FC2ブログ

「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽②

愛してる、そばにいて0847

 ←愛してる、そばにいて0846 →愛してる、そばにいて0848
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 『戒の害になったり、道明寺家に迷惑をかけるようなヤツじゃないから、そこは安心してくれ』
 電話での総二郎の言葉が脳裏に蘇った。
 …ふ、何が安心しろだ。
 どうりであの口の軽い総二郎も口が重く、歯切れが悪かったはずだと、笑いがこみ上げ司は唇の端を皮肉に引き上げた。
 写真の中の姿にさえ、恋しさ、愛しさがこみあげ、血潮が熱く沸き立つ。
 こんな感覚はいったいどれくらいぶりだろう。
 写真の中の彼女の顔に指先を這わせ、彼女の輪郭を懐かしく辿る。
 夜毎彼が梳いて愛した長く真っ直ぐだった黒髪は、顎下あたりのショートボブに切り揃えられ、彼女の溌溂とした若々しい魅力を引き立てていた。
 「お前は、全然変わんねぇな」
 いつまでも若く愛らしく、彼にとって誰よりも美しい女。
 いったいどういった経緯で、戒と出くわし…そして、事情を知らない傍から見れば半同棲よろしく戒を居候させる事態になったのか。
 …戒のヤツは知ってんのか?
 自分が今居候している家の家主の女が自分を産み、かつてあれほど探し求めていた実の母親なのだと。
 つくしが戒を自分の息子―――司の息子であることがわからないはずがないことは疑うべくもない話だ。
 …たしか、サマーバケーションの直前に刃傷沙汰を起こした戒を助けた女の家にどうのって話だったよな?
 ということは、どうした偶然か、そんな数奇な偶然の下、二人は再会したのか。
 総二郎も戒が日本に帰国していることは、ある程度情報を持っていただろうが、わざわざ母子を引き合わせるほどおせっかいな男ではない。
 戒とは会わないこと。
 それがつくしと彼が離婚した際に出した条件だった。
 その時には、それが最良だと思ったからこその条件だったのだが…。
 …酷なことをしたよな。
 もちろん、その時にさえわかっていたことだ。
 けれど、つくしは自由になりたがっていた。
 司からも、道明寺家からも。
 だからこそ、戒がいては、その望みを完全に叶えることなどできはしないと、生木を裂くようにして司がつくしと戒を引き離したのだ―――戒を犠牲にして。
 …あいつはバカ正直で、生真面目な性格の女だ。
 たとえどんなに不本意なものであったとしても、一度約束したものを破るような女ではない。
 そうであれば自分から司との約束を破るようなマネをして、戒に接触を図るはずもなかった。
 また戒も戒で、5~6年前までならいざ知らず、アメリカに渡米してからは母親の名前を口にすることさえなくなっていた。
 以前は、寝室のベッドに隠して、時折盗み見ていたはずのつくしの写真さえ、クローゼットの奥底へ放置したまま省みることはなかったようだ。
 NYからイギリスに渡る時に、使用人が戒の荷物を荷造りした際、戒自身から捨てるようにと指示を受けた荷物の中にそれらの写真が紛れ込んでいて、一応中身を確認した戒つきの使用人が司に報告してきていた。
 ―――その写真はいま、司の手元にある。
 「マジで、偶然だったってか?」
 信じられない話だ。
 しかし、彼とつくしが出逢ったのも、ホンの偶然だったというのなら、何事もありえない話などないのだろう。
 …逢いたい。
 心の奥底で獣が泣き叫んでる。
 彼女に逢いたいと。
 凍えてもはや何も感じなくなっていたはずの心が、ホンのわずか彼女の息吹を感じただけで息を吹き返して、声高に自身の欲望を喚き立てる。
 「逢いたい、逢いたい、逢いたい」
 …本物のお前に逢いたい。
 狂おしいほどに。
 …いや、まだ耐えられるはずだ。
 類とつくしが別れたことを知った時ですら、荒れ狂うその想いを抑え込むことができたのだから。
 本当は、即座に彼女の下へと駆けつけ、今度こそお前は俺が守る…だから、そばにいてくれと足元に額づいてでも懇願したかった。
 しかし幾重にも自分へと架した安全装置が功をなして、そんな愚挙を侵さずに済んだ。
 類がもはや彼女から手を引いたというのなら、自分が見守り苦難があれば手を差し伸べるべきだという欺瞞さえも一蹴して。
 おそらく一度それを自分に赦してしまっていたら、また再び保護という名の監視を始めてしまっていたに違いなかっただろう。
 …あいつが望みもしていないのに、そんなことをしてどうする。
 再び自分の手の内に囲って、自分の妄執にまた再び縛り付けようとでもいうのか。
 だが、戒が関わっている。
 どうするべきか。
 いつもは私情など排して、最善の方法が思い浮かぶというのに、その選択肢さえ思い浮かばなかった。
 今彼にあるのは、いかなる言い訳を持ち出しても彼女に逢いたいというその願いだけ。 …ざまあねぇな、この俺が。
 高校生の頃の、つくしに恋焦がれてがむしゃらに彼女を求め、彼女を奪って壊した少年の日の彼と少しも変わることができていない自分を嘲笑う。
 司は組んだ両手に額を埋め、目を瞑って、今写真で見たばかりの…愛する女の残像を大切に抱き締め、今はただ自分に赦されたその唯一の幸福に耽溺した。




