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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽②

愛してる、そばにいて0825

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 「なんつーか、すげぇ意外な成り行きというか、父兄参観っぽいっつーか、妙な塩梅だな?」
 トイレに立った戒の後ろ姿を、なんとなく大人二人で眺め、途中綺麗めの女子大生に声をかけられていたりするのに感心したり、通りかかったカウンターの女性のスツールから落ちたハンドバックをスマートな仕草で拾ってやって、顎を撫でられたりしているのをつくしは複雑な思いで見守っていた。
 「…ぷっ、すげぇカブリつき。事情を知らなきゃ、どんだけ若い男にトチ狂ってるヤキモチ焼きの女なんだよって思うところだけどな」
 与太を飛ばしてくる総二郎を睨み、ちょうど戒の姿が壁の向こうに消えたのを区切りに、前へと向き直る。
 「……私は、この状況の方がよほど意外な成り行きなんですけど?」
 「なんでだよ?また暇ができたら誘うって言ってあっただろ?」
 「たしかに連絡するとは言ってたけど、それだって私はあんたに付き合うなんて一言も言ってないわよ!」
 ニヤリと笑った総二郎が、つくしを引っ張り出すのに成功した魔法の言葉で、彼女を黙らせる。
 「マキさんだっけ?」
 「…っ!」
 「どこの誰だと思ったじゃねぇか」
 これだ。
 戒を助けた時の恩義の効力が弱まったと見るや、今度は切り札を変えて総二郎はつくしを誘うようになっていた。
 …私なんかを誘って何が楽しいんだか。
 女道楽の総二郎が相手だ。
 最初の頃は、どういう興味本位でか、そういう対象で見られているのではないかとまったく疑わないわけではなかったが、こうして何度か誘い出されて食事だの、酒だのに付き合わされているうちに、どうやら彼が‘遊ぶ女’ではなく気楽な気晴らしに付き合う‘遊び相手’を求めて彼女を誘っているらしいことに気がついた。
 まだまだ脂ものり黄昏るような年齢ではない男だったから、相変わらず女性関係で慎ましいとうことはなかっただろうが、不思議につくしに対してはそうした匂いをほとんど匂わせない。
 …単純に、私に色気がないだけかもしれないけどさ。
 「戒のヤツ、すっかりお前んちに半同棲…もとい居候しちまってるの?」
 「…ハァ、そうなのよね」
 戒とつくしの関係を知らない他人から見れば丸っきりそのものだっただろう。
 親戚の子供と言うには、戒の容姿はあまりにつくしの平凡な見かけとは違って、どうみても血縁者には見えない。
 そこにはおそらく実年齢よりも若く見える彼女自身の容姿も手伝っていたに違いないが。
 「なんていうか、ここのところご近所の目が冷たいっていうか、凄く白い目で見られてる気がしてならないのよね」
 「はぁ?それこそ気のせいじゃねぇの?」
 「…あんたにはわからないわよ」
 他人から注目されることが当たり前、目立つことに慣れて、そうしたことが苦ではない人間には、ごく小市民の認識おなど理解できるはずもない。
 「ま、そういうことをあんたに言っても通じないのは最初からわかってるから、単に言ってみただけなんだけどさ」
 「そんなに人目がイヤなら追い出しちまえばいいだろ?実際はともかく、あいつにお前、自分が産みの母親だってこと伝えてないんだろ?」
 それができれば、愚痴りはしない。
 …本当のところは、あの子がうちにいてくれることは嬉しいんだもの。
 だが、
 「夏休みだって言うからさ」
 「あ?」
 「…学校があるなら、さすがにここまで入り浸らせはしないんだけど、どうもあの子、お義姉さんとお屋敷で二人っきになるのを避けて、家に帰りたがらないんじゃないかと思うのよね」
 「屋敷で二人っきりって、二人どころかあそこはわんさといる使用人で人だらけだろ。第一、あんな馬鹿でかい家、顔を合わせたくなければ、顔を合わせないでいることなんていくらでもできるんじゃねぇの?」
 逆に会おうと思っても、たとえ家族でもそうしようとしなければ、とてもではないが偶然で出くわすなどそうそうないほどの広さなのだ。
 「もちろん、それだけじゃないんだろうけどね」
 かといって、戒はつくしにほとんど何も語らない。
 ただ、もしもつくしが彼を追い出してしまえば、家に帰るのではなく、他に女を見つけてそこに居候してしまうだけな気がしてならなかった。
