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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽②

愛してる、そばにいて0830

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 何が戒の心の琴線に触れたのか、彼が執着した人間は実母のつくしを除けば、あの娘…ジーナだけだった。
 しかし、司がその娘を戒から引き離した。
 …後悔しているわけじゃねぇが。
 間違いではなかったはずだ。
 たとえ戒に恨まれることになっても、戒を愛してはいなかったジーナを放置して、戒の周りにウロつかせるには、あまりにあの娘はいろいろなものを背負い過ぎていた。
 …ふっ、まるであの女そのものだな。
 自分のそんな思考が、かつて自分が毛嫌い、今尚、断絶している自身の母親を彷彿とさせて自嘲する。
 楓はつくしに手を貸し、彼からつくしを解放して、見事彼女を道明寺から放逐することに成功した。
 司を愛さず憎む彼女を、司の為にはならないとして。
 本心はともかく、ジーナの一件の後も、戒はに自分に架せられたものをそれなりに淡々と果し続けた。
 特に目立った問題を起こすこともなく、そのままだったら高校を卒業するまでイギリスで過ごし、他のパブリック生たちの大半同様、オックスフォードなり、ハーバードなり道明寺財閥次期総帥に相応しい大学へと進学して、司が本来辿るはずだった道明寺財閥の後継者に相応しい道筋を歩むことになったに違いない。
 司は特に戒に後継者としての役割を押し付けるつもりはなかったが、戒からは拒絶にしろ待望にしろ、明確な意思表示を受けていなかった。
 それでもイギリスに行くまでの戒にとって、道明寺財閥の…司の次の総帥、後継者であることにこだわっているようだったから、司もできるだけ彼のバックアップに努め、後顧の憂いなく戒が自分の跡を継げるように地盤を固め、道を均しているつもりだったのだ。
 しかし、今の戒は、それされもどうでもいいように司には思えていた。
 ただ生きているだけ。
 目的もなく、だからといって溢れかえる希望に満ちて未来を模索しているというわけでもなく、戒はただ日々をこなしているだけ。
 司のような荒れ方をしてはいなかったが、それでも戒の心が荒廃しているのは間違いなかった。
 飢えて枯渇して…自分自身を持て余し、倦んで、虚無と孤独に沈んでいる自分の息子。
 だが、
 …どうしてやればいいのかわからねぇ。
 司が戒に手を差し伸べてやるには、今や戒と彼との関係は、あまりに殺伐として、そしてたとえそう出来たとしても、自分自身の孤独や愛憎さえも上手く克服することができていない司には、あまりに難しいことだったのだ。
 「戒は?」 
 家令の言いよどむ沈鬱な顔に、何年か前、NYにいた頃の総執事長の顔が重なる。
 「…また外泊しまくってんのか?」
 「はい」
 だが、それだけではあるまい。
 戒の外泊は日本に帰国した直後から始まっている。
 カードの履歴から、メイプルや道明寺系列のホテル、別荘に泊まっていることもあったが、所在不明でどこで何をしているのかわからないことも少なくなかったのだ。
 もちろん、司も監視は怠っていない。
 司側にも事情があって、本来ならビチビチに警護するべきなのかもしれなかったが、自分や滋、萌奈にバリバリの警護をつけているのとは真逆に、司は戒にそれほどの警護をつける必要性を求めていなかった。
 一つには、戒自身が少年時代の司同様並みの人間に誘拐されたり、負傷させられるような少年ではないこともあるが、現在戒を置いているのが銃器を有さない日本であり治安面で海外ほどの不安がないことがある。
 だが、もっとも大きな理由は、彼がもっとも危惧している方面の人間たちはおそらく戒を取り込むことはあっても当面危害を加えることはないと目算していることだ。
 …むしろ戒は、自由に動き回らせていた方がいい。
 それらから、NYでのように戒にぴったりSPを張り付かせている…ということはなかったが、何度かSPをまかれてしまって以来、おおっぴらに監視員をつけていないというだけで、定期的には調査員は送り込んでいた。
 …たいていのヤツにヤられるようなヤツじゃねぇし、俺みたいな悪辣さを持ったヤツじゃねぇが。
 それでも、自分の少年時代を省みれば、戒が被害者になることよりも加害者になることの方も懸念しないわけにはいかない。
 「どうやら、ここのところ、同じお宅にお世話になっていらっしゃるようでして…」
 司の眉が跳ね上がる。
 家令の表情からして、英徳の学生や友人なわけではあるまい。
 「女か?」
 「…西門様のご友人だと伺っております」
 「総二郎の?」
 だが、総二郎の友人だと一口に言っても、それこそ行きずりの女の場合がほとんどで、若い頃ほどではないだろうが、それでも両手をあげて歓迎できる手合いではないことの方が多い。
 総二郎自身が噛んでいるのなら、さすがに司の息子にめったな人間を近づけるとは思えないが。
 「どういった経緯でその女と戒が知り合ったんだ?」
 特に総二郎からは何も聞いてはいないが。
 しかし、総二郎も暇なわけではない。
 学生時代とは違うのだ。
 戒が一ヶ月ほど前、何針も縫うほどの大怪我をしたことから家令の話が遡る。 
 「ああ、そのことは聞いていたか」
 たしか滋からも報告はされていた。
 刃傷沙汰の喧嘩などは初めてだが、生死を彷徨うほどの大怪我をしたわけてあるまいし、それくらいのことで司も戒を一々咎め立てて、籠の鳥にするほど過保護ではないつもりだった。
 そもそも、これまでも戒はけっして品行方正などではなく、なんどかそれなりに怪我をする喧嘩をしたこともあったし、当然相手に怪我をさせたことも片手で足らぬほどだ。
 それでも司自身の若い頃に比べれば、親が出るまでのほどではないと自由にさせてきた。
 問題になれば自分が出るつもりだったし、揉み消すこともやぶさかではないが、これまでの戒の素行から鑑みての信頼もそこにはある。
 …俺とは違う。
 「総二郎の兄貴の?」
 総二郎のことはあらかじめわかっていてことだが、家令の口から意外な名前が出たことにわずかに驚かされる。
 総二郎の兄の祥一郎が西門の家を出て、医師になったことは司も知っていた。
 この兄を司も知っていたが、総二郎とは違い実直で、富裕の御曹司に見合わぬ堅実で生真面目な性質の男だった覚えがある。
 「なるほど」
 家令から聞く範囲では、戒が世話になっているという女は、それほど怪しい素性や背景を持っているわけではなく、特に問題のある人物には思えない。
 だが、ジーナの例もある。
 また、いくら知人の友人の子供だからといって、未成年の少年を何日も自宅に泊め続けることを赦す女の行動は、常識的な人間のやることは思えなかった。
 常識とは縁遠い自覚のある司だが、そこらへんの平衡感覚は教育からある程度は学んでいる。
 …14でもとても大人とは言えねぇが、あいつがその女に入れ込んでいて、そうしたいと言うのなら、それはそれで仕方がねぇ。ペットをやっていようが、年増の女に入れ込んでいようが、俺も東面邪魔するような野暮をするつもりはないが。
 しばらく様子見するにしても、さすがに総二郎の愛人の間男をさせるわけにもいくまい。
 「どちらにせよ、一度総二郎とは話す必要があるか」
 あるいは、場合によってはその女とやらの顔を見に、彼自身が出向く必要があるかもしれなかった。



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NoTitle

こ茶子さん、こんにちは♪
う、うごき始めたのですよね!?
それにしても司の存在感はハンパないですね。

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