*****




 そろそろ時刻は14時をすぎ、続々と通園のお迎えの車が門外の駐車場に集まり出している。
 目的の人物は以前に出くわした時の様子から、歩きでの通園のはずだとあらかじめ目算を付けていた。
 そうでなくても、すでに調べさせていたことであったから、わざわざこんなところで待つ必要もなく、直接家を訪問することもできたのだが、下手に家の前で待ち伏せをして騒ぎ立てられてしまう可能性もある。
 人は自宅などの自分のテリトリーでは、強気になれるものだ。
 だから、人にものを尋ねる時には、人目を気にするような公共の場所の方が望ましい。
 相手にとっても、自宅を知られ押し入られるような脅威を感じるよりも、戒の望みを叶えることで解放されると安心しやすい外の方が尋ねられたことにも答えやすいだろう。
 相手にとって、その質問に心理的抵抗があればなおさらのことだ。
 だからこそ、戒はこの場で待ち伏せすることを選んでいた。
 何が飛び出してくるのか。
 …ま、あんがい俺の気にしすぎで、大したことじゃない可能性もあるけどな。
 そんなはずがないことをどこかで予感しながら、それでもそんなことを思う。
 ―――そもそも、あなたのお母様が望んでいたことなのよ。
 『若奥様は…つくしさんは、司さんと離婚したがってらしたの。それなのにあの人はそれに応じなかった。あの人が応じなければ、どんなことも適えられないことは誰もが知っていることよ。だから、私とつくしさんで協力して、あの人を罠にハメたの。私はあの人が欲しくて、つくしさんはあの人と離婚したかったから。それなのに、私だけが…罰を受けるなんて、罰を受けてあの人に疎まれて、佑都まで失ってしまうなんて、そんなの不公平よ』



◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ




web拍手 by FC2



関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0846】へ
  • 【愛してる、そばにいて0848】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

こんにちは

こ茶子さん、こんにちは♪
つくしの‘今’を感じることができた司の気持に涙し、ホッと安心も。
午後から仕事の私ですが、久し振りに心穏やかに働けそうです^^
戒はつらい日々が始まるのかな?
まだ14歳。保護者の庇護なくしては折れてしまいます。
今の戒には、司だけでなく、つくしがいます。ちょっと安心してる私がいます。
甘い(?)^^;

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0846】へ
  • 【愛してる、そばにいて0848】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク