「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽③

愛してる、そばにいて0853

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 なにをいわんや。
 青天の霹靂とはこのことか。
 頭痛を憶えて何も言えないだけなのに、反論されなかったことで花木は妙な確信に至ったらしい。
 「総二郎さんもね。ああいう人だから、遊ぶ人には事欠かないとは思うんだけど。やっぱり何かと重圧がかかる立場で、本音では支えてくれる人が欲しいのに、そうはできないところにあの人の悲哀ていうか、寂しさっていうのがあると思うのよ。その点、牧ちゃんは、包容力もあるし、間違ってることは間違ってるって喝を入れてあげられる…うーん、いわば、肝っ玉母ちゃん的なところがある人じゃない?」
 「……肝っ玉母ちゃん」
 正直言われて嬉しいんだかなんだかわからないが、大いなる誤解が壮大すぎてもはや妄想の域に達しているとしか思わざるえない。
 …ていうか、この人の場合、もしかしたら私をダシにして、西門先生をなんとかしてあげようとかいう気持ちで一杯なだけじゃないのかしら。
 当の祥一郎の気持ちは無視して、暴走気味な妻に彼の方は苦笑しつつも、総二郎同様つきあってやってる風だと、常日頃からつくしも感じていた。
 「ここはもう、お互いに嫁同士…まだ嫁じゃないけど、協力して旦那様たちの家族愛の縁の復旧に努めましょう!」
 「あのね、花ちゃん、暴走してるところ悪いけど、私も西門さんもまるっきりそんなつもりもなければ、そんなこと言われてもはあ?って驚いちゃうだけで困るんですけど?」
 「ええっ?!結婚しないの?」
 「するかっ!」
 どこまで本気なのか、妙に真面目な顔で驚かれ、疲労を憶えてつくしはガクリと項垂れた。
 「……なに、牧ちゃん、結婚するの?」
 「あ、奥苑さん」
 「奥さん」
 ちょうど席を外していた、非常勤の同僚・奥苑がキョトンとした顔で、つくしと花木を後ろから覗いていた。
 「違いますよ」
 「奥さんからも勧めてくださいよ。長い人生、一人っきりは寂しいって」
 「なに、それ。前旦那と別れて以来、ヤモメ暮らしの私へのあてつけ?」
 「ええ?いや、そ、そんなんじゃないですよ~」
 けっして奥苑の顔は本気そうではなかったが、さすがに花木もバツが悪かったらしく、焦った顔で否定し、つくしと総二郎の再婚云々は引っ込める。
 「ま、どうせまた花ちゃんの一人暴走でしょ?自分が病院内一のイケメン亭主とラブラブだからって、そうやって誰彼構わず自分の価値観押し付けてると、いつか恨まれて後ろから刺されるから」
 「……うう」
 花木にも多少の自覚はあるのだろう。
 悪気がないだけにつくしも笑って許しているが、時々この押しつけには困ることもあるのは事実だったので、今回は特に庇ってやることもなく静観することにする。
 「それより、牧ちゃん、下にいつもの子待ってるけど?」
 「「えっ!?」」
 なぜか、花木までも驚いている。
 「時間が時間だから外来も終わって人通りがそんなにないからそれほどでもないけど、気がついた患者さんが立ち止まっちゃ人垣作って、かなり目立ってるから早く行ってあげたほうがいいんじゃない?」
 「うわっ」
 慌てて中途半端だった帰り支度を再開する。
 「いつもの子って、あの高校生くらいのすっごい超絶美形の美少年ですよね?」
 「そう」
 「おお~、最近、顔見せなかったから、事務方の子達が凄い残念がってて、また凄い騒ぎになっていそう」
 …やばやば。
 もちろん、超絶美形の美少年とは戒のことに決まっている。
 が、目立つことを危惧して、居候し始めた最初の頃に何度か迎えに来て以来、病院にまでくるのはやめさせていたというのに…。
 …いつもどおり近くのカフェで待っててって言っておいたのに、もうっ。
 「そっかぁ。牧ちゃんは、渋い同世代の美男より、ショタ趣味だったかぁ」
 ズルッとズッコケかける。
 「違うでしょ?あの子って、牧ちゃんの子供なんじゃないの?」
 「「ええっ!?」」
 またも花木とハモって、つくしはあまりの驚きに奥苑を見つめたまま固まってしまった。
 「違った?甥とかかな?」
 「え~、違うでしょぉ。全然似ていないですよ」
 「…どうして」
 ホンの小さな頃から戒は司に瓜二つで、身内にはつくしにも似ていると言われた戒だったが、ほとんど他人につくし似だと言われたことがない。
 「たしか牧ちゃんも、前に結婚して、子供を前旦那のところに残してるようなこと言ってなかった?」
 言っただろうか。
 あるいは、総二郎を通して花木が知っている可能性はあったが、つくしは自分のことを他人に話すことはあまりなかったから、特に憶えがなかった。
 それでも当たり障りのない程度、雑談に紛れて話してしまったのだろう。
 戒自身や道明寺家の耳に入ると困る。
 咄嗟に誤魔化そうかとも思ったが、今はなぜかそうすること…戒を我が子ではないと否定することはしたくなかった。
 「はは、よくわかりましたね。まさか言い当てられるとか全然思いませんでしたよ」
 「え?本当にそうなんだ。奥さんさすが、あたし全然わからなかった」
 花木も感心している。
 「まあねぇ、ウチの息子も牧ちゃんとこの息子さんと似たような年頃なのもあるし、ベースは旦那似にしてもやっぱり親子だもん、全然似てないってことはないわよ。まあ、ウチのは、牧ちゃんとこの子みたいに超絶美形なわけじゃないけどさ」
 「はは…」
 「え~、似てる?」
 親子云々はともかく、戒=つくしに似ている説には同意できないらしく、さかんに首を傾げている。
 「似てるわよ、目元とか、笑った顔…っていうか表情の作り方かな」
 「表情の作り方?」
 たしかに幼い頃の戒とつくしを見て、そう指摘してくる人間はいたが、今やほとんど若き日の司そのもののような容姿をした戒を見て、そんなことを言われるとは。
 意外さにマジマジと花木を見るつくしに、花木も自信がなさそうに首を傾げる。
 「ま、ジロジロ見たら怒られちゃいそうというか、迫力のある子だからあんまりじっくりと美顔を拝めたわけじゃないから、なんとなくだけどね」
 どんなに似ていないようでも、否定されようとも、血は争えないということなのかもしれない。
 「……………」
 「そっかぁ、親子ってやっぱり似るよね。今度、あたしもそこらへんじっくり観察させてもらおう。てっきり牧ちゃんの若いツバメかペットなのかとか、ホンのちょっぴり思ったりもしたけど」
 「はぁ?ツバメぇ!?」
 さっきのショタ趣味発言といい、さすがに胡乱なつくしの視線に花木も気がついて、焦ったように言い訳し始める。
 「ほ、ほら?まさかあんな超絶美形な大きな息子、牧ちゃんにいるとか思わないじゃない?」
 別に気を悪くしたわけではないが、
 「…………どうせ、どう見ても私みたいな普通の容姿の女から、あんな超絶美形な息子なんて生まれそうにもありませんよ」
 とんでもない誤解をされたこともあって、へそを曲げたフリをしてみせる。
 「いやいや、牧ちゃんも十分素敵な人だって。ただ…やっぱり超絶美形じゃないってだけで」
 「はいはい」
 まあ、花木の言うことはそのとおりのことなので、いつまでもこだわっていても仕方がないと、つくしもあっさりと鉾を収めた。
 「でも、息子くんの美形具合からして、元旦那さんって相当凄まじい美形だったんだ?」
 「………まあ、そうかな」
 それだけは間違いない。
 いろいろヒヤヒヤさせられることも多いが、さすがの花木も、人前で総二郎とその元旦那のどちらがより美形かなどとは言い出さなかったので、つくしもわずかに安堵して小さく息を吐き出す。
 …よけいなことを言い出されないうちに、さっさと退散しなきゃ。
 「じゃあさ?祥一郎さんと、どっちの方が美形だった?」
 「え~?そ、そりゃあもう」
 「どっち?」
 「うーん」
 あえて言葉尻を濁したというのに、なぜか食い下がられてしまう。
 しかし、そんなくだらないジャレ合いの延長のような攻防も、奥苑が年長者らしく仲裁に入ってすぐに幕が閉じる。
 「そんなことよりも!牧ちゃん、早く行かないと、息子さん、待たせちゃってるんじゃないの?」
 「あ!」
 「…ありゃ」
 いつの間にか、すっかり忘れていた息子に心の中で手を合わせる。
 …戒、ごめん!



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~ Comment ~

花ちゃん、奥ちゃん

こ茶子さん、おはようございます♪
こ茶子さんが花ちゃんに与えた役割にちょっと気付けたかな(?)
つくしが戒を公に息子と認めるのに、花ちゃんの存在は不可欠だったんですね☆
つくしの職場仲間のコンビネーションに一安心。(ホッ)
少しづつですが、つくしが進んでいることがわかります。
戒の、待ちきれなくはやる気持ちがかわいい❤

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