FC2ブログ

「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽②

愛してる、そばにいて0833

 ←愛してる、そばにいて0832 →愛してる、そばにいて0834
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「いくら世間では揉み消したって、人の口に戸は立てられないっ。栄林の父兄にも英徳の卒業生がいるんだから、どんなに隠したって一度犯した罪…………っ、きゃああぁっ!!」
 グワッシャーンッ!
 萌奈の足の横スレスレを通った花瓶が、背後の壁に当たって激しい破砕音を立てて割れ、周囲に四散する。 
 「きゃっ!痛っ」
 しゃがみこんで頭を抱え込んだ萌奈が、小さく悲鳴を上げ、瞬間に走った鋭利な痛みに、咄嗟に自分の足首に手を伸ばす。
 その手には、破片で切ったらしい傷口からわずかに流れた血がついていた。
 その赤い血の禍々しさに、萌奈が「ひっ」と弱々しい引き攣った悲鳴を上げ、ヘナヘナとその場で腰を抜かしてしまう。
 恐る恐る萌奈が振り返った彼女の背後、階段の踊り場には、戒の投げつけた花瓶が粉々に飛び散って、床に破片が散乱していた。
 「口には気をつけたほうがいいぜ?いくら内輪の話だからといって、どこでどう噂を立てられるかわからない。人の口に戸は立てられない……だろ?」
 怯えて蹲っている萌奈を冷たくいちべつし、戒は今度こそ踵を返した。 
 「この悪魔っ!あんたなんか大っ嫌い!!親子ともども地獄に落ちろぉっ!!」




*****




 「どうしたの?なんか元気ないわねぇ?」
 ソファの背もたれに乗せて組んだ両腕に顎を置き、ぼんやりと動き回る女を眺めてた戒の顔を、いつの間に歩み寄ってきたのか、小首を傾げて覗き込んでくる。
 「…別に」
 そんな彼女の心配が鬱陶しくて、邪険に顔を背け、ソファに座り直す。
 二人がけのソファは戒には迫っ苦しいが、さりとて彼女が見えないところにいるのはなんとなくイヤだったから、必然この家にいる時の彼の定位置となっていた。
 「なに?さすがにお家で怒られでもした?」
 表情や態度に某かの変化を出したつもりはまったくなかったし、戒自身も彼女の言うように特に元気がないとか、何かを考えていたつもりはなかったから、まったくの彼女の言いがかり…杞憂に過ぎなかったけれど、こうして時々彼女は敏感に何かしら彼の変化に気づき、声をかけてくる。
 これまで誰も彼の些細な変化に気づく人間などいなかったというのに。
 「怒られるもなにも、俺がどこにいるか、何をしてるかなんてどうせとっくに把握されてて、いまだに拘束されてないんだから、それでかまわないってことなんだろ」
 「…拘束って、なんか凄い形容なんですけど」
 凄い形容もなにも、いざとなれば彼の父親ならそれくらいのことはするだろうし、そうでもされなければ今の戒が父親に従うことはなかった。
 「それにあんたの行動を把握されてるってことは、なんだかんだ言って、ちゃんとおうちの人に自分のこと報告してたのね、あんた」
 常々、この家の家主である彼女は、泊めてもいいがそのことを家に報告しろ、親元ではないからといって怠惰な生活をしたり親が心配するような行動はするなと口を酸っぱくしていた。
 それこそ、彼女のほうがまるで親のような口煩さだ。
 そんな彼女が鬱陶しくて煩わしく思うのに、戒はなぜかこの家を出てゆく気になれないでいた。
 …ジーナとは全然違う。
 好きにしろと戒を自由にさせてくれていた代わりに、彼の心や気持ちに無頓着だったあの少女とは。
 「えらいえらい」
 子供扱いには閉口させられるが、うんうんと頷いて彼の頭を撫でる彼女の言動こそ子供じみ微笑ましく、…その小さな手の温もりが心地良く手放しがたい。
 どうやら彼女は、戒が自発的に家に連絡を入れてるものと勘違いしているようだが、今の彼が自分から父や滋、使用人たちに何かを言いおくということはない。
 そうなると、必然的に彼の行動を把握するために、父親が彼をスパイしているだろうことを戒も承知していた。
 「で?じゃあ、どうしたの?」
 「別に」
 さっきと同じ問答を繰り返す。
 「だから、もうっ、別にじゃないでしょ!なんでもないなら、外に遊びに行け!友達とでも会ってこい」
 「…かったるい」
 「あんたねぇ。まったく、いつもウチにいる時は、のんべんだらり寝そべってばかりいるけど、いい若いもんがするようなことじゃないでしょ?」
 「ぷっ、なんだよ、それ、いい若いもん…って、マキさん、オバさんくさ」
 「煩いわね。あんたくらいの年頃の子にしたら、そりゃ私なんてオバさんでしょうよ」
 「オバさん臭いって言っただけ、誰もオバさんだなんて言ってないだろ?……意外に、マキさんて卑屈なんじゃない?」
 また生意気だとでも思っているのか、ムッと唇をへの字に歪めて、キッチンへと戻ってしまう。
 それがなんとなく、寂しくて、
 「今日の朝飯なに?」
かまって欲しくて、引き止める自分の子供っぽさに、これでは本当にガキそのものじゃないかと自嘲する。
 「ん~、さやいんげんを卵で綴じようと思ってるんだけど、あとはいろいろ?」
 「いろいろってなんだよ?」
 「いろいろよ。あり合わせで作るんだから、あんたが普段食べてる高級フレンチみたいな、特別な名前なんてついてないわよ」
 キッチンに戻ったと思ったら、すぐにボールを抱えて戻ってくる。
 「はい」
 「はい?」
 「ヒマそうだから、あんたそんなところでボウッとしてるくらいなら、手伝いなさいよ。そこでいいから、これのスジ剥いて?」
 ドンッとコーヒーテーブルに置かれたボールと、にっこりとドヤ顔で笑う女の顔を交互に眺め、戒は仕方なく息を大きく吐き出し、サヤインゲンに向かい合う。
 「これ、どうやって剥くの?」
 「え?わからないの?」
 「わかるかよ」
 日頃お坊ちゃまだと揶揄るくせに、どうしてそのお坊ちゃまである自分がサヤインゲンのスジの剥き方など知ってるものかと、憮然と睨みつける。
 「う~ん、わからないのか。…そうか、そうだよねぇ」
 なぜかガッカリしてる風情の女の顔を怪訝に見ると、はははと力なく笑い、女自身も彼の向かい側に腰を下ろしてサヤインゲンの一つを手にとり、スジを剥いてみせる。
 「あんたならできると思ったのになぁ」
 「なんだよ、それ」
 「ま、いいわ。しょうがないことだもの。ほら、ここに爪入れて引っ張ると、ちゅる~っと簡単に剥けるから、裏表両方やっておいてくれる?」
 「…了解」
 どうせイヤだといっても、働かざるもの食うべからずとかなんとか言われて、殴られるのがオチなのだから、諦めてさっさと指示通に従った。
 「あ!そうだ」
 「……………?」
 「そんなに暇ならさ?」
 「暇じゃないって」
 「ダラダラしてるんだから、暇なのよ。せっかくのお天気なんだし、お弁当持って遊園地にでも遊びに行こうっか?!」



◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ




web拍手 by FC2



関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0832】へ
  • 【愛してる、そばにいて0834】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0832】へ
  • 【愛してる、そばにいて0834】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク