「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽②

愛してる、そばにいて0839

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 「どうだろうな」
 かつての戒は、つくしを追い出した…追い出したと思っていたことで、司を恨んでいただろう。
 訴えかける眼差しが、いつも「なぜ?」と彼に問いかけ続けていた。
 しかし、司には答えてやれるべき言葉がなかった。
 罪にまみれ、その罪をウソで塗り固めて、戒の母親を欺き、本来受け取るべきでない彼女の愛情を搾取し続けてきた彼には、大切な我が子に、その真実を伝えることなどとてもできなかったからだ。
 …あいつがまだ幼かったから?
 とんだいいわけだ。
 それこそ欺瞞であり、単なる卑劣で臆病な自己保身のいいわけでしかないことなど自分が一番よくわかっている。
 ただ、最愛の女が残してくれた息子に嫌われたくなかった。
 卑劣な男よ、なんと醜悪な男なのかと、蔑まれ憎まれたくなかったのだ、きっと。
 かつて、自分をヒーローのように慕ってくれた息子にそんな目で見られたくなかった。。
 だが、現在の戒は、司ですらその心うちを覗かせない。
 年上の女を好み、気が向けばそれなりの付き合いをしているところからして、幼くして別れなくてはならなかった母親への思慕を転嫁しているようにも思えたが、だからといって、年上の女を好む男が必ずしもそうだとは限らない。
 …あきらみたいなヤツもいるしな。
 『あいつ、本当にお前の息子か?』
 「なんだ?」
 戒の容姿を見て、司の子かと疑う人間はいない。
 つくしを疎んじて排除した楓や、司の父親さえも。
 だが、総二郎が言いたかったのはそういうことではないらしい。
 『高校ん時まで、戒の母親と出逢うまで、女に興味の欠片どころか毛嫌いしていたお前の息子とはとても思えねぇんだよな』
 「ふっ」
 司にも総二郎の言いたいことがわかった。
 「あいつ、年上の女としか付き合ったことがないらしいな」
 『はあ?あいつもマザコン野郎かよ。あきらと話が合うんじゃね?』
 本人が聞いたらどちらも怒りそうなことを笑い話にして、その場の空気が緩む。
 もちろん、深刻になりすぎる事を嫌っての、総二郎なりの気遣いであることも承知していて、司もそれに乗った。
 『しっかし、戒がいたイギリスのパブリックスクールって全寮制の男子校だったんだろ?』
 「ああ」
 『よく女と接触する機会があったな。逆にアッチ方面のヤツがわんさといそうじゃね?』
 総二郎の声音に、いかにもイヤそうで、言葉尻に隠せない怖気が混じっている。
 司も女嫌いとはいえ、ゲイではないのでその気持ちはわかるが、女好きの彼とはまた違う感性を持っていたし、ゲイフォビア※1ではとてもここNYで暮らしてなどいられない。
 彼のアップルのCEOやディズニースタジオの元社長ですらゲイであることをカミングアウトしている世の中なのだ。
 「……その答えが、そっちにいんだろ」
 『は?もしかして、どっかの有力者のバカ息子にでも迫られて、半殺しにしたから日本に戻したのか?』
 「半殺しにまではしなかったみたいだが、それくらいの勢いで親が怒鳴り込んできたな」
 実際に怒鳴り込んできたわけではなかったが、正式に弁護士まで立ててきたのだから似たようなものだろう。
 「もちろん、あっちのガキにも非があってのことだ。単純に醜聞を恐れての手打ち目的で事を荒立ててきただけで、本格的にウチに喧嘩を売ろうとかそういうつもりじゃなかっただろうけどな」
 『まあな。道明寺財閥だけならまだしも、大河原財閥まで敵に回して涼しい顔してられるところもそうそうねぇだろ。…つーか、相当なのヤっちまったんだな、戒のやつ』
 おそらく道明寺-大河原の二大財閥の後継者と目されている戒だからこそ、双方痛み分けの自主退学での手打ちとなったが、大概の家の息子は泣き寝入りだっただろうほどの家の人間だったことが戒の不運だった。
 …不運?本当に?
