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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽②

愛してる、そばにいて0820

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 「もしかして、痛むの?」
 黙って顔を上げた戒が、つくしの視線を辿って、自分の箸を持った手の前腕の傷を見て頷く。
 「多少は」
 「そうだよね。まだ怪我をしてから一週間くらいだもの」
 さすがに綺麗な所作で食事をしているが、時々肘を動かすたびに顔を顰めているのが気になったのだ。
 傷口の具合はどういう感じなのか、腕に包帯はされていなかったが、季節柄半袖のシャツから覗く大判の傷口保護パットの白さが痛々しいかった。
 つくしの方はたらふく総二郎から高級フレンチをご馳走になったので、お茶でご相伴するだけで、戒が食事する様をジロジロと眺めながらあれこれ雑談を振ってしまっていたから、戒からしてみれば煩かったかもしれない。
 …ウザイ、オバさんだとか思われてるのかな。
 司もたいがい警戒心が強く、他人を寄せ付けないタチだったが、戒もその上をゆく。
 ただ父親のように攻撃的ではなかったから、どちらかといえば高校時代の、まったく彼女を視界にも入れてくれていなかった頃の類に近いものがあるかもしれない。
 そのわりには―――、
 「あのさ」
 「………」
 「どうして、ウチに来たの?」
 「泊めてくれって、俺言わなかったっけ?……ご馳走様」
 て空になった皿を前に、挨拶をしてくれる。
 …お行儀がいいのは当たり前かもしれないけど、こういうキッチリとしたところって、あの滋さんが躾てくれたのかな?それとも神崎さん?
 つくしも戒が幼い頃はかなり厳しく躾ていたはずだが、それが今も残っているとはとても思えない。
 もちろん基礎にはなっていただろうが、今この目の前の彼をカタチ作るほとんどに関わることができなかったことを、ほろ苦く切なくも思う。
 「……あんたなら泊めてくれそうだと思ったから」
 「え?」
 「なんとなくだけど」
 「なんとなくって…でも、あんなところで待ってて、もし私が一晩中帰ってこなかったらいったいどうするつもりだったの?」
 真冬の極寒の地ではないのだ。
 野宿したとしても、死ぬようなことはないだろう。
 けれど、
 「別にそれはそれでいいよ。何か目的があるわけじゃないし、…時間ならいくらでもある」
 どう捕らえて良いのか。
 その年頃の少年が言うには投槍で、まるで老人のようなそのセリフを。
 「えっと…泊まるって急に言われても、パジャマとかそういうのうちの弟のヤツしかないんですけど?」
 見たところ大人の男の総二郎よりずっと華奢なようだったが、やはり総二郎には進のパジャマは窮屈だったらしく、下だけ履いて上は上半身裸のままで寝ていた。
 翌朝トイレに起きだしたその総二郎と出くわし、ギョッとしたが、総二郎の方は平然としていたから、これはもうセレブな男性の標準仕様ということで無理矢理に納得した。
 …まあ、いくらでもシーツとか洗ってもらえるわけだし、そりゃマッパで寝たって全然かまわないわけよね。
 大勢の使用人の中、衆人環視の状態で生活をしているのだ。
 羞恥心が希薄でも、致し方ないことなのかもしれない。
 「別にいいよ」
 「えっと、もしかして、マッ…いや、裸で寝るからとか言うヤツ?…本当だったら、いくら中高生だからって、男の子なんて泊めたりしないんだけど」
 ついうっかり要らぬ質問をしてしまい睨まれるかと思ったが、予想に反してなぜかマジマジと見られ内心仰け反ったところで、ニヤリと笑われてしまった。
 「お望みなら?」
 「…いえ、まったく望んでないので、どうぞパジャマを着て寝てください」
 赤面しかけた顔を撫でて、なんとか平然とした風を装う。
 自分の息子にアてられてどうするという自制と、ガキに舐められてカラかわれて溜まるかという意地、そして、そんな生意気なことを言うような、年頃にもうなってしまったのかという驚嘆と…ショックと。
 「マキさんって、いくつ?」
 「え?」
 「年だよ、年齢」
 「ああ、………36才よ」
 「36?」
 戒の表情は意外さもあらわだ。
 「なに?もっとオバさんに見えた?」
 「いや、逆。まだ20代か、いってても30才ソコソコかと思ってた」
 「あ~」
 よくあることだから、いまさらだ。
 たぶん喜ぶところなのだと思うが、その分甘く見られることもけっこうあったから、自分で自分の口を養い一人で生きるキャリアウーマンとしては、あまりありがたいことでもない。
 「へぇ、俺の母親と一個しか違わないのか。別に滋さんも老けて見えるわけじゃないし、十分若くて美人だけど、あんたと同年代にはとても見えないな」
 それが褒め言葉なのか微妙なところだが、それよりも戒の口から飛び出した彼の母親の名前の方が気になった。
 ―――戒の母親。
 正直、他の女性をそう呼ぶことにわだかまりがないわけではなかったが、それでも自分でその権利を放棄したのだ。
 10年も前に。
 戒の産みの母として、彼を慈しみ愛することとは別に、そこはわきまえるべきなのだ。
 自身の執着とエゴで、戒の家族を悲しませたり、家庭を壊してはならない。
 「滋さんって、道明寺滋さんのことよね?あなたのおかあさん」
 「…そう」
 「おかあさんって、ど、どう?優しい人?」
 「……………」
 唐突だっただろうか、真意を測りかねているかのように、戒が口を閉じて、つくしを怪訝に見つけてくる。
 その視線を真っ直ぐに受け止めきれない。
 けれど、下手に勘繰られるわけにもいかないから、愛想笑いで誤魔化して重ねて問いかける。
 「い、いや、ほら、雑誌とかでもよく載ってる人だし、セレブの奥様とかおかあさんってどんな感じなのかな、とか。こ、好奇心からなんだけど」
 まずかっただろうか?
 しかし、特に戒は機嫌を損ねた風でもなく、
 「悪い人じゃないよ。正直、ウザいと思う時の方が大半だけど、別に嫌いじゃない。けっこう継母と連れ子としては、上手くやってる方なんじゃないの?」



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