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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽②

愛してる、そばにいて0841

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 その知らせを最初に持ってきたのは、例によってあきらだった。
 あきらの婚約者がつくしの友人だったから、ということもあるだろうけれど、あのマメな男はやはり同じくマメな総二郎ばかりではなく、司や類にも折に触れ連絡を入れてくる。
 それは情報交換という意味合いもあったには違いない。
 しかし、それだけではないあの幼馴染みの友愛の成せる情からくるものだっただろう。 そうは言っても、互いに暇な身の上ではなかったから、あきらが事の次第に気がついたのも、類とつくしが別れてすでに1年以上がすぎて、どうも静の離婚調停に関係して花沢物産を出たらしいという情報が入ってからのことだった。
 仰天したあきらが類に連絡を入れた時には、すでに類は花沢物産の副社長職を退いて、隠遁同然にイタリアに引きこもり、醜聞を恐れることなく静や彼女の産んだ娘を呼び寄せて暮らしていた。
 …どれだけあいつをブッ殺してやりてぇと思ったことか。
 類にしてみればいい迷惑には違いない。
 類がつくしとそのまま所帯を持っていたとしても、嫉妬と羨望で司はきっと同じように思わずにはいられなかっただろう。
 「それでも…ヤツだから任せられた」
 類だからと、安心できたのだ。
 だが、類はつくしを裏切った。
 それはつくしばかりか、司への裏切りでもあり、当然、そのことを知った時、無様を承知で彼は類に連絡を取った。
 親友同士とはいえ、冠婚葬祭や必要最低限でしか連絡を取り合うことなどめったにない司が、わざわざ連絡してきたことをまずは驚き、久方ぶりの挨拶もそこそこに司がつくしのことで捲し立て責めたことに対して、類はあくまでも冷静で素っ気無かった。
 今でもその時のことを思い出すと腹立ちを抑えることができない。
 ―――俺とつくし、俺たち二人だけのことだから。
 そう類は彼を突っぱねたのだ。
 自分たち二人が納得し合っていれば良いことで、部外者の司を納得させる必要もなければ、詳しいことを話す必要もない、と。
 たとえ親友同士であっても、理性では理解できたが、感情がそれを許せなかった。
 だが、花沢物産に打撃を与えようにも、すでに類は家を出ていて、おそらくそこに圧力を加えたとしても世間体が道明寺を非難するだけのことで、彼よりもさらにドライな類にはまったくどんな痛痒も感じることがなことは、誰よりも司の方がよくわかっていることだ。
 そしてなによりも、万が一にもそうしたことがつくしの耳に入ることを恐れた。
 類と離れたならば、一般庶民出身のつくしが、彼らの世界のことなど知る由もないことだというのに。
 …あいつは、俺が類に報復することを喜ぶような女じゃねぇ。
 それどころか怒り、……哀しむことだろう。
 『しっかし、司、まさかお前が今更またつくしのことで連絡してくるとはね』
 歯噛みする司に、類は苦笑していた。
 『てめぇとはもう親友でもダチでもねぇ』
 『……そう。てっきり俺がつくしと結婚するつもりだと言った時に、そう言われるかもしれないと覚悟してたのに、その時には言わなくて、あいつと別れたから、お前は俺にそう言うんだ?』
 『はあ?てめぇ、わけのわかんねぇこと言って、俺をケムに巻くつもりか!?ふざけんなよ、類っ!!』
 類の言いたいことを理解することよりも、自分の憤りを堪えられずに、怒りのままに類を怒鳴りつけ、罵倒のかぎりを尽くした。
 …ふ、ガキか。
 絶交を取り消すつもりはないが、それでも自分がこれまでの類へと嫉妬や憤懣を、半ば八つ当たりで吐き出したに過ぎないことは、司自身自分が一番よくわかっていた。
 だが、電話を切り際、類が密やかな声音で呟いていた言葉が不思議に耳について離れない。
 『司10年だよ…いや20年か。20年って長いと思わない?人ってさ、変われないものもたしかにあるけど、よほど執念深くても、20年も昔のままの気持ちをそのままで保ってたり…引きずっていられる人ってそうはいないんじゃないかな。まあ、お前は違うかもしれないけどさ』




*****




 久しぶりに一人っきりの夜。
 ずっとこの2年そうして暮らしてきたというのに、たった一ヶ月程の間そうではなかったから、それがとても寂しく孤独が身に沁みた。
 …うう、ダメよ、ダメ。
 こんなことでは、この先どうするのだと、両頬にパチンと平手を自分で打ち付けて、つい誰もいない真っ暗な部屋で虚ろになってしまっていた自分に活を入れる。
 戒と二人、レトロな老舗の遊園地で午前中から夕暮れ近くまで遊び、そのまま近場のスカイツリーまで足を伸ばすかとも話していたのだが、あいにく戒は夜からどうしても外せない相手からの招待を受けているとかで、スカイツリーに寄ることもなくパーティに出席するために帰宅していた。
 …なんだかんだ言って、そこらへんはやっぱり道明寺家の御曹司として頑張ってるんだよね。
 グレて荒んでいた高校時代の司が、それでも自分に架せられた役割を果たしていたように、戒も熱心とは言い兼ねるようだが自分に架せられた役割は果たしているようだ。
 つくしの家に泊まるようになってからも、何度かそうしたパーティに出席するために帰宅していたが、それでも身支度の為とつくしとの約束―――外泊するのなら外泊するで親に心配をかけないように、留守がちな親にではなくても屋敷の人間に最低限顔を出すだけ出して、まるでつくしの家の方が実家であるかのようにとんぼ返りで戻ってきていた。
 けれど、今夜招待を受けている相手は、NY時代にも世話になっていた人物だとかで、場合によっては泊まるように引き止められるかもしれないからとあらかじめ言いおかれている。
 …なんかまるで、恋人を待ってるみたいだよね。
 そんな戯言を一人で思って、失笑してしまう。
 戒の言うとおり、招待側はよほどの人物だったのか、道明寺邸からは家令がわざわざ戒を迎えにリムジンで訪れていた。
 それにはさすがのつくしもヒヤリとさせられた一幕があった。
 戒のことで道明寺家の人間が初めて訪問してきた時には、道明寺家の古参の使用人である家令もちょうど所要で海外に出かけていたとかで、次席にあたる執事長が訪れたのだが、この執事長とはつくしも面識がなかったから事なきを得ていたのだが。
 …ヤバかったわよね。
 ちょうど、家に戻って来たところで出くわしたので、家令とは外での面会だったが、20年前に屋敷にいた人物ではなかったようだが、それでもどこか顔に見覚えがあったから、あるいは10年前司の妻時代にいた使用人だったのか、まともに面と向かって顔を合わせていたら、つくしに気がつかれていたかもしれない。
 思いの他日差しも強かったことから、戒からプレゼントされた帽子を被り、日焼けに火照った顔を手で隠すようにして話していたし、相手も使用人という立場からだろうガン見するようにしては見られなかったので気がつかれてはいなかったとは思うが、それでも探るような目で見られている気がして、つくしは正直気が気ではなかった。
 …もし、私だとバレて司に連絡されてしまったら。
 戒の出入りが禁止されるどころか、きっと会うことすらもう許されないだろう。
 それ以前に、
 …戒はきっともう会いに来てくれなくなる。
 戒がハッキリと産みの母親について彼女に何かを言ったというわけではなかったけれど、それでも彼が自分を置いて出て行った実母に対して隔意を持っているらしいことは、なんとなくこれまでの彼との関わりからつくしにも窺えていた。
 …私のことを恨んでいるのかもしれない。
 あるいは憎んでいるのだろうか。
 まるで最初からそんな女など存在しないかのように、どんなに彼女と親しくなっても戒は自分のことや実母のことは話そうとしなかったが、それでも感じ取れるものがある。
 戒が母親と呼ぶのは、常に‘滋’なのだ。
 …ホントに私のことを全然憶えていないの?
 顔やどういう女だったか憶えていないにしろ、自分を産んだ女が今いる母親とは別にいることくらいは憶えているはずなのに、戒は奇妙なくらいに自身の中から、つくしの痕跡をキレイに消し去っていた。
 その方が戒のためにはいいことだと納得している自分と、ひどく切なくて辛い自分がいる。
 相反する二つの想い。
 もしかしたら、そんな女など自分には不必要だからと忘れ去られていることよりも、つくしは戒に恨まれて、―――憎まれていたかったのかもしれなかった。
 憎しみは愛の裏返しだから。
 …司、あんたもそう思った?私のことを。
 ふいにそんなバカなことが思い浮かんで、つくしは一人狼狽した。
 トゥルルルルルル、トゥルルルル――、
 「あ!」
 昏い思念の間に入り込んできた携帯電話の呼び出し音に、着信の相手も確認せずに慌てて電話をとる。
 「は、はい、もしもし?」
 『……つくし?俺』



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