 戒はかつての少年の頃の司とは違って直情型ではなかった。
 やはり血なのか、時折どうしても激情を堪え切れないこともあるようだったが、思春期の青少年としてはそう珍しくもないことだろう。
 『あいつ、たしかかなり努力家だったよな?これもお前の息子らしからぬところだけどよ』
 「ほっとけ。…ま、母親の血だろ。セカンダリースクール※2に編入したばかりの頃までは、けっこう大真面目に、さっさと中等教育はスキップしちまって一足飛びに大学に入るつもりで頑張ってたみたいだけどな」
 実際、それだけの能力もあった。
 その上努力家とあれば、能力が開花しないはずもない。
 それがいつの間にか、その努力をすることそのものをやめてしまっていた。
 …やりたくないものは無理にやる必要はねぇが。
 だが、挫折とかそういうものではなく、ただ生きる気力…いや、未来に立ち向かう気力そのものを失ってしまったように思えた。
 自分自身の経験からある程度それも理解できたが、司にはなぜなのかどうしても戒を理解しきれないものが少なくなかった。
 それは生まれながらにサラブレッドとして人々の上に君臨することを当たり前として自他共に認められてきた司と、ハイブリッドでありどちらの眷属からも異端視され、排斥されてきた戒の悲哀と孤独、失望だとは、司にわかりようもないことだったのだ。
 「日本にやることで、何かが変わる気がした…とか言ったら、お前笑うか?」
 『それって、お前』
 何がどうというわけではなかった。
 司とは違って幼い頃から海外を転々としていた戒には、日本が母国という意識すらなかっただろう。
 けれど、NYやロスアンゼルス…アメリカではダメだった。
 そして、新天地としてまるで縁のないイギリスでも戒は自身を立ち直らせられる何をも見つけることがでなかったのだ。
 だから…。
 …あいつがいる日本なら。
 たとえつくしと再会することが適わなくても、あの太陽のような女が生まれ育った地でなら、戒もまた再生できる、再生するための誰かに出逢う気がした。
 …俺も、あいつに日本で出逢った。
 日本で、東京で。
 彼女にとって、それはけっして寿ぐべき縁ではなかっただろうが、司の生涯にとってその出逢いだけがすべてだったから。
 『学校にはまともに通ってんのか?』
 「…俺ら程度には?」
 『ぷっ、俺ら程度か、そりゃすげぇや』
 大学に入るまでは、暇潰しにしか学校に通わなかった彼らだ。
 気が向いた時に、気が向く範囲で学校にいただけで、ほとんど親友たちと無駄な時間を怠惰に過ごしただけでなんの益にもなってはいなかっただろう。
 ましてや、戒には司にとっての総二郎やあきら、…類のような存在がいない。
 なおさら学校へ行く意味など見いだせてはいなかっただろうが、それでもそれなりに‘滞在’しているのだから、司からしてみれば大したものだった。
 …何のために。
 果たして、戒はいったい何のために学校へ通い続けているのか。
 昔のようながむしゃらな情熱もなく、ただの習慣としてでも。



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※1ゲイフォビア…同性愛者嫌悪症の意。憎悪に近い。
※2セカンダリースクール…イギリス教育において、小学校を卒業後の4年間、16歳(日本の高校1年生)まで。ちなみにパブリックスクールは13歳~18歳の子供の教育機関。
(かなり戒はあっちこち海外を転々としている設定なので、日本の教育制度やら、アメリカやらフランスやらごっちゃまぜになっているのはご容赦を^^;)



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こんばんは

こ茶子さん、こんばんは♪
>「日本にやることで、何かが変わる気がした…とか言ったら、お前笑うか?」
他の誰が笑っても、総二郎だけは笑わない‥
明朝の更新、楽しみです★

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