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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽③

愛してる、そばにいて0855

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 「うは、さすがに混んでるわねぇ」
 平日とはいえ、電車はかなりの人混みで、東京に近づくほどその混雑はひどくなっている。
 それでもおそらく朝の通勤ラッシュほどではないのだろう。
 窓際につくしを立たせ、戒が周囲の人垣から壁になるようにして立ってくれているおかげで、それほどに苦は感じなかった。
 「だからウチの車を呼ぼうって言ったじゃん」
 「え~」
 つくしが反論しかけたところで、ちょうど電車が停車して、駅のホームへとドッと人が押し流されれて、その一人、中年の男性の肘が戒の背中に当たったらしい。
 「………」
 不機嫌な顔で振り返った戒の視線をまとめに浴びて、いかにもごく平凡なその男性が「ひっ」と小さな悲鳴を上げて、「す、すみませんっ!」ペコペコ頭を下げてながら慌てて電車を降りてゆく。
 「わざとじゃないんだし、こんな状況じゃしょうがないんだから、そんな顔で凄まない」
 「凄んでないし」
 たしかに戒の場合は何か気に食わないことがあったとしても、一々相手を威嚇したり脅しつけるようなところはなかったが、それでも彫像のような完璧な美貌はただでさえ冷たく見られがちだというのに、不機嫌にムッとしていたり、無表情でいるとなおさら他人に圧迫感と威圧を与えていた。
 「悪かったわよ」
 「……………?」
 器用に片眉だけを上げて、なんだと尋ねてくる。
 その癖が、よく司もやっていたものだと気がつかされる。
 容姿だけではなく、戒と司は本当によく似ていた。
 …司より、ちょっと線が細い気もするけど、でもまあ、中学生なんだからこんなものなのかな。
 そんなところを何度となく発見しては苦笑いして、戒と再会してからやたらと自分が司を思い出していることを自覚する。
 あえて思い出さないようにしていたわけではなかった。
 けれど、日々の生活の中、あまりに司の存在は遠く…隔たって、それこそ過去彼と共にいた日々でさえも夢のような気がしていた。
 悪夢だと疎んじたこともある。
 けれど、今はただ現実味のない遠い夢のようで、懐かしいだけだ。
 時折訪れる悪夢だけが、その頃の名残であり、…それさえもまた遠ざかりつつあったから、いつかは全ては時の流れの中に、解けて消えてゆくのだろう、そんな風に思っていたのに。
 「何が、悪かった?」
 「いや、こんな混み混みの電車なんて、あんた初めてだったでしょ?」
 「まあね」
 一人でほっつき歩くのが趣味?なだけあって、それなりに公共の交通機関も使いこなしているようだが、それでもやはりお坊ちゃまなのだ。
 司のように5分の距離も歩かないということはなかったが、戒もまた基本は自邸の車を利用することが多かった。
 「帰りはウチの車呼ぶ?」
 「うーん」
 やはり悩ましい。
 もちろん遠慮もあったが、それ以上に、以前戒を彼女の家まで迎えに来た家令のように、運転手の中にもつくしのことを知っている人間がいないとも限らないからだ。
 それに、
 …なんていうか。どの面下げて、道明寺家の車に私が乗せてもらうのかっていうのもあるよね。
 しかも家主である司や、その妻である滋の目を盗むようにして、だ。
 これが本当にただの戒の友人や恋人か何かとでも言うのなら、それほどの躊躇もなかったのだろうけれど。
 「やっぱり車、買おうかなぁ」
 「車?」
 「そ。また、あんたが夏休み終わっても遊びに来てくれるつもりがあるなら、車があった方が便利でしょ?」
 戒が小さな微笑みを浮かべる。
 「…なら、車は俺がプレゼントするよ」




*****




 「しっかし、お前もたいがい神出鬼没なヤツだな。道明寺ホールディングスのCEOが来日してるなんて記事、見てねぇぞ?」
 個室に移るかという総二郎の誘いだったが、司はあえて人目のあるところに留まることを選んだ。
 どちらにせよ、メイプルの最上階にある会員制バーだ。
 身元の怪しい人間など入り込めるはずもない。
 総二郎に周波を送っていた女たちにしても、どこぞのパーティで何度か見たことがある連中ばかりで、彼らの意を無視して近づいて来ないのも彼らが何者か十二分にわかっているからなのだろう。
 総二郎と同様、よもや日本に司がいるとは思わなかったのに違いない。
 驚いた顔にはそうした意味合いの驚きが浮かんでいた。
 傾けた司の手の中のグラスの氷がグラスにぶつかって、カランと僅かな音を立てる。
 互いに乾杯をしてから、まだ一杯目に口をつけただけで、酒はほとんど進んでいなかった。
 「そりゃそうだろ、 極秘でホンの数時間前にこっちに来て、俺はまだ今NY日いることになってる」
 総二郎がひゅーと口笛を吹く。
 そうしていると先ほど司が指摘した通り、総二郎はいつまでも二十代の若者のようで、立場ある年相応の大人の男性にはあまり見えない。
 「それなのに見られてもいいわけ?」
 「NYにいることにはなってるが、こっちにいるかもしれないと思われる方がいい」
 「なんだ、そりゃ」
 司の物言いがおかしかったらしい。
 総二郎が噴き出す。
 しかしもちろん、言葉尻のまま、その意味を全く理解していないわけではないのだろう。
 あっさり話を戻した。
 「来月頭の来日なるって言ってなかったか?」
 「その予定だったが、そうはいかない事情ができた」
 「事情?ふぅん、そこら辺が妙な言い回しのわけってやつか。なんだ?日本にいるお前の親父の従兄弟だか、再従兄弟だか言うジジイが死にでもしたかよ?」
 「ふっ、…それなら俺も面倒がなくていいんだがな」
 お互いそうではないことをわかっていて、ブラックなジョークを交わし合う。
 「俺が早めに日本に戻ってきた理由はともかくとして、なんで俺がここにいるのか、総二郎、なんで俺がお前を呼び出しのか。まさかまるでわかんねぇとか言わねぇよな?」



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つくしの心

こ茶子さん、こんにちは♪
つくしの心の動きを丁寧に書いて下さっててよくわかります。
明日はどこまでお話が進むのか楽しみです。

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