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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽①

愛してる、そばにいて0815

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 別に隠すほどのことではないが、自分の事情をペラペラと話すほどつくしにとって総二郎は近しい人間ではなかった。
 彼はあくまでも彼女にとって、司の親友であり、類の親友ーーーあるいは単なる通行人にすぎなかったのだ。
 時には冗談交じりに、師弟だろうなどと総二郎から言われることもあったが、実際に師事していたのは半年にも満たない期間のことで、当時は自ら望んだことではあったが、実際にはそれどころではなく、それほど手習いに通ったことはつくしの印象には残っていなかった。
 …わざわざ時間を取ってくれた西門さんには申し訳ないことだったけどね。
 あくまでも当時の彼女にとって、司との関係修復に前向きであるフリをする為の手段であり、楓との繋ぎ役であった桜子と密会するためのものでしかなかったのだ。
 「普通、俺らのような男が相手じゃなくても、婚約破棄や離婚は十分な慰謝料の対象になんだろ?司の場合は当然のこと、類の時だって、お前らは籍こそ入ってなかったが双方の親も認めて、それこそ半分事実婚みたいなもんだったじゃねぇのか?」
 「…どうだろうね」
 実は事実婚と同棲の違いはかなり曖昧だ。
 法律的にはそこに‘夫婦’としての認識があるかどうか、そのただ一点だけで、付帯する義務は大きく異なるが、外から見ればそのどちらがどちらとも区別がつき難く、つくしにしてみても当時、‘結婚’はともかくとして、そのまま二人でずっと生きてゆこうという意識があったのだから、たしかに事実婚のようなものだと言われればそのとおりだっただろう。
 けれど、
 「類から慰謝料なんか貰ったら、それこそ私が捨てられちゃったかなんかしたみたいじゃない」
 「…なんだよ、プライドに触るってか?」
 「そんなんじゃないけどさ」
 プライド?
 そんなものが自分に果たしてあるものなのか。
 いや、ないわけではない。
 だが、類との関係にそんなものは必要なかった。
 ただ愛しかった、幸せになって欲しかっただけ。
 ―――そして、おそらく類も彼女に対してそう思っていてくれているはずだ。
 今も。
 「私と類のことはあくまでも私たち二人のことなんだから、西門さんには関係ない話でしょ?」
 「ま、そりゃそうだ。けど、お前と類が別れた時、てっきり類があのマンションを出て、お前に譲るもんだと思ってたら、ヤツがそのまま住み続けてあっという間に元のゴミ屋敷だ」
 「………………」
 人間やはり2年やそこらでは、そう変わることができないものらしい。
 類をスパルタ式に躾けなかったつくしのせいもあったやもしれないが、人にはそれぞれの役割というものがあって、自分の力の及ばぬところは他人に補ってもらうことで十分だというのが、ここ数年のつくしの達観だった。
 …お金があるんだもん。無理なことはそのお金で解決できれば、それで十分よね。
 青色吐息のハードスケジュールを日々こなして頑張っていた類にそこまで求めるのは酷な話だ。
 問題はその他人に任せるということも上手くできていなかったことだけなのだが…。
 それでも、
 「そのわりに本人はわりにケロっとして、お前と一緒になる前の状態になっちまうんじゃねぇかと心配してたんだが、……いつの間にかまた静と寄りを戻しちまって、今度は娘も連れて花沢を出やがった。いったいヤツにどんな心境の変化があったのか。昏く澱んで蹲ってるばかりだったあいつを立たせて、まるで別人みたいにしちまったのは、お前なんだろ?」
 総二郎がいったい何を聞きたいのか、つくしにはまるでわからない。
 いつもの洒脱で、女を誑かす色悪の権化のような男が奇妙に生真面目な顔で、マジマジとつくしを見つめて、なにかとそこから探し取ろうとするかのような真剣な目で尋ねてくる理由が。
 「司も……司もお前が変えた。金にも権力に靡かねぇで、お前はいつも一人で立ってる。俺にはお前がそんなに特別な女には見えない。なのにどうして司や類はお前に執着した?お前は一体なんなんだよ?牧野つくし」
 「………………」
 「………………」
 「………なんなんだよ、って言われても」
 人の気配に総二郎の顔から視線を反らし、顔を上げると次の料理…数十種類のチーズと入ったバスケットと、一杯の氷の入ったシャンパンクーラーに入ったワイボトルを乗せたワゴンを傍らに、テーブルからわずかに間を置いた観葉植物の影に控えたウェイターが、彼らへの視線に応え一礼した。
 「本日のチーズです。こちらにはギルド・デ・フロマージュ※で最上級チーズ熟成士として名高いロワン・ティリエ熟成のコンテやロックフォール他、20種類をご用意しております」




*****




 「さって、腹も膨れて一服したし、ソロソロ帰るか」
 「うん、凄く美味しかった。さすがは西門さんご推奨の超一流三ツ星レストランのディナー。もう一生分の高級料理をいただいた気分だよ」
 「ぷっ、なんだよ、それ。別にお前にしたって、いまさら珍しいものじゃねぇだろ?」
 「そうでもないけど」
 そんなことを話しながら、総二郎がテーブルを窺っている壁際のウェイターへと会計の為に片手をあげかけたところへ、つくしが制止の声を上げる。
 「あ!ちょっと待って」
 「ん?」
 「…えっとその、ちょっとお化粧を直したいんだけど」
 「ああ、いいぜ。行ってこいよ。場所わかるか?」
 「大丈夫よ、ありがとう」
 そそくさと席を立ち、腕時計を確認している総二郎の秀麗な美貌を横目に、彼が呼び寄せようとしたウェイターに声をかけた。
 「すみません、お会計をお願いしたいんですけど?」



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