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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽②

愛してる、そばにいて0826

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 「おい、何テーブルに懐いてんだよ」
 総二郎が、呆れた声音で声をかけてくる。
 しかし、額を抑えたまま突っ伏して、その顔が上げられないのは思いもよらないことを言われたというより、図星をつかれたからだ。
 もちろん、戒が押しかけたきた初日、いささか強引な迫り方をされて以来、彼女がそうした関係を望んではいないと戒も納得してくれたのだろう。
 あっさりと鉾を収め、以来妙な気配は匂わせたりしていない。
 戒が自分で言ったとおり、彼女の意思を無視したりすることなく、ちゃんと尊重してくれていた。
 …けっこうフェミニストっていうか。
 あの司がそう躾けたとは逆に信じられないが、つくし以外の女にはかなり冷酷だった父とは違って、総二郎のように女好きだったり八方美人なわけはないが、戒は概ね女性には優しかった。
 「おいおい、こんなところで寝るなよ。まだ、大して飲んでねぇだろ?」
 「……寝てないわよ」
 「何してんの?マキさん」
 呼びかけられて、慌ててつくしが体を起こす。
 いつの間にかトイレから戻ってきた戒が、怪訝な顔で彼女を見下ろしていた。
 「酔った?」
 「あ~」
 つい総二郎を見やり、フられた総二郎の方は何食わぬ顔をしていたが、それでも話をフられたことに困ったようで苦笑して、
 「そろそろお開きにすっか。お子チャマはお眠の時間だろ?」
 言うにことかいて、戒をお子ちゃま呼ばわり。
 たしかに子供なのは間違いないが、わざわざ多感な思春期の少年にそんなことを言えば反発されるばかりに決まっている。
 …西門さ~ん。
 眉根を潜めて、戒の様子を窺う。
 「俺をお子ちゃま呼ばわりは本当の話だから特に反論しないけど、俺のせいじゃなく単にあんたがそろそろ健全な付き合いに飽きて、夜の街のお楽しみに繰り出したいだけの話だろ?」
 「………言ってくれるじゃねぇか。お前、かなり場数踏んでるわりに、経験はそうでもないだろ?」
 「ちょっと!」
 言うにことかいて、なんてことを聞くのだと、ギョッとつくしが総二郎を睨めつける。
 ニヤニヤ笑いの男は、酔っている風情もなく確信犯だ。
 戒は挑発には乗らず、肩を竦めるだけで答えない。
 「なんだよ?言えよ」
 「西門さんっ!」
 「お前だって聞きたいだろ?」
 「そんなプライベートなこと、聞きたくないわよ」
 「そっかぁ?マキちゃんが、特に聞きたいんじゃねぇかと、俺が気を利かせて野暮を承知で聞いてやったんだけどな」
 ニヤニヤ笑って揶揄る総二郎を、今日何度目になるか睨みつける。
 「寂しんぼのガキが、寂しいオンナ捕まえて、おママゴトってんだろ?お綺麗な王子様ってか?」
 「もうっ、酔ってるのはあんたの方でしょ。…戒君、帰りましょ」
 叩きつけるように一万円札を3枚テーブルに置き、立ち上がる。
 「いつも言ってんだろ?俺が女と飲んでて金なんか受け取るかよ」
 「だったら、もう二度と誘わないで。私も夫でも恋人でもない男性から毎回奢られるほど緩くないの」
 切り札を持っているのは総二郎だが、それもつくしのお人好しと義理堅さ、気の強さのわりの押しの弱さにつけ入ってのことだ。
 彼女が本気で総二郎との付き合いを忌避してしまえば、たとえ志織を間に挟んだとてもう付き合いを継続しはしないだろう。

 もはやかなり長い付き合いとなっている彼には、それが今はわかる。
 今はまだ、この稀有な女との付き合いを総二郎も楽しみたかった。
 …別に女として見てるわけじゃねぇが。
 学生時代はもはや遠く、つくしが感じていたように総二郎も、欲得や色恋とは無関係な彼女との気安い付き合いを気に入っている。
 総二郎にとって、色恋を挟まない女という存在はそれこそ母親以外には稀有だからこそ貴重だった。
 親友の妻であった女で、恋人だった彼女は、彼にとって母親に次いで恋愛対象にならない女の筆頭だったから。
 「ハァ~、一杯飲んだだけにしては、多すぎけど?」
 「いいわよ、もう何度も奢ってもらってるし今回はとっておいて」
 「ま、しゃーねぇか。この俺が女に奢られるとはな。それよりさっき、俺が言ったことよく心しておけよ?」
 「……よけいなお世話よ」
 ツンと顔を上げて、踵を返す。
 が、テーブルの一万円札と伝票を戒が取り上げ、一万円札のみをつくしのハンドバックの横からねじ入れ仕舞ってしまう。
 「ちょっとぉ!?」
 「………………」
 「ここは俺が払うよ。それでそっちの人の男の沽券を潰さないで済むし、俺もこれまでの借りを少しは返せる」
 「ガキに奢られても同じなんだが」
 「そこは我慢してくれればいいだろ?年長者なんだからさ」
 伝票を取り上げようとするつくしの手を避け、高く腕を立ててしまう。
 そうされてしまえば、20cm以上身長差がある戒の手に届くはずもない。
 「じゃ」
 「おう、またな」
 「だから、伝票を寄越せっ!」
 ぎゃあぎゃあ、わいわい、騒がしく去ってゆくひと組の女と少年を、店内の客が顔を顰め、あるいは物見高く見送っていた。
 



****




 「あ!」
 酔い醒ましにと、歩きの帰り道。
 総二郎もつくし一人だったら、けっして送らないで帰らせるなんてことはしなかったのだろうが。
 通りかかったブティックのショーウィンドーに飾られている男性もののシャツに釘付けになった。
 「…なに?」
 「あ~」
 戒を見上げて、だが、何も言わずに再び歩き出す。
 「だから、なに?俺に買ってくれるの?」
 「…いや、そう言えばまだパジャマ買ってあげてないなって」
 「別に今借りてるマキさんの弟のズボンで十分だよ。ちょっと短いけど。必要なら、適当に自分でそこらで見繕ってくるし」
 本当はウソだ。
 ショーウィンドーに立っていたマネキンが着ていたシャツが、あまりに戒に似合いそうだったから買ってあげたかったのだ。
 けれど、
 …私なんかが買わなくても、いくらでも高価な衣服を持ってるし、自分で買うこともできるのよね。
 もしかしたら戒なら、たとえ趣味に合わなくても貰うだけは貰ってくれるかもしれない。
 少なくても司のように、自分に不必要だからといって、むやみやたらに攻撃的な態度で他人を拒絶するような子ではないことはわかっていた。
 だが、つくしは怖かった。
 まるでこれからもずっと一緒にいることができるかのように、心のままに振舞って、いずれまた手放さなければならないことがわかっている我が子との縁を身近に残してしまうことを。
 だから戒がこだわらないのを良いことに、いまだにパジャマさえも買ってあげていない。
 「……じゃん」
 「え?」
 物思いに耽って、戒の言葉を聞き逃してしまった。
 「えっと、ごめん、なに?」
 もう一度聞き返すと苦笑して、けれど、すぐに悪戯っぽい揶揄うような笑みに変え、つくしを覗き込んでくる。
 「あんたけっこう俺のこと、好きなんじゃないの?」



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