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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽②

愛してる、そばにいて0845

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 春樹という名前の子供は、大人しそうな外見とは裏腹に、わりに社交的らしくすぐに公園の中で似たような年代の子供を見つけて、遊具で遊び出した。
 戒が知らない鬼ゴッコのようなやり取りで、最初は二人だったのが、三人、四人と増えるのを見るにつけ、自分の幼少期とのあまりの違いに目を細める。
 戒は春樹とあまりに違った。
 自身の持つ人見知りする性格や、その性格に反して他人のいいなりにはなれない勝気さや時にワガママと取られてしまう自我のハッキリとした部分だけのことではなく、周りの子供たちとは一線を画す美貌や知能の高さが壁を作っていた。
 稀にそれを乗り越えてくる春樹のような子供たちもいたが、大抵は彼の生まれを知るとその親たちが彼らを遠ざけるか、無用なおもねりを教え戒をさらに頑なにしたのだ。
 幼い子供にとって聡明であることは、けっして幸福なことばかりではない証明であるかのように、いつの間にか戒は自ら孤立し、他人に期待することを徐々にやめてしまっていた。
 どうせ人間は誰も彼も自分勝手で醜い生き物なのだから、その醜い生き物の関心を得ることになんの意味があるだろう、と。
 けれど、どこかの誰かが…心理学者が言っていたことだったが、人間は一人では生きることができない生き物だからなのか、どうしても一人っきりで生きることのできない弱さを戒は自覚していた―――自嘲とともに。
 容易に手に入る自分の生まれに関心のある人間たちをいらないと拒絶しているくせに、ないものねだりで、自分を好きにならない人間ばかりを欲しがっては、いつも飢えて枯渇している。
 誰かを愛したい。
 ―――愛した誰かに、愛されたい。
 誰にとっても簡単なことが、戒にとってはもっとも難しいことだった。
 「あんた、マキさんの姉妹かなんか?」
 ベンチに座って自分の息子を見守っている女の真横に腰を下ろして、尋ねかける。
 女…ひなと名乗った、自分を居候させている女の身内は、やはり他の人間同様、気後れしたように彼の顔を見ていたが、それでも意外にその息子と同じように大人しそうな外見に反して図太い性格をしているのか、戒の質問にも妙に堅くなったりおもねったり、あるいは挙動不審になることもなく素直に応えた。
 「え?マキさん?…マキさん」
 「なに?」
 「あ、いえ。…なんでもないの、ごめんなさい。えっと、そう。あたしは、お義姉さんとは義理の姉妹にあたり、ます、弟の嫁だから。それで、もう一人一緒にいた人は、お義姉さんのお母さんで私のお姑さん」
 ひなの探るような眼差しの意味を考えながら、頷く。
 …俺が、どういった種類の人間か探りを入れてるのか?
 それにしては、彼がよく知る身近な同級生たちの卑しいものを含んで、ねっとりとまとわりつくような視線とはまるで種類が違うように思える。
 …なんだ?この女は俺を知ってる?
 ふいに思い浮かんだ感慨は、日本を訪れて以来初めて感じるものではないことに気がつかされる。
 徹しかり。
 英徳学園の生徒たちしかりだったが、よくよく考えてみれば、そもそも自分を黙って住まわせている家主の女もそうだった。
 父親の親友の総二郎の知人なのだから、それもありえない話ではないかと見逃したのだが。
 本当は自分が正解をわかっていて、あえて無視をしていることを戒は自覚したくなかった。
 だから、徹のことは調べさせておきながら、自分を見る‘マキ’の眼差しと慈愛の意味に不審と予感めいた何かを感じながら、彼女を調べさせていないのだ。
 今の戒には容易なことだというのに。
 知りたいのに知りたくない…まるで、父に、すべての真実を知っているはずの男に、その真実を尋ねることができなかった時のように。
 「えっと、わかる、かな?」
 「それはわかるよ、顔そっくりだったし、年齢もそれくらいだっだろ?」
 目の前の女は30才そこそこか。
 戒にとって、十分オバさんと言っていい年齢だが、女の年齢になど興味のない彼にとっては特にそれでどうだということもない。
 周囲は年上好きだなどと誤解しているが、戒にはそんなつもりはなかった。
 ただ近づいてくる女たちの中で、若く野心に溢れた少女たちとは違って、彼を手に入れようとはせずに、たとえペットのような扱いであっても彼に多くを望んではこないから楽だったというだけのことだ。
 年上の女たちは、彼の容姿を愛でて、彼の人見知りの激しさや気まぐれなワガママも優しく赦してくれる。
 ‘マキ’とひなとでは顔がまるで似ていなかったから、姉妹というよりはもっと遠い親戚か、あるいは友達かもしれないとは思っていた。
 だが、どちらかといえば弟嫁だと言われるよりも兄嫁だと言われた方がしっくりとする。
 …マジ、若いよな、あの人。
 どうも日頃の彼女の話からして子供もいるらしいのだが、その子供と暮らしていないせいなのか、無邪気で若々しく、彼女の童顔とあい余ってとても年齢相応には見えない。
 戒の義母の滋も若いが、そうした若さとはまた違っていた。
 「えっと、戒くんはどうして?」
 「どうしてって?」
 「あ~、そのなんていうか」
 言葉に詰まっているらしい。
 それもそうだろう。
 30代も半ばのヤモメの義姉に、そぐわぬ十代の少年がまとわりついているのだ。
 やはり最初に感じた印象通り、意外に臆面のない性格らしく、気後れしたように言葉少なかったのはその最初だけで、戒の方が話しかけてきてわりに普通に話しているせいか、逆に質問までも投げかけてくる。
 それとも戒が感じたように、ひなもまた戒を知っていて、それなりの免疫があるだけなのか。
 むしろ自分がこうして初対面の女を相手に、曲りなりにとも会話をしていることの方が珍しい話なのだが、それもおそらくこの女自身への興味や親しみではなく、自分が世話になっている女のせいだ。
 「お義姉さんとは?」
 「どうして?マキさんといるのか?」
 「そ、うかな?」
 「彼氏だから?」
 戒の返答に一瞬キョトンとして、
 「え?彼氏?ふふふ、そんな冗談」
なぜか笑われてしまった。
 子供だから信用しなかったというより、最初からありえない話だとでも言うように一瞬でも驚きもしない。
 「信じないんだ?」
 「だって、信じるもなにも、ありえないことだもの」
 ムキになるほどではないが、それでも子供扱いされたり侮られることが面白いはずもない。
 「俺がガキだからかよ?ガキでもヤることはヤれるけど?」
 年上女たちが好む顔をわざと作って、誘惑するように笑ってやる。
 いくらか彼の個性の圧迫に慣れて、解れていたらしいひなが瞬時に顔を強張らせて、ついで真っ赤になる。
 当てられたように彼から顔を反らしては、チラチラと彼を覗き見て、すぐに気後れしたように彼の視線を避けてドキマギしているその様子から、彼女が戒を子供だと侮るばかりではなく、彼にある一定の魅力を認めていることがわかった。
 それなのに…。
 「俺がマキさんの恋人だっていうの信じた?」
 「そんなまさか…だって、ありえない話じゃないの」
 また、ありえない、だ。
 頑なに信じようとしない。
 「ありえないって、どうして…」
 ―――ありえない話なんだ?
 それは…、
 「あ―――ッ!!ひな先生だぁ!!春ちゃんもいるぅ!」



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