「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽③

愛してる、そばにいて0852

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 戒が道明寺邸に帰る。
 つくしとて、こんな生活がずっと続くなどとは到底思ってはいなかった。
 けれど、そう覚悟しながらも、このままできるだけ長く続いて欲しいと密かに期待していた自分もわかっている。
 咄嗟に二の句を継げないでいるつくしをよそに、小さく息を吐き、定位置であるソファから立ち上がって立ち尽くしているつくしの傍らへと歩いてくる。
 無言で差し出された手を怪訝に見下ろす。
 「なに?」
 「…なんか手伝うよ」
 「手伝うって」
 「サヤインゲンのスジ剥きでも?」
 どうやら本気で言っているらしい。
 妙に生真面目な顔での提案にぷっとつくしは噴き出した。
 「そういつもサヤインゲンがあるわけじゃないって…、まあ、あんたがそう言ってくれるならせっかくだから、これ、玉ねぎの皮むいてくれる?」
 「ああ」
 「あと出来そうなら、これ、レタスを剥がして洗ったりできる?」
 「……バカにするなよ」
 「お。じゃ、お願いね」
 デカい男と二人並ぶと、アパートなどに比べればずっと広いはずの一軒家のキッチンもずいぶん狭く感じる。
 それでもこうして二人で並んで共同作業をしている時間が楽しい。
 幼い頃の戒は、いつもキラキラした目で楽しそうに彼女のお手伝いをしてくれたものだが、今の彼は何を思い、今彼女の傍らにこうして立っいてくれているのだろう。
 そんなことを思いながら戒の秀麗な横顔にジッと見入る。
 戒もそんな彼女の視線に気がついて、彼女の顔をチラッと振り返った。
 「なに?」
 「見惚れてる」
 「…ふっ」
 冗談だと思ったのか、照れるでもなく、揶揄することさえなく小さく笑っただけで、戒はあっさりと流してしまう。
 「できた。これでいい?」

 「OK、OK。じゃ、今度はそっちをお鍋に入れて」
 「これ?」
 「いや、こっち」
 幼い頃の記憶がないのだから、台所に立ったことなどないだろうに、戒は彼女の指示通り要領よくこなしてゆく。
 「よし!出来上がり。さ、ささっと並べてさっさと食べちゃおう」
 「また来ていい?」
 「……………」
 「遊びにさ?」
 つくしの顔に笑顔が広がった。
 意識するまでもなく。
 「来てよ」
 「いいんだ?」
 「寂しい一人暮らしの女ですから」
 母親としてでなくてもいい。
 少しでも彼の孤独を癒せる存在でいられるのなら。
 「夏休み…最後の日に帰るよ。だから、その日、俺と一日デートしよ?」




*****




 さすがに息子にデートに誘われたからと、そう簡単に休みが取れるものでもなく、運が悪いことに戒に指定された英徳学園高等部の夏休みの最終日…月末はつくしは休みではなかった。
 それ以前…も、バッチリしっかり出勤日。
 悩まないではなかったが、それでも生真面目なつくしには、患者や同僚に迷惑がかかるとわかっていて、とてもではないがズル休みなどできるはずがない。
 結果、つくしの仕事帰りに待ち合わせて、二人で出かけることになった。
 戒もそこらへんの事情は了承してくれている。
 多少不満そうではあったが。
 …そういうとこ、親子でも司とは全然違うわよね。
 超俺様理論の司だったら、俺を優先しろの一点張りだったに違いない。
 「あれ、牧ちゃん、珍しいね。残業なし?」
 終業時間とほとんど同時に、ささっと席を立って、帰り支度を始めたつくしに同僚の花木が声をかけてくる。
 「はは…ごめん、今日は特に急ぎの仕事が入ってないから大丈夫だと思うんだけど」
 「いや、大丈夫だけど。牧ちゃんて真面目だから、ぴったりに帰るなんてめったにないから珍しいなって思ってさ。………もしかして~、デート?」
 にまぁと笑って穿ってくる。
 凄いカンだ。
 「終業時間の一時間も前からソワソワしてたし」
 「…あや~」
 自分ではそんなつもりはなかったのだが、仕事中に集中できていなかったとはと項垂れる。
 「うう、ごめんなさい」
 「ミスったりしてないんだし、患者さんに迷惑かけたりしたわけでもないんだから、そんなに四角四面に考えなくてもいいじゃない。……それよりさ、まさかまさかと思ってたけど。そうだったんだぁ」
 うんうん、となぜか訳知り顔で頷かれる。
 「そうだったんだ、って?」
 ギチギチに待ち合わせ時間を決めていたわけではないが、それでも戒を待たせているだけに時間が気になって、ほとんど花木との会話も気もそぞろだった。
 が、花木の方はまったく気にしていないらしく、にひひと興味津々に質問を浴びせてくる。
 …うひ。
 花木は悪い女ではないが、捕まると長いのが難点だった。
 よく言えば人懐っこくおおらか、悪く言うといまいち空気が読めないところがある。
 それだけにズカズカ他人事にも踏み入ってくるので、友人も多いが、総二郎のように彼女を苦手に思う人間も多いのだろう。
 「牧ちゃんはともかく、総二郎さんはそうなんじゃないかと思ってたのよね~」
 「西門さん?」
 時間を気にして話の切れ間を待つが、思いがけない名前が飛び出してくる。
 どうやら花木の方はまだ帰らないようだが、がっつりつくしに向き直ってすっかり雑談モードに突入してしまっているようだ。
 どこでぶった切るか。
 「えっとさ、私ね、実はもう…」
 時間が―――。
 「総二郎さんって、今独身だものね。これで牧ちゃんが、総二郎さんと結婚!とかなったら、あたしたちって義理の姉妹になれるってことよね!」
 「はぁ?!」
 …義理の姉妹ぃ?
 「もぉ~、すっごい大歓迎よ!」



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~ Comment ~

誤解されてたままで大丈夫!

こ茶子さん、おはようございます♪
花木サン以外の全員(含 戒&花木の夫&司&etc.&etc.)、誰も誤解してないから。
メンドクサイ!もう、誤解されたままでいいよ!!

戒。つくしに甘えてね。…心配だ…

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