「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽③

愛してる、そばにいて0849

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 「まったくこの子は!どこの世間にまだ中学生が、こんなにデロデロに酔っ払って帰ってくるバカがいるのよ!」
 半ばおんぶおばけ状態で戒を背負って、引きずるようにして家の中へと運び込む。
 もっとも戒との体格差からして、いくらまだ少年でごく細身であるにしろ、戒が完全に酔い潰れていたらつくしでは運ぶことはできなかっただろう。
 それでもなんとかひーひー言いながら、ソファまで連れてきて座らせる。
 「うう、重かった。さすがに二階まで連れてゆくのは私では無理だわ。…水持ってくるから、ちょっとでも酔いが醒めるまで、ここで転がってなさい!」
 どれだけ飲んだのか、ムッと立ち上る酒の臭いに閉口しながら、これみよがしに鼻を摘んでキッチンへと向かう。
 「……もしかして、俺を待っててくれたわけ?」
 聞かれて振り向き、戒の視線の先を辿って、「ああ~」とテレテレと肯定する。
 「だって、あんたったら帰って来ないとも連絡してこないからさ」
 職場から直帰して、一人で夕食を摂ったものの、それでもそのうち戒も帰ってくるのではないかと中々思いきれずに、いつもより遅い時間になっていた。
 ついさっき、遅い夕食を食べたものの、戒の分をラップしてまだテーブルの上に並べたままだったのだ。
 「その様子じゃ、夕飯なんていらなかったわね」
 「…食うよ」
 「え?いいわよ、無理しなくて」
 足腰が立たないほどデロデロだったわりには、わりに口調はハッキリしている。
 つくしに似たらどうだかわからないが、ザルというよりほとんどワク状態で、酒にはむちゃくちゃ強い司に似たのなら、戒も多少の酒では潰れたりしないはずだった。
 それでも酔ったフリをする必要などないのだから、動く気がしないだけなのだろう。
 …一体何があって、こんなに酔っ払って帰ってきたんだか。
 いつもとは違って冷蔵庫のつくし自家製アイスティーや麦茶ではなく、ミネラルウォーターのペットボトルをとって、戒に渡してやる。
 自分だったらちょっと水道をヒネって水道水で十分なのだが、そこはお坊ちゃまに配慮してだ。
 「酒は飲んだけど、…腹に溜まるものは全然食べてないから」
 「は?こんなにお酒の臭いプンプンさせて、おつまみも食べてなかったの?」
 おいおいってなものだ。
 「あんたね、言いたくないけど、ガキがこんなにデロデロになるまで飲んだりして、倫理とか道徳は置いておいても、体壊すわよ?」
 「……平気だよ。自分の酒量の限界くらいわかってる」
 未成年のセリフとしては問題ありすぎな発言に頭痛を憶える。
 「どこでお酒を覚えたのよ?イギリスだってその年じゃ飲酒禁止だし、隠れて飲むにしても寮じゃ無理よね?アメリカならなおさら厳しかったでしょ?」
 「どこだっていいだろ。第一そんなの大した問題じゃない。飲酒年齢がどうのなんて、あくまでも法律の話で、そんなの四角四面に守ってるヤツなんかいるかよ」
 まあ、たしかに大した問題ではない…と言っていいものだかわからないが、そのとおりだ。
 ただのお小言ではある。
 「それにしても、未成年のあんただけでよく飲ませてくれるお店があったわね?」
 もしかして、大人の誰がと一緒だったのだろうか?
 「えっと、誰かと一緒だったの?」
 「別に。金さえあれば、そんなのどうとでもなるし、この外見で煩く言う店もないさ」
 「…………はぁ」
 たしかに戒は体格も大人以上で、大人びた外見から年相応に見えない。
 さすがに成人しているとは見られないだろうが、彼の父親である司も高校生の頃から、飲酒をさせる店に平気で出入りし、普段から水のように飲んでいた記憶がある。
 …学校内で飲んでたこともあるものね。
 とんでもない連中だったが、まさか自分の息子までとなると黙ってもいられない。
 だが、今はそこまで酒を飲まずにはいられなかった戒のことだ。
 戒は司に比べればずっと品行方正で、腹立ち紛れに他人に八つ当たりをして暴力を奮ったりものにあたるということがなかった。
 飲酒に関してもそうで、むしろどこでストレスを発散しているのかと思うくらいだ。
 再会した最初が刃傷沙汰だったから、密かにそうした凶暴性があるのかと心配してもいたのだが。
 …誰彼構わず殴りかかるとか、そういう子じゃないものねぇ。
 「どうしたの?」
 「……………」 
 「こんなになるまで飲むなんて」
 二人がけの椅子だが、戒の体格では一人で座っているだけでも迫っ苦しく、とてもつくしまで座る余地がないので、肘掛に腰を下ろして、クルクルの頭を撫でる。
 子供扱いはイヤがるかと思ったが、酔いのせいかわりに従順に受け入れてくれる。
 「イヤなことの一つや二つ、あるとは思うけどさ。そういう時でも自分の体を痛めつけるようなマネだけはやめなね?」
 力になってあげられない自分の無力が歯痒い。
 けれど、ただそこにいるだけを望まれている…何者でもない女にはそう言ってやることしかできないのが辛かった。
 「……抱きしめてよ」
 あまりに密やかな声音でのお願いに、思わずマジマジと戒を見下ろし目を瞬かせる。
 「イヤなら、いいけど」
 小さく笑う力ない顔に堪らなく愛しさがこみ上げる。
 肘掛けから立ち上がって、ソファに座ったままの戒を抱きしめる。
 クルクルの頭に頬を寄せ、ヨシヨシと撫でる。
 もう彼女の体にすっぽりと収まる小さな子供などではなかったけれど、彼は彼女にとってどれだけ大きくなろうと、大切な宝物で可愛い我が子だった。
 守ってあげられなかったたくさんの時を悔いて、少しでも彼の慰めになれればいいと願って温もりを分け与える。
 …あんたは私が守ってあげる。どんなことをしても、どんなことからも。だから、もうそんなに哀しまないで、傷ついて苦しんだりしないで、と。
 戒は身動き一つせずに、そんな彼女の抱擁をただ黙って受け入れてくれていた。
 やがて…、
 「もう、いいよ」
 つくしの肩に手を置き、グイッと引き剥がす。
 強い力ではなかったけれど、それでも震える大きな手に、そうされてしまえば彼女に自分の気持ちをそれ以上押し付けることはできなかった。
 「俺が怖くないの?」
 ポツリと呟かれた声音は、掠れてひどく弱々しかった。
 「どうして、私があんたを怖いとかそんなことを思うのよ」
 本音だったから、むしろ戒がそんなことを言い出す理由がつくしにはわからない。
 表情を隠したいのか、何度も顔を手で撫で、手で顔の半ばを隠したまま項垂れた戒が大きく長く息を吐き出す。
 「マキさんが、時々魘されてるのって、俺のせいなんだろ?」
 「……え?」
 「夜中、トイレとかに降りる時があって、毎日とかじゃないけど、何度か魘されてる時があって、起こそうかどうか迷った」
 知られているとは思わなかった。
 悪夢を見る…とは言っても、戒に迫られた初日だけのことで、以後はそんなこともあったという程度の不安感をカタチにしたような、曖昧な夢が時折訪れる程度のことだったから。
 「それは、えっと」
 「俺が最初に泊めてくれってこのウチに押しかけた夜に、あんたに迫ったからじゃないの?」
 「…違うよ、そうじゃない」
 それも一因ではあったが、だからと言って傷ついているこの子に今、そうだと言いたくはなかった。
 「ちょっと、その…ずっと前にだけど、あ…イヤな目にあったことがあって」
 かなり歪曲した表現だが、しかし…それもまた、戒には言うことのできない事柄の一つ。
 息子である戒に、その父が母である彼女に犯した罪を告白などできるはずがない。
 つくしは戒に自分と司との間にあったことを、彼には絶対に知られたくなかった。
 母親として当然のことだ。
 「俺さ、昔、女が男に襲われてる現場に出くわしたことがあるんだ」



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こんばんは

こ茶子さん、こんばんは♪
思い描いていたのとは違う展開に、良い意味で衝撃を受けてます
更新が待ち遠しいデス

両親がいながら、守ってもらえなかった少女
その少女は今、サバイバーになりましたよね
…どうか少年を守ってあげて

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