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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽②

愛してる、そばにいて0823

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 「あ、そうだ」
 ソファに足を乗せ、体育座りという珍妙な格好で見るともなくテレビを見ている戒の後ろ姿に思い出した。
 …まったくよく疲れないわね。
 つくし以外の女が見れば、それはそれで憂いを帯びた様にうっとり見惚れるかもしれなかったが、彼女からしてみれば、長い脚を持て余して、つくしが座るには十分な二人がけのソファがえらく窮屈そうに見える。
 さっきから空のコップを手持ち無沙汰に弄んでる戒へと、おかわりのグラスを手渡してやる。
 「ね、聞くの忘れてたけど」
 特に熱中しているというわけでもなさそうだが、気怠げな様子で顔も上げなかった戒がつくしの顔を仰ぎ見る。
 「ここにいるのちゃんとおうちに連絡してるんでしょうね?」
 戒の母の滋と姉と街中で出くわしているから、もしかしたらまだ帰宅していない可能性もあったが、携帯電話くらいは持っているだろうし、屋敷には家族ではなくても大勢人がいるのだから誰にでも伝言できる。
 が、つくしの質問につまらそうに再び視線をテレビに戻し、今渡されたグラスから器用に氷だけを口に含んでガシガシと噛むだけで、答えようとしない。
 その態度に、返事を聞かなくても答えを悟る。
 「おい、こらっ!ちゃんと家に連絡しないつもりなら、ウチに泊めないわよ。ホテルでも別荘でも、あんたなら泊まるところあるでしょ?そっちに行きなさいよっ」
 いざそうすると言われると、それはそれでガッカリしてしまうに決まっているのだが、筋は通す必要がある。
 「…別に連絡なんかしなくても平気」
 「平気じゃないでしょ?いくら見た目デカくたって、まだ未成年なんだから、ご家族だって心配するわよっ」
 迷惑そうな顔に、眉根を潜め、まさか、と尋ねる。
 「あんたが外泊して、知らん顔とかしてるわけじゃないんでしょ?…えっと、おかあさんとか、その……お父さんとか?」
 「まあ、母親は無断外泊がバレたら、根掘り葉掘りと聞いてくるな。隠すつもりはないけど、ただでさえ喋り出すと止まんない性格してるから、…面倒臭い」
 「おい」
 …面倒臭いってね。
 この年頃の少年なら、たしかに親に口煩くされれば面倒臭く思うのも仕方がないとはいえ、無断外泊されればつくしだって心配して、きっと根掘り葉掘り聞いてしまうだろう。。
 むしろ滋がそうしてくれる女性であることに、ホッとする。
 「第一、連絡しない方が外泊してることもわかんないんだから、返ってあっちも気を使わなくていいんじゃないの?」
 「は?」
 「……母親も仕事してるし、屋敷にいる方が珍しいくらいだから」
 「そう…なんだ」
 そういえば、滋も実家の会社の役員として経営に参画しているのだったか。
 女性とはいえ、‘鉄の女’と言われた楓を鑑みれば、司並とは言わなくても、かなりの激務を日々こなしていることも察せられた。
 あるいは、戒もまた、司の幼い頃の同じような現状なのかもしれない。
 …でも、司がいてくれるはず。 
 しかし、
 「えっと、お父さんともあんまり顔を合わせたり…は、今は無理だろうけど、電話とかメールで話したりしないの?」
 「……ふっ」
 鼻で嗤った戒の横顔の影が深い。
 どこか皮肉なものを含んだそれの意味が知りたかった。
 「道明寺司にはなおさら時間がない。たとえ日本にいたって、早々顔を合わせることなんてないさ」
 「……そっかぁ」
 今よりも若い時代でさえ激務に家に帰れないことも珍しくなかったのだから、いまや道明寺財閥の名実共の最高経営者となった身ならば、それも致し方ない状況であることは、部外者のつくしにも容易に察せられた。
 「でもさ、たとえ顔を合わせられない状況にしたって、自分の子供のことを心配してないってことはないと思う。きっとどんなに忙しかったってお父さんは戒君のことを心配してるだろうし、大事に思ってるに決まってるんだから、ちゃんと行き先くらいは連絡してあげなよ?」
 踏み込みすぎかとも思った。
 けれどなげやりに父を語る戒の姿にどうしても言わずにはいられなかった。
 「大人の事情をわかってやれっていうのも、酷な話だし身勝手なことだとも思うけど、でも、想っていても言えないこと、誤解を解きたくてもできない人っているものだからさ。許してあげられることはなるべく許してあげた方が、きっとあんたの心にもいいことだと思うよ?」
 奇妙な顔で自分を見つめる戒へと、照れ臭く笑う。
 「ごめん、実はこれって私の息子の受け売りなんだけどね」
 「あんたの…息子?」
 「……うん。凄く優しくていい子なの」
 戒が周囲を見回したのは、そのいい子だという息子どころか、つくし以外の家族の気配がないことを不審に思ってのことだろう。
 「あ…と、今は事情があって一緒には暮らしていないんだ」
 「ふぅん?」
 「でも、あの子がーーー自分の息子がたとえ遠くにいても、どこにいて何をしていても私は心配だし、大事に思ってる。……そばにいられなくても、毎日を楽しく生きて笑っていてくれれば、ってそれだけが私の望みなの」
 「………………」 
 「ね、電話して?もし、おかあさんやお父さんに電話するのは…っていうのなら、おうちの人に伝言を頼むだけでいいから、心配させないであげて?」




*****




 親に電話することには承諾しなかったが、それでもつくしの言い分を多少なりにとは認めたのか戒は屋敷に電話をしていた。
 もっとも、それこそ口煩く言われたり、あるいは追い出されるくらいならという程度のことだったのかもしれなかったが。
 「そ。この間、迎えに寄越させた廣方って家。…ああ、滋さんは北海道だろ?萌奈の誕生日ディナーに付き合ってやるためだけにトンボ帰りしたんだろ。ふ、まったくご苦労なことだよな」
 そんな話をしているのを聞くともなく耳にしながら、台所の後片付けや簡単な家事をこなしながら、時計を見る。
 そろそろ0時を回る時間帯だ。
 戒は小学生ではないのだから、あれこれ喧しく管理してやる必要もないだろうが、それにしても明日は平日で、休みの自分はともかく戒は学校のはずだった。
 …それとももう夏休みだったりするのかな?
 遠い記憶だが、英徳の高等部では7月の早々に期末試験があって、その期間を過ぎれば部活動や諸々の課外活動のない生徒は終業式まで休みで、終業式の後本格的な夏休みに入る。
 戒は15才。
 中学生だが、高等部も中等部も似たようなスケジュールだろう。
 普通だったら受験生の年頃だが、大学までエスカレーター式の英徳学園にいる限り受験とは無縁だろうから、夏期講習や…バイトなどはないだろうが。
 携帯を切って、コーヒーテーブルにゴロンと転がしてるのを区切りに、つくしが声をかける。
 「ね、もうソロソロ12時だよ?明日も学校でしょ?」
 一応、声をかければ振り返ってはくれる。
 「この前、寝かせてあげたのは私の部屋だからさ、今日は二階の客間を貸してあげるから、そっちで寝てくれる?」
 「……二階?」
 「うん。布団なんだけど、今敷いてきちゃうね」
 総二郎は自分で敷いていたが、バリバリの洋館育ちで上げ膳据え膳の大豪邸で育った戒ではさすがに無理だろう。
 …それともこんなところでも意外なところを発揮?してくれるのかな。
 そんなことを思いつつ、戒が身動きしたことで、テーブルの上に乗っている空のグラスが覗いて、うっかり洗い忘れを出してしまったことに気がついた。
 「もうっ、洗い物してたんだから、気がついて声かけるくらいしてよ」
 そんな文句を言いながら、
 「それとももう一杯何か飲む?」
 戒の背中越しに、コップを取ろうと伸び上がって、伸ばした手首を戒に掴まれ―――引っ張られた。
 …え?


 
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