「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽③

愛してる、そばにいて0859

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 水族館のあとはプラネタリウムに行く予定だったのだが、さすがに時間的に難しく、戒にもそれほど興味がないと淡白に言われてしまい、結局メインの展望台へ。
 ガッカリして萎れているつくしに、戒が呆れたように窘めてくる。
 「別に、今日行かなきゃ、もう二度と来れないってわけでもないだろ?」
 「…まあね」
 そうは答えたものの、本当に次回があるかどうか、つくしにはわからないのだ。
 …また来ることがあっても、もうあんたとはこれない。
 もしかしたら、道明寺家に自分のことが知られてしまうかもしれない。
 あるいは、戒がもし自分の正体に気がついて、自分を捨てた母親だと疎んじたら?
 そうでなくても単純に、戒にもっと夢中になれるなにかや誰からできて、彼女といる珍しくもないごく‘普通の時間’というものに飽きてしまうかもしれないのだ。
 …あんたが、それで幸せでいてくれるなら、私も嬉しいし喜ばしいことだけど。
 それでも、かつて守ることができなかった約束だけは果たしてあげたかった。
 たとえ自己満足にすぎないのだとしても。
 本当は戒と約束したのは、自分と二人っきりでここへと来ることではなく、父である司と母である彼女と、戒、家族3人で訪れることだったけれど。
 …でも、それはもう叶わない。
 叶えてあげることはできないのだから、せめて、そう思ったのに。
 「こうして見ると、デカい都市なんてどこでも一緒だな」
 展望台のガラスの向こうにある夜景を眺め、そんなことを戒が呟く。
 つくしも彼の言葉に覗き込むが、彼とは真逆の感想を抱いて、不思議に思う。
 「そう?ずいぶん違うと思うけど。戒くんは東京に来る前にはイギリスにいたのよね?」
 「そうロンドン」
 「ロンドンだけ見たって、ずいぶんと東京とは雰囲気も違うでしょ?」
 「どこも同じさ。光の数だけ人間がいて、みんなそれぞれで自分勝手に生きてる」
 「……戒」
 戒の言葉の中に含まれる意味を考え、つくしが彼の顔をジッと仰ぎ見る。
 クルクルの巻き毛に美貌は、夜景の光に照らされまるで生きた人間の息吹を感じさせないほどに完璧に美しい。
 スラリとした長身と長い手足。
 しなやかな体躯は若々しく無限の可能性と力強さに満ちている。
 …本当に、今時の子って凄い手足が長くて、スラリとしてるもんなんだなぁ。
 もっとも戒の場合は、今時の子云々より遺伝の可能性大だが。
 「俺にまた見惚れてる?」
 うっかり図星を言い当てられ、それでも年の功で何食わぬ顔を装う。
 「バカ言いなさいよ。それだけ背が高いと私とは見えるモノが違うんだろうな、とかそんなことを思っただけよ」
 「へぇ?…たしかに地面にそれだけ近いと、俺が見えないものも見えてそうな気がするよ」
 何気に失礼なことを言われて、脇腹を軽く抓って、制裁を加えてやろうと指先を鉤爪のカタチにするが…抓れない。
 「ム、ムカつく」
 「くっ、…あんたといると面白いよ」
 「まったくこの子はどうしてこう生意気なのかしらね!」
 「よく言われる」
 それでも今この時が楽しい。
 戒が自分といることを楽しんでくれているらしいことが嬉しかった。
 「さっきさ?」
 「え?あ…うん?」
 「どこに行っても夜景なんて同じ、なんて言ったけど」
 「うん」
 戒が何を言いたいのか、ちゃんと聞きたくてつくしはジッと耳を澄ます。
 「でもたぶん、やっぱり全然違うんだ。どこで何を見るかじゃなくって、誰と何を見るかできっと違うんだろうな。NYにいた頃やロンドンにいた頃はそんなこと思ったこともなかったけど、…今は、そう思うよ」




*****




 帰りは通勤時間帯も過ぎたからか、平日ということもあって、行きの混雑とは違い電車はそれそこに空いて二人で並んで座ることもできた。
 戒が懐から取り出したiPodのイヤホンの片方を借りて、戒は右、つくしは左、同じ曲を聞く。
 「あ、この曲、けっこう前の曲よね?」
 「そうかな。別に流行り廃りで選んでないし、年代とか無関係に、片っ端から聴いて適当に気に入ったヤツだけ集めてるからわからない」
 戒はそれこそ今時の子らしく、音楽も好きで、自前のiPodにお気に入りの曲を入れて、そぞろ歩きをしながら音楽を聞いていることがほとんどらしい。
 …そりゃそうだよね。
 ただ意味もなく散歩することを楽しんでいるにしても、年寄りではないのだ。
 どんなものでも買えて、なければ買いなおせばいいという道明寺家の環境に生まれ育って、わざわざイヤがっている自邸に戻ってまで取りにいくはずだった。
 「マキさんは、普段、どんな曲聞くわけ?」
 「え~、私?」
 音楽は嫌いではないのだが、学生時代から生きることにアクセクしていて、そんなものを聞いている暇がなかったから、あまり聞く習慣自体がなかった。
 それでも教養の一つとして、一時期、クラッシックならイヤというほど聞かされたこともあるのだが。
 …いや、あれはいい思い出じゃないな。
 とてもではないが、普段から聞きたいようなものではない。
 それでも類がかなり音楽好きだったし、彼の聞く曲を一緒に楽しんだり、彼が弾いてくれるバイオリンが好きだった。
 「Je te veuxとか?」
 「…シャンソンだけど」
 「え!?ダメ?」
 「いや、別にダメってことはないけど。案外情熱的っていうか、ロマンチストなんだ?」
 まったく思いつかずに、つい以前類がプロポーズの時に弾いてくれた曲をうっかり口にして、戒に意外そうに揶揄られてしまう。
 …や、やばいかも。
 いや何もヤバイことなどないのだが、やはり我が子に父親ではない男性からのプロポーズ云々は、言わなければバレるわけではないだろうがバツが悪すぎる。
 「えっと、実はあんまり音楽聴く習慣とかなくって、さ」




*****




 「まったく…類に牽制されたと思ったら、今度は司、お前かよ」
 話題が変わっても、彼が本音を話すまで何度も話を振り出しに戻す司にさすがにうんざりしたのか、総二郎がそんなことをボヤキ零す。
 聞き捨てならない名前に、司の眉根が寄った。
 「類?」
 親友の名前だが、今の彼にとっては微妙な関係になってしまっている相手でもある。
 そして、どうやら総二郎にもそのことは伝わっていたようだ。
 「お前、類のヤツに縁切り言い渡してるんだって?」



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穏やかですね

こ茶子さん、こんにちは♪
総二郎のことをよく知ってるから。ちゃんと類も牽制してたんだ(笑)
>…今は、そう思うよ
戒はいい子ですね…
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