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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽③

愛してる、そばにいて0856

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 「ハッ、日本に来て数時間で、てめぇの命狙ってっかもしれねぇヤツらのことはさておき、まずは俺に会いに来たってか?なんともありがたくて泣ける話じゃねぇか」
 どこまでも真面目な司の顔から視線を反らし、呆れたように肩を竦め、カウンターへと総二郎が向き直り、カウンターテーブルに置いたままだったグラスを手に取って酒を口に含む。
 しかし、茶化した態度とは裏腹に、総二郎の顔も大して愉快を感じているようではなく、どこまでも皮肉げだ。
 「……で、お前が聞きたいのは、戒が入れ込んでる女のことか、それとも…お前の元女房のことなのか?」
 「どっちもだ。どっちも同じ女だとわかってて、シラばっくれてたのはお前の方だろうがよ」
 司の声音はけっして激昂してはいなかったけれど、それでも威嚇するように低く軋んだ声の威迫は、聞く者が並の人間だったら怖気上がり、縮こまってしまっていたことだろう。
 「はぁ~ん?お前のそんな顔、久しぶりに見たな」
 「さっきから、フザけてんじゃねぇぞ、総二郎。俺の質問に答えろ?なんで、あいつのこと…つくしのこと、俺に黙ってた?」
 震えを帯びた声は、今度こそハッキリとした怒りを総二郎に伝えていた。
 「だって、関係ないだろ?」
 「関係ないぃ?」
 「戒が見舞われたトラブルについては、関わっちまった手前俺も一応保護者のお前に連絡して、俺の知ってる範囲のことを報告した。本当なら、それで終わりのはずだった…それまでお前の息子とはそれほど交流もなかったしな。が、その戒を助けた俺の知り合いの女が、なんでか知らねぇが、一方的に戒に懐かれちまったらしい。…俺にとってはそれだけのことだ。それをなんで一々お前に報告する義務があるよ?」
 「何が知り合いの女だ。…なんでか知らねぇもなにも、てめぇ、白々しいこと言ってんじゃねぇぞ!?」
 ガンッ!
 司が憤りに任せ、ゴブレッドグラスの底をテーブルへと打ち付け、鈍く重い音を立て、店内に一瞬シーンとした沈黙が広がった。
 だが、司たちへと注目が集まったのはホンの一瞬で、白々しいくらいにすぐに人々の視線が反らされる。
 それでも店内がシラけてしまったのは、あきらかで、バーカウンターの向こう側のバーテンダーが困ったように彼らを見ているのに、総二郎が苦笑してスツールを立ち上がる。
 「司、やっぱり個室に移動しようぜ」
 「……………」
 「お前ももうガキじゃねぇんだし、俺も同じだ。いまさら殴り合いのケンカもねぇだろうが、さすがにこんなところで言い争ってんのもいい迷惑だろ
 「奥、空いてる?」
 「はい」
 「だってよ、行こうぜ、司」
 総二郎の問いかけにバーテンダーが頷いて、司も不承不承ではあったが総二郎に続いて椅子を立ち上がる。
 すでに感情を隠すことなく、司が底冷えする眼光で総二郎を睨みつけていた。
 もはやそこには、怜悧で沈着な経済界の寵児と言われる男の顔の影もカタチもない。
 彼の頭と心にあるのは、今一人の女のことだけなのだ。
 「チッ。総二郎、洗いざらい全部吐けよ?」
 「………ふぅ。ったく面倒臭ぇな」
 いつものスタイリッシュな美男らいからぬ仕草で、ガリガリと盛大に頭を掻き、総二郎は盛大に息を吐き出した。




*****




 「車をプレゼントとか、ありえない話だから!」
 エスカレーターに縦に一列並んで、それで逆に顔の位置が近くなった背後の戒を、つくしが振り返って抗議する。
 「親のすね齧ってるガキのくせに、何言っちゃってんのよ、もうっ」
 「……だから、それはもういいって。プレゼントするって言って、逆に怒られるとか割に合わない話だとか思わない?」
 「そ、それはそうだけどさ」
 戒の好意はわかる。
 しかし、おそらくそこで適当に頷きでもしたら、きっと本当にポンと買ってくれていまうことがわかっているので、つい念を押してしまったのだ。
 「でも、元手はたしかに親からもらった小遣いだけど、俺が投資で得た金で買うって言ってるんだから、それでもダメなわけ?」
 「うーん」
 たしかに一度子供に一定の金額を与えて、その範囲の中で自由にやりとりさせるのも教育の一つで、戒は見事にそれを実践し、自分で資産を増やしていて、それで何かを自分に買ってくれようというのだから、本来ならそれを彼女が口出しをするべきではないのかもしれなかった。 
 「でもさ、プレゼントしてくれるにしても額ってものがあるでしょ、額ってものが。もっと少額のものだったら、私もそこまで煩くは言わないんだだけどね。まだ親にお世話になってる以上、やっぱりある程度ケジメっていうか限度っていうものがあるわよ」
 つくしの妥協して困った顔を戒がジッと見て、たじろぐ彼女に視線を反らして、仕方なさそうに苦笑で返した。
 「よく言うよ。どんな些細なものでも、一々わあわあ言って子供に奢られるような甲斐性のない大人じゃないって、俺にほとんど奢らせないくせに?」
 「…うう」
 それは性分だからというのもあるが、やはり自分の息子である戒にお金を払わせるようなマネをしたくないつくしの母心だった。
 間違いなく、つくしよりも戒の方が自由になるお金も元々の資金も段違いに有しているのであることなど承知していたけれど。
 「と、とにかく誕生日とかクリスマスでもないのに、人に何かを雨霰ともらっちゃうような生活をしてないし、…そういうのはさ逆に人を堕落させてしまうこともあるから、あんたもむやみやたらに物を人に与えたりせずに考えて?」
 「………堕落か。そんなところまで同じようなこと言うんだ」
 何かが思い当たったような戒の呟きを拾い損ねて、つくしが怪訝に隣に並んだ戒の顔を見上げて首を傾げていると、その手を取られて、今度は戒が先に行ってしまう。
 「じゃ、限度は考えて、俺が払うのはここのチケット代程度にしておくよ」
 水族館のチケット売り場の前に立った戒は、すでに財布からカードを取り出し、さっさと窓口へと出してしまっている。
 「いや!さっきもあんた似たようなこと言って、夕食のパスタも奢ってくれてでしょ。て、おいこらぁ、聞いてんのかぁっ!」
 騒ぎながら慌ててハンドバックを探って、財布を取り出そうと四苦八苦しているつくしを無視した戒の手には、すでにチケット二枚が握られていた。
 


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こ茶子さん、こんにちは♪
ぶれないつくしが好きです。

総二郎がんばれ!
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