバさんにしても、夜道を女の一人歩きなんてさせられないだろ?」
 「こら!」 
 それこそいくら本当のことでも、なんて言い草だと手を振り上げたつくしに、何食わぬ顔を保っていた戒もぶっと噴き出した。
 どうやら、彼にしては珍しい冗談だったようで、
 「はは、いつも自分をオバさん呼ばわりしてるのに、…あんたでも人に言われるのはイヤなんだ?」
そんなことを言われてしまう。
 冗談以上に珍しい彼の明るく楽しそうで、邪気のない笑顔に見惚れて、だが、すぐにゴホンと咳払いをして誤魔化した。
 それこそまた戒に指摘されてしまうだろう。
 …自分の息子にうっとりしてるとか、どんだけよ。 
 けれど、息子を持つ母であればおそらく共感してくれるだろう感慨が擽ったく、幸せな気持ちに満たされる。
 「じゃあ、…俺、帰るよ」
 「うん」
 楽しかった気持ちが一瞬で、切なさに変わってしまう。
 まるで彼女の顔を見収めるかのようにジッと見る戒の視線に耐え切れず、つくしは涙ぐんでしまいそうな顔を俯け目を瞬かせ涙を堪えた。
 そしてなんとか微笑みのカタチにすることに成功した顔をあげ、別れの挨拶に答える。
 「元気で」
 「……うん」
 頷き、戒は小さく笑んだだけで、名残を惜しむでもなくあっさりと彼女に背を向け今来たばかりの道を戻ってゆく。
 …戒が行っちゃう。
 まるで祭りのように、彼が傍にいてくれた期間はあまりに短くて…。
 それがひどく寂しくて…悲しくて、
 …呼び止めたりなんかしちゃダメ。
 わかっているのに、それでももう一度だけ彼の顔が見たいという誘惑に勝てずに、呼び止めてしまう。
 「か、戒っ…くん!」
 戒が振り返って首を傾げているが、言うべき何かも言いたい言葉もあったわけではなかったつくしは言葉に詰まってしまって、結局意味もないありふれた言葉を繰り返すことしかできなかった。
 「き、気をつけてね」
 いぶがしげに首を傾げ、それでも何度か小さく頷き戒が再び踵を返す。
 そんな彼をもはや黙って見送るしかないつくしに、戒が何かに気がついたようにピタリと立ち止まり、少しだけ彼女を振り返った。
 「ああ、そういえばさ?」
 「え?な、なに?」
 「もう、戒でいいんじゃない?」
 「へ?」
 「あんた俺のことを基本くん付けで呼んでるけどさ。時々呼び捨てに呼んでるだろ?」 「あ、ああ」
 気をつけているつもりだった。
 けれど、ついそうしてしまうことがあって、自分でも気がついていたことを戒に指摘され慌ててしまう。
 「ごめん」
 謝るつくしへと首を振る。
 「だから、もうくんづけなんてしなくていい。戒でいいよ」
 手をヒラヒラとさせ再び歩き出した戒はもう、今度こそ振り返ってくれることはなかった。



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愛の深さ

こ茶子さん、こんにちは♪
司の愛の深さにつぶされます。 …始まりがねぇ…
ひとつ山を越えたんでしょうか?
この先が全く読めません。(私は、メープルで再会だ!再会だ!と思ってました^^;)

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NoTitle

毎朝起きて1番に読むのが日課になりつつある今日この頃☆
目が離せません!!
翌朝が楽しみで仕方ありません(笑)
この自分の中の盛り上がりは、やはりつかつく同時に読めるからかも♡
再会を今か今かと待ちわびています(#^.^#)

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