 まるで花から花の間を気まぐれに渡り歩く蝶のように。
 …あの年で、そんな生活とてもさせられない。
 「それにしても、あいつ、戒、相当女慣れしてるよな」
 「……………」
 つくしもそうだとは思っていたが、女道楽をし尽くしてなお修羅道を行くような男にまでそんなことを言われてしまうと、なおさらのこと戒のことが心配になってくる。
 「いつヤツが童貞を捨てたか知らねぇが、ありゃたぶんけっこうな場数踏んでるぜ?」
 「うう、…やっぱり西門さんもそう思う?」
 「思うっていうか、まんまだろ。まあ、あいつの場合、まだまだガキだから、男っつーよりペットみたいに愛玩したがる年上女もいるだろうし、体の関係なしにでも女を繋ぎ留めておけるタイプだよな」
 …ペット。
 昔、類のことを怠惰な猫のようだと思ったことがあったが。
 いくら戒が美麗な少年でも、つくしの中ではあくまでも戒は息子でしかなかったので、そんなふうに思ったことはない。
 しかし、戒を見る女たちの目を見ていると総二郎の言うことも心あたりがないでもなかった。
 この一ヶ月、何度か、つくしの職場である病院にも迎えに来たことがあるが、彼が何者か知らない患者や、つくしとの関係など思いも知らない同僚たちの、コソコソ噂話の中に、やはりそうした声がいくつもあったから。
 ―――見てみて、すっごい綺麗な子が来てるの。
 ―――わあ、芸能人?誰かの付き添いかな?あんな子を連れて歩けたら、凄い見栄えしそう。
 ―――ええ?比べられそうで、私はイヤだな。観賞用にはいいけど。
 等々。
 …司とは全然違う。
 あれほどよく似ていると思った性格も、いざ身近で過ごしてみればずいぶん現れ方が違うことに戸惑うことも多かった。
 時々カッとして激情を抑えられないこともあるようだが、基本、直情型で活火山のような激しさを持つ司とは真逆に、戒は心の奥底にある炎を燻らせて一時激しく燃え立たせることがあっても、あっという間に鎮火させ押さえ込むことができる少年だった。
 生真面目で思い込みが激しく、それだけに上手くガス抜きをできていないように、つくしの目に映る。
 …あの年頃なら、自分の感情を上手く処理できなくても普通のことなんだろうけど。
 類のような無関心さとも異なり、曖昧さを嫌い白黒つけたがるところはやはり司と同じだった。
 「あの司の息子がねぇ。俺にも到底できねぇ芸当だが、あいつならホストでも十分生きていけるんじゃねぇ?」
 「ホストぉ!?冗談よしてよ。…ホストなら、西門さん、あんたの方がよっぽど向いてるんじゃないのっ?!」
 「冗談よせ、どこの世間に茶道宗家に生まれてホストになるヤツがいるんだよ」
 「戒だって同じじゃないのよ」
 それこそどこの世間に、大財閥の御曹司の身に生まれてそんな職業に就く人間がいるというのか。
 …望んだって許されないわ。
 「まあな。けど、お前は勘違いしてるが、俺の女へのサービスとホストのサービスには決定的な違いがある」
 「なによ、それ?」
 「俺は純粋に女が好きで、カラダの関係含めて愉しむわけだから、女にサービスすんのに、プラトニックとかありえねぇ話だし全然考えらんねぇ。けど、その点ホストのサービスはあくまでも女をいい気にさせてやって、報酬を得るためだから、カラダの関係がすべてじゃない…それどころか伴わないことさえある」
 それならば尚更、戒とホストの間に相似などあるはずもない。
 戒が女を食い物にして、報酬を得る必要などまったくないのだから。
 それ以前に、
 「あんたの言いたいことがいまいちよくわからないんだけど、とにかくホストとか、戒を引き合いに出すの本気で辞めてよ」
 職業に貴賎があると思っているわけではないが、それでも母親である以上、自分の息子をホストになぞらえて嬉しい女がいるはずもない。
 それが大財閥の御曹司であるか、ないかのいかんに関わらずだ。
 「ま、さすがにホスト云々は単なる与太だが、…それよりお前大丈夫か?」
 「ん?なにが?」
 妙に生真面目な顔になった総二郎を怪訝に見返した。
 「あいつに自分が産みの母親だと伝えてないんだろうが」
 総二郎が何を言いたいのかまだわからないカンの鈍いつくしに苦笑して、総二郎がそのものズバリと口にする。
 「襲われねぇかって言ってんの。あれくらいの年齢の男なんて、ただでさえヤりたい盛りだっつーのに、何がきっかけでケダモノになるかわかんねぇだろ?」



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