「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽③

愛してる、そばにいて0858

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 「それが理由か?…お前らしくねぇな」
 「そうか?俺だって、鬼じゃねぇよ」
 たしかにクールなのは半ば総二郎のポーズで、実際にはその心のうちには熱い魂が宿っている。
 少年の頃はF4中でも司についで喧嘩っ早く、頭に血が上りやすかった。
 ただそんな自分を自覚して、斜に構えてちゃらんぽらんを装うことで他人や自分を欺きく姑息さも持ち合わせていただけのことだ。
 「はっ、はははは」
 突然笑い出した司に、総二郎が怪訝に眉根を潜める。
 「なんだよ?」
 「まさか自分で、わかってねぇとか、そんなこと言うつもりかよ?」
 「……………」
 落ちてきた前髪をかきあげ、司が唇を歪め、総二郎を斜めに見上げ嘲る。
 「そうだとすれば、カサノバも案外だらしねぇっつーか、大したもんじゃねぇな?」
 「まさか、喧嘩売ってんのか、てめぇ?昔なら高値で買ってやるところだが、お前にだって立場があんだろ?」
 「ふ、それこそお前がその気なら立場なんてほっぽって、お前を沈めた後いくらでも手を回して隠蔽してやるさ?」
 だが、総二郎は司の挑発には乗らずに、呆れた顔で肩を竦めてソファにだらしなく寄りかかったまま動かない。
 「冗談よせよ、俺の方がごめんだね。お前と肉弾戦カマしたって、何の得にもなりゃしねぇ。それともお前に勝てば、なにか景品でもくれるってか?」
 「景品…か。少なくても俺に勝たなければ、これ以上お前をあいつに近づかせねぇ。この俺が」
 ポーズだろうが、会話から半ば興味を失ったかのように、司から視線を反らし明後日の方向を見ていた総二郎の視線が再び司に戻った。
 「……マジかよ?」
 「俺が冗談を言うとでも?」
 もちろん総二郎も司の性格など重々承知している。
 司が総二郎という男を、よく知っているように。
 「まさか、まだ惚れてんのか?」
 「……………」
 「10年だぞ?」
 かつてのように声高にその所有権を主張しはしないが、それでも司の目にかつてつくしへの執着を叫んだ光を認めたのだろう。
 「ははは…信じらんねぇ」
 「お前がつくしと出くわした経緯はたしかに偶然だったんだろ。けど、それだけで、寝るつもりもねぇ女と延々おママゴトをしてるような男かよ?お前が」
 総二郎は女友達を作るような類の男ではなかった。
 実際にこれまでの彼の女性との交友関係はあくまでも寝るか、寝ないか。
 さすがに学生時代ほど派手な遊びはしていないようだったし、身近な女とトラブルになるようなマネは忌避していたから、親族や門下生、仕事上で付き合いのある女には手を出しはしなかったが、そういった目的でもない女に時間を割くようなこともなかった。
 一度は結婚したものの、総二郎にとってあくまでも‘女’はストレス発散と気晴らしと、常に緊張と過負荷を強いられる毎日の重責に軋む精神を和らげる緩和剤のようなもので、そこに友情とか恋とか愛といった感情を挟むようなことをして来たことがない男のはずなのだ。
 「どおりで牧野と別れてから、いつまでたっても死んだようなツラしてやがると思ってたぜ。バカじゃねぇの?お前」
 言葉尻のわりには、総二郎の顔は嘲るようなものではなかった。
 「お前の場合は一口に10年とは言っても、出逢って20年。赤ん坊が大人になるくらいの年月だぞ?俺には信じられねぇ」
 不思議に総二郎の口調には、どこか司を羨望するような響きがある。
 「なんでそこまで惚れてる女を裏切った?いや、裏切りつうのもちょっと違うか。お前の女は当時お前を毛嫌いして逃げてたんだからな。だが、手放さなければならない状況を自ら招いたんだ?それでなお想い続けるくらいなら、どうして未だ手をこまねいているんだよ?そういうのって、全然お前らしくねぇだろ?」
 「昔言っただろうよ」
 「……………」
 「あいつの本物の笑顔はすげぇ綺麗なんだってな」
 遠く過去を振り返る。
 ―――どうして、自分はあの時、つくしを手放したのか。
 どんなことがあったとしても、絶対に手放したくなどなかったというのに。
 総二郎に言われなくても、自分が一番何度となく自問し、…悔いたことだ。
 後悔することだけはと、自らに禁じていながら後悔せざる得なかった。
 けれど、何度あの時に戻ったとしても、そうしないわけにはいかなかったのだ。
 彼女を愛していたから。
 それは、遥か20年前―――彼女を襲い奪った時と同じように。
 あの時、こうしていればと嘆くことは簡単だったが、自分はそうすることができなかった。
 そうであれば、なにを悔やむことがあるだろう。
 …わかっていても、何度でも後悔しちまうのが人間ってやつなんだろうけどな。
 今なら、司も認められる。
 「あいつを幸せにしてやりたい、幸せでしょうがないって笑わせてやりたかった。けど、あの時の俺じゃそうしてやれなかったんだ。……それなら俺から逃がしてやる以外、仕方ねぇだろ?」
 それは9年前、彼が答えた返答とまったくおなじものだった。




*****




 プラネタリウムや展望台にも回りたいという欲張りなつくしの為に、やや駆け足気味に水族館を見て回り、通りかかった水族館併設の―――10年前には立ち寄ることができなかったカフェでも、たっぷりとそこ独自のメニュー・目にも可愛らしいペンギンクッキーの乗った青いパフェを堪能してつくしは大満足だ。
 「カクテルも飲めばよかったのに」
 つくしの向かい側の席に座っている戒の方は、普通にコーヒーだけ。
 最初、目にも鮮やかなLEDの氷キューブが入った青いカクテルとパフェとで迷っていたつくしの為に、カクテルを頼もうとしたのだが、未成年の彼がそんなものを注文するのを許さず、また自分ひとりで飲むのも悪いと、つくしも結局カクテルを諦めパフェにしたのだ。
 「いいの、いいの。このパフェ凄く美味しいし!」
 「ふぅん、まあ、それならいいけど」
 口にスプーンを咥えて、本当に嬉しそうにニンマリ笑うつくしに、戒の方がやや苦笑気味だ。
 「あんたって、こういうところ平気で付き合ってくれるよね?」
 「なに?」
 「甘いものは好きじゃないから自分は食べないし、お酒も…未成年だから飲めるわけじゃないのに、一緒にお店に入ってくれたじゃない?軟派ってわけでもないのに、基本女の人に優しいっていうか…まあ、女慣れしてるだけかもしれないけど」
 思わずよけいなことに気がついてしまい、複雑な気分になってしまう。
 …いやいや、健全なお付き合いをしてくれてるなら、全然かまないのよ!
 というか、息子がモテることは鼻高々になりこそすれ、もちろん忌避することではないのだが。
 「さっき立ち寄ったショップでも一緒にストラップ買ってくれたでしょ?」
 さすがにつけることまでは拒否されたが、いわゆるお揃いというヤツだ。
 つくしの方は、早速取り付け、一人でご満悦だった。
 「ああ、なんか懐かしかったから」
 戒の言葉に、つくしがハッと彼の顔を仰ぎ見る。
 つくしではなく、テーブルの上に置いて彼女が眺めていたペンギンのストラップを、戒はボンヤリと俯きかげんに見つめたまま。
 「たしか昔に、土産で貰ったことがある」
 「だ、誰に?」
 戒にそれを尋ねてしまうことは、チャレンジャーだろうか?
 戒に正体を知られることを恐れる気持ちとは裏腹に、少しでも自分と過ごした記憶の欠片を思い出してくれるなら、彼がそのお土産を産みの母親から貰ったのだともし憶えていてくれているのなら、と。
 …聞きたい。
 いつか必ず一緒に来るのだと約束したことを。
 「お土産、誰に貰ったの?」
 「さあ?」
 夢から醒めたように戒が目を瞬き、ストラップから目を反らし顔を上げる。
 「誰だったかな。…もう憶えてもいないよ」



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直球ですね

こ茶子さん、こんにちは♪
ヒャー、戒のお話も、司のお話も直球ですねー☆
類は知ってる。
あきらも知ってる。(!?)
総二郎も知った。
F3。いい いい